第27話 デイ・アフター・パンデミック②

『はい。皆ー、武器は選び終えたねー』


 ヒスイさんが確認とる。


 それに私達は『終わったよー』と言う。


『よし。問題ないね。外に出るよ』

『おー!』


 私達はキャラクターを操作して、倉庫を出る。

 外は夜の街で車が事故を起こしたように建物に突っ込んでいたり、反転して歩道に乗り上がっている。さらに道のあちこちには物が散乱したり、道端には火が燃え盛っている。


『さあ、行くよ!』


 ヒスイさんを先頭に私達は車道を歩く。


 画面には進路指示としてマークが出ている。それと左上端にもマップがあり、セレクトボタンを押すとマップが大画面で表示される。


 私達がいる地点が緑、そして目的地が赤で表示されている。


 赤で表示されている場所は港。


 つまり最初の目的地は港ということ。


 もう一度、セレクトボタンを押して、マップを消すと画面にゾンビ集団が現れていて、私は驚いた。


「ゾンビだ! 急に来た!」

『オルタちゃん、驚いてる場合じゃないよ! おらおら! 皆、撃て!』


 ヒスイさんがアサルトライフルでゾンビを屠る。


 それに続いて皆もそれぞれの得物で近づくゾンビを駆逐し始める。


 しかし、なかなかゾンビが減らない。

 撃てども、ゾンビが群がってくる。


「ねえ、これって音に引きつられてない?」


 よく映画やゲームでは音に反応してゾンビがやってくるのだが。


『オルタちゃん、それは関係ないよ。こいつらは勝手に現れて、襲ってくるのよ』


 マイさんがそう教えてくれる。


「そうなんですか」

『じゃんじゃん殺して……って、もう死んでるんだ。この場合は蹴散らせかな』

「了解です」

『このゲームはゾンビを蹴散らすという爽快感を売りにしたゲームなの』

「そ、爽快感ですか……」


 始めたばかりなので爽快感はいまいち分からないが、そういうことなのだろう。

 私は深く考えず、ショットガンをぶちかまして、ゾンビを吹き飛ばしていく。


 辺りは倒れたゾンビと血肉で真っ赤になる。


 ホラーが苦手なミカゲさんは大丈夫かなと伺うと、『来んな! 来んな!』と喚きつつ、機関銃で周囲のゾンビを手当たり次第蹴散らしていた。


『ミカゲ! 私にも当たってるから! 痛い!』


 フジさんの中肉中背のおっさんキャラにもミカゲさんが放つ銃弾が当たっていた。


『いーやー!』

『聞けよ!』


 ミカゲさんはフジさんの言葉を聞かず、一心不乱に銃弾をぶちかます。


『ダメだ。こりゃあ、ミカゲの近くに行くと巻き添え食うぞ。皆、ミカゲに気をつけて!』


 とヒスイさんが皆に注意喚起する。


   ◯


 私達はゾンビを蹴散らしつつ、画面の進行指示通りに大型ビルの前に辿り着く。


「なんでビルに?」

『オルタちゃん、ここはビルでも地下鉄に通じているビルだよ』


 ヒスイさんが教えてくれます。


 私以外は皆、プレイ経験があるため、疑問なく進めていく。


「なるほど。で、ビルから地下鉄へ。そして電車に乗ると?」

『違うよ。電車はないから地下鉄の線路の上を歩いて進むんだよ』


 地下鉄の線路。つまりトンネル。


「……普通、そういうのって囲まれるからアウトなのでは?」

『うん。普通はね。でもこれはゲームだから』


 そしてフジさんがビルの扉の前にプラスティック爆弾をセットする。


「開かなかったんですか?」

『うん。だから扉を爆破しようと思うの』

「普通は鍵とか探しません?」

『このゲームはね、扉とか壁を破壊して中に入ったりするの』


 そしてプラスティック爆弾が爆発して扉が消し飛んだ。


『よし皆、行くぞ……っと、その前にゾンビだ!』


 ビルの中からゾンビが集団でやってきました。


『ぎぃやあああ!』


 ミカゲさんが悲鳴を上げ、機関銃のトリガーを引いて、ゾンビ達を吹き飛ばします。


『皆、ミカゲに続け!』


 ヒスイさんの号令で私達も銃火器を使い、群がるゾンビ達を屠ります。


「なんかでかいゾンビが現れたんですけど!」


 二倍……いや三倍以上の大きさの肌が紫色のゾンビがビルから出てきた。


「お姉ちゃん、あれは中ボスみたいなものだよ」

「中ボス!? てことはボスとかいるの!?」

「当たり前。普通にいるよ。あれには距離を取りつつ攻撃。掴まれたら近接武器で応戦し、チャンスがあったら離れる」

「オッケー」


 私達は距離を取り、中ボスに銃弾をぶち込む。


 普通のゾンビと違い、どんだけ銃弾をぶちかましても中ボスはなかなか倒れない。


「ミカゲさん、下がって!」


 中ボスはミカゲさんに近づいていく。


『いーやー!』


 ミカゲさんは一心不乱に機関銃で応戦するも、接近され掴まってしまった。


「ミカゲさん、接近武器です」


 しかし、パニックになっているミカゲさんはジタバタするだけ。


「どうします?」

『ここは任せて』


 そう言ってヒスイさんがダイナマイトを投げました。

 ダイナマイトはミカゲさんを巻き込んで大爆発。


『まだよ!』


 そして次々とダイナマイトを投げ続けて中ボスを撃破。


「ミカゲさんはどうなるんすか?」


 爆心地に倒れたミカゲさんが操るおじさんキャラが地面に横たわっています。


『アイテムの救急キットを使えば蘇生可能なんだよ』


 と言ってヒスイさんは救急キットを使ってミカゲさんを蘇生した。

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