第8話 南極基地危機一髪【2回戦②】

【ミカエル】:「再開だよ。ミュート!」


 緊急会議が終わり、一同は会議室から再スタートとなる。


 私はまず実験室に向かう。


 タスクをしているフリをして、今後どうするかを考える。


 今のところ、疑われずに済んでいる。


 逆に疑われているのはミカエルさんとユキノさん。

 これを上手く利用して、進められるだろうか。


 そこで卍が実験室に入ってきた。

 私は卍を殺して、実験室を出ようとしたけど、プレイヤーの気配を感じて、人狼だけが使えるすり抜け壁を使って反対方向の通路に出る。そしてマップ左上の管制室に向かう。


 管制室に詩子さんがいて、私は白確狙いで一緒に行動することにした。

 そして詩子さんと風呂場に向かった時、緊急ブザーが鳴り響いた。


【クエス】:「実験室で卍を見つけた」

【ミカエル】:「これは吊らないといけないわね」

【詩子】:「ではミカエル先輩で」

【ミカエル】:「ちょっと! なんでよ!」

【ユキノ】:「ミカエル先輩はどこにいたんですか?」

【ミカエル】:「格納庫よ! その前は娯楽室よ!」

【オルタ】:「実験室に近いですね」

【詩子】:「卍を殺した後で格納庫に向かったんですか?」

【ミカエル】:「違うわよ!」


 投票の結果、ミカエルさんが追放となった。


【詩子】:「これで終わりですね」

【クエス】:「お疲れ〜」

【ユキノ】:「お疲れ様でーす」

【オルタ】:「無事クリア」


 だが、終わりではない。

 なぜなら人狼は私なのだから。


 ゲームは再開され、皆は驚く。


【詩子】:「えっ!? ええ!?」

【クエス】:「嘘! 終わってないの?」

【ユキノ】:「ミカエルではなかったの?」

【オルタ】:「こ、怖い」

【詩子】:「ミュ、ミュートでーす」


 ミュートにしてゲーム再開。

 さて、次は誰をろうかな?

 あと、2人殺れば人狼の勝ちだ。


 再スタート地点の会議室を出たところで緊急ブザーが鳴った。


【オルタ】:「え? 誰かられました?」

【詩子】:「違う、違う。ちゃんと考えて、誰か吊ろうと思って緊急ブザーを押した」


 緊急ブザーは死体を見つけた時以外にも鳴らすことが出来る。

 ただし、鳴らすと長いクールタイムが発生する。


【クエス】:「で、誰を吊るの?」

【詩子】:「さっきの卍の事件をよく考えましょう」

【オルタ】:「そうですね。確か卍を見つけたのはクエスさんでしたよね?」

【クエス】:「そうそう。僕が見つけた。僕はね、まずクルー部屋に行って、そこから右上に進んで医務室。それでその後にお隣の実験室」

【ユキノ】:「私は格納庫、その後、会議室」

【オルタ】:「格納庫ですか。ミカエルさんとは会わなかったんですか?」

【ユキノ】:「うん。会ってないよ。タスクがすぐ終わったからかな。格納庫の後、実験室前を通ったけど、そこでも誰とも会わなかったかな」


 なるほど。あの時の気配はユキノさんだったか。すり抜け壁使って良かった。


【クエス】:「オルタは?」

【オルタ】:「私ですか? 管制室向かって、詩子さんがいたから一緒に行動しました」

【詩子】:「そうだよ。私とオルタ一緒にいたよ」

【クエス】:「ずっと?」

【詩子】:「先に私が着いて、その後にオルタが来て、そこからずっと一緒」

【クエス】:「なるほど」

【ユキノ】:「おや? なにか分かりましたか?」

【クエス】:「人狼の正体掴めたり!」


 顔は見えないがたぶんクエスさんはドヤ顔しているだろう。それくらい自身ありげに言い切った。


【オルタ】:「だ、誰ですか?」

【クエス】:「ユキノだ!」

【ユキノ】:「なんで!?」

【クエス】:「ユキノは格納庫から会議室に向かったんでしょ? なら、ミカエルと会ってないのがおかしい。ミカエルは娯楽室から格納庫なんだよ。道は同じはず」

【詩子】:「なるほど。どっちも会議室と娯楽室に挟まれた通路を通りますもんね」

【ユキノ】:「ま、ま、待ってください。さっき言いましたが、私は格納庫の後、実験室の前を通ったんです。だから違う通路のためミカエル先輩と会わなかったんです!」

【詩子】:「なんでそんな遠回りを?」

【ユキノ】:「本当は医務室に向かおうとしたんですけど、クエス先輩がいたから会議室に向かったんです。2人とも騙されては駄目だよ。人狼はクエス先輩だよ!」


 そして投票の結果、ユキノさんが追放となった。


【クエス】:「ふう。やっと終わった」

【詩子】:「ですよね」

【オルタ】:「お疲れ様です」


 でも、終わらない。

 人狼である私が生きているから。


 ゲームは再開される。


【詩子】:「あ、あ、ああっ!? なんで!? なんで!?」

【クエス】:「嘘だ! 嘘だ! まだ終わってないのかよ!」


 終わりと考えていたのにゲームの再開となつて2人は動揺して、慌てふためいた声を出す。私はそれを聞いて、ついついニヤついてしまう。


(ダメダメ。私は人狼なんだから。私もここは合わせて驚かないと)


【オルタ】:「ええっ!? 誰が人狼なんですか?」

【詩子】:「オルタ、クエス先輩だよ! もうこの人しかいないよ!」


 詩子さんのキャラがうろうろと動き回る。


【詩子】:「怖い! いやだ!」

【オルタ】:「詩子さん、ミュート忘れてますよ!」

【詩子】:「ああ! 緊急ブザーが押せない! クソがぁ!」


 緊急ブザーは先程使ったため、クールタイムが発生している。そのため使用出来ない状態となっているのだ。


 詩子さんはミュートを忘れて、わめきながら会議室を出て、逃げ始める。


【詩子】:「逃げろー! 逃げろー!」

【オルタ】:「待ってくださーい」

【詩子】:「オルタ、信じて! 私じゃないから」

【オルタ】:「信じますよ」

【詩子】:「オルタ!」


 詩子さんが感極まる声を出す。


【オルタ】:「……だって人狼は私ですから」


 私はキルボタンを押して、詩子さんを殺す。


【詩子】:「クソがぁぁぁあああ!」


 画面は私とゆるるさんの2等身キャラ、その上に『Werewolf Win』と表示される。


  ◯


【ミカエル】:「お疲れ様。オルタ、大活躍ね」

【ゆるる】:「どうなるかと思ったけど、よくやってくれたわ」

【卍】:「怖え。オルタ、怖え」

【クエス】:「やられたよ。見事だ」

【詩子】:「クソッ! 騙された!」

【みぃこ】:「うますぎ!」

【ユキノ】:「まんまと騙された。悔しい」

【コロン】:「本当に初心者?」


 敵味方から賞賛の嵐が。

 いやあ、嬉しい。

 頑張った甲斐があったというものだ。


【オルタ】:「いやあ、ありがとうございます。ゆるるさんが真っ先にいなくなって心細かったですけど、なんとか勝ちました」

【ミカエル】:「オルタ、もう初心者ムーブは通用しないからね!」

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