第41話 電話【宮下佳奈】
検証動画を詩子先輩に送った翌日の夕方、自室でだらだらしていたらスマホに詩子先輩から連絡がきた。
「もしもし?」
『もしもし、メメちゃん。検証動画ありがとうね』
「いえいえ、姉がやったので姉に言ってください」
『そうだね。でも、お姉さんの電話番号知らないから。代わりに言っておいて』
ここに姉がいたら替わることができたのだが、姉はまだ大学から帰っていなかった。
ちなみに姉の連絡先を教えるのもありなのだが、事務所がそういうのをNGとしている。
(個人情報とかでいろいろあったからな)
「分かりました。伝えておきます」
『検証動画はバッチリだったと伝えておいてね』
「はい。ちなみに配信はいつなんですか?」
『それがまだ検証動画を出してない人もいるから、まだなんともなのよ』
詩子先輩がちょっと困ったように言う。
「そうですか。……その提出してない人は誰ですか?」
『トビ先輩とヤクモかな』
ヤクモという名が出て私はドキリとした。
『トビ先輩は急かすと怖いしさ』
「ですよね」
トビ先輩は沸点が低く、キレると言葉も汚くなって怖いのだ。
『ヤクモは今、色々と
「はい。毎週ペイベックス公式チャンネルを使って、ヤクモとホラゲーをやってます」
『あらら、忙しいのに検証動画なんて頼んじゃってごめんね』
「大丈夫ですよ。公式チャンネルのホラゲーはヤクモがセッティングをしているので、姉はゲームをしているだけですから」
『いやあ、それでも大変じゃない? 大学だってあるんだから』
「本人は平気そうですよ」
昨日、疲れてへばっていたことは秘密にしておく。
『本当に急に頼んでごめんって伝えておいて。今度、顔合わせついでにご飯奢るからとも伝えてね』
「そこまでしなくても……」
『いやいや、カロが急遽無理になって大変だったのよ』
「え?」
思わぬことを聞いて私は驚く。
『マネージャーから聞いてない?』
「いえ、なにも。カロ……そういえば短期集中講義を取ったとか聞きましたけど」
『え? 知ってるの?』
「実は姉とカロが同じ大学だったんです」
『ええ!?』
詩子先輩が大声で驚いた。急に鼓膜を叩かれて私は顔を
「あ、でも、カロは理系だからキャンパスが違うとかで」
『そうだったんだ』
「姉もつい最近知ったんですよ」
『じゃあ、短期集中講義の件は本当だったんだ。私、てっきりツクモが関わってるから拒否ったのかと思ったよ。なーんだ。良かった』
「アハハ、それって6期生の件ですか? あれはもう終わった話じゃないですか」
『えー、でもさ、カロあたりはまだ腑に落ちてないというか警戒してるよ』
「カロはみはり先輩のファンだからじゃないですか?」
銀羊カロは公言するほど星空みはり先輩のファンゆえに先月のデマは許せなかったのだろう。
『かもねー。あの子、超推しって言ってるもんね』
「そうですよー」
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