第99話 美咲の気持ち
頭が柔らかい何かの上に載っている。枕としては少し硬いか。寝ていたようだな。車に乗っていたはず。ここは部屋なのか?手を動かすと壁ようなものがある。少し凸凹しているようだな。上の方にすすめていく。どこかほかよりやわかい。
「ひゃ!」
誰かの声だ。近くに誰かいるのか。少しづつ目をあけていく。すると俺のてが椎崎の胸部をにぎっていた。
「うわ!わ、悪い」
「い、いえ。気にしていないでので」
絶対気にさせてしまった。
「それよりどういう状況だよ」
「帰ってきたらソファで寝むっていたので」
薫さんが俺を運んだのだろうか。
「そうか。悪いな」
「あのどこまで聞きましたか?」
「お前がかわいそうと思える程度には聞いた」
「あ、あの。ごめんなさい。巻き込んで」
巻き込む?これに関しては俺は全くの無害だ。
「おまえこそ辛くないのか?」
「どこがですか?」
薫さんの前でなければ落ち着いたいつも通り落ち着いた様子の美咲。あの人が縛る何かはそれほど大きいものなのだろう。
「だって自由がないんだろ」
「なるほど。それは勘違いですね。私にとってもともと自由を知らないので辛さはないです」
もともと自由がない。姉の言っていた才能の話とは全く関係ないじゃないか。
「いつからそうなんだ?」
「ごめんなさい。わからないです。お母さまによって記憶も書き換えられてますし」
記憶をかきかえる?さらに理解しがたい事実。つまり椎崎は都合のいいように出来上がっているというわけかよ。
「椎崎。ここって見られているのか?」
監視はしっかりしてるであろう。椎崎が無駄な情報を入れないために。
「…」
なぜ無視をする。わからないってことか。いや。そういうことか。
「美咲」
二人でいるときは美咲と呼ぶ。こういうところはしっかりしているようだな。
「見られてないと思います。ただ私がすべて把握できていないので」
「あれだな。ここにいるときくらい息抜きしろよ。お前の体がもたなくなったらもともこないからな」
「では。毎日きます。休みの日も倫太郎君がお出かけしている日も。ずっと」
辛くない。それは嘘だろ椎崎。息抜きの場にここまで嬉しそうにされるとは。それほど今の生活が苦痛としか思えない。
「かまわない」
「よかった。でも今日はもう帰りますね。その疲れっちゃったので」
「無理するなよ。学校も熱があったら休めよ」
「わかってますって」
ふらついた様子もないだろうがこいつも今日は苦労したわけだしな。ゆっくり休めばいい。
倫太郎の部屋を出た目の前。
「話さなかったんだ」
「そのつもりはありません。聞かれなかったので」
「そういういいわけするんだ。あなたもでかくなったね」
「そんなつもりわ」
「ま、いいや。次のテストだけど平均95点以上キープって命令に加えてもう一つ追加ね。20番以下の順位になって」
「まってくださいそれって」
「もちろん守らなかったら同じバツを与えるだけ。嫌なら塗り替えてもらいな。もちろん無理やりするのは禁止。しっかり本人から言われるようにね」
「……わかりました」
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