第97話 椎崎を道具扱い
椎崎姉である椎崎薫さんが車で迎えに来た。それも椎崎でなく。俺だという。あの人の思考は全く読めないが椎崎の扱いを考えたらどこか納得してしまう。
「どういうことですか」
椎崎は椎崎姉に対して敬語で会話をしている。家族にも上品な態度をとっているのか。
「あれ。もしかして聞いてない?私たちもう会ってるんだよ」
俺が今まで話してこなかったことをあっさりといわれた。
「え」
椎崎の動揺が隠しきれていない。それほど衝撃だったのだろうか。
「倫太郎君?」
俺を見つめる心配そうな目。
「悪い。知ってた。何度か話している」
「そんな」
嘘をついたわけではあるがそんな重いことなのだろうか。2人の関係はどうなっているんだ。
「それじゃいこっか倫太郎君」
椎崎の動揺を全く気にしない椎崎姉。まるで椎崎という存在がいないかのように。
「あの俺はいいんで椎崎を」
「ごめんね。荷物入れはないんだ」
荷物?椎崎を荷物の扱いしているのかこの人。ひどいな。
「それに。私がいなかったら今頃美咲ちゃんは見つからなかったかもしれない。だからそのお返しとしてくるしかないのよ」
あの時俺にヒントを伝えたのはこの人だったのか。
「それとは別でしょ」
この人と二人きりになるのは回避したい。それに椎崎との関係が少し変わるきがしてくる。
「美咲ちゃん。いいよね?あなたみたいな人が私の車に乗るの許されてるのかな?」
「許しをえてないです」
お前はいったい何に縛られているんだ。いつもみたいに自分の意見をはっきりいえよ。
「じゃぁ美咲ちゃんのれないよね」
椎崎の表情がだんだん恐怖に包まれている気がする。
「はい。私、椎崎美咲は主様の車に乗る資格はありません」
口調といい姉の呼び方といい全く理解できない。
「さ、いくよ」
「なら椎崎と帰るのでむかえいらないです」
別にこの人が勝手に来たことだ。俺には関係ない。
「あの。倫太郎君。主様に従ってください。詳しくは後で話しますので」
恐怖にとらわれている。いや。今の椎崎はただ姉に従っているだけか。従順って感じか。それになんでお前はひどいことをいう姉のことを守るんだよ。いつもみたいに鋭い言葉をいえよ。
「ったく。ならあと30分ください」
「うーん。美咲ちゃん。Aでもしようか」
椎崎の目がさらに恐怖を感じさせる。
「お願いします。倫太郎君。早く。いってください。ほかの人には私が説得しますので。お願いします」
なんでそんな必死になるんだよ。Aっていったいなんなんだよ。
「わかりましたよ」
椎崎のこんな姿見せられたら従わないわけにもいかないだろ。
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