第15話 掃除

 一階を私と佳奈、海さんが。二階をハルコさん、葵さん、福原さん。そして照さんがバルコニーを掃除することになった。


 照さんは「絶対バーベキューするからめっちゃ綺麗するから!」と意気込んでいた。


 私達はまず窓を全開にして、はたきと雑巾で棚や時計、テレビ、エアコン、の埃を落とした。その後、掃除機で埃を吸い、テーブルダスターでテーブルの埃を拭き取りました。


「ねえ、掃除機だけどそろそろいいかな?」


 ハルコさんが一階に降りてきて、リビングでテーブルを拭いていた私に聞く。


「今、海さんが脱衣所で使ってます。そろそろ終わるかと」


 掃除機の音も聞こえないし、終わったと思う。


「分かった。結構綺麗になったわね」

「ソファでくつろげるくらいには。二階はどうですか?」

「全部屋の布団はベランダに干しといたわ」


 ハルコさんが右肩を回して言う。


「お疲れ様です」


 と、そこへ海さんが掃除機を持って戻ってきた。


「掃除機、次使ってもいい?」

「いいよ」


 ハルコさんは海さんから掃除機を受け取り、階段を上がる。


「さて、後は……何か残ってる?」

「佳奈が食器も汚いので洗っておこうと言ってました」

「その佳奈ちゃんは?」

「モップで廊下を拭いてますが会いませんでした?」

「見てない」


 私達は廊下に出て、佳奈を探すが、どこにもいなかった。


「あれ? あの子どこ行ったんだ?」


 廊下もまだきちんと綺麗でないし、あいつさぼってんのか?


「千鶴ちゃん、あそこ! バルコニーにいるよ!」


 バルコニーに続くガラス戸のある廊下から海さんが外を指して言う。


 外を伺うとバルコニーには佳奈と照さんが掃除をしていた。

 照さんはモップで床を拭き、佳奈は椅子を雑巾で拭いていた。


 私はガラス戸を開けて、


「佳奈、廊下まだ汚いよ」

「お姉ちゃん、今は照さんにモップを貸してるから廊下はちょっと後になる」

「ごめんね、千鶴さん。あと少しで終わるから」


 照さんがモップで床を拭きつつ、謝罪する。


「分かりました」


 その後、私と海さんはキッチンへ向かい、食器洗いをしました。

 埃を取るだけなので洗剤は使わず、水とスポンジだけで食器を洗い、海さんがキッチンペーパーで食器の水気を拭き取ります。


 そこで二階組がやってきました。


「二階は終わりました。まだ残ってることはありますか?」


 福原さんが尋ねる。


「廊下が少し残ってます」

「廊下ですね。分かりました。やっておきます」

「お願いします」


  ◯


「ふぅ。疲れたー」


 ハルコさんがソファに座り、両腕を伸ばす。


「言っておきますが、この後、ダンスレッスンですからね」


 福原さんが釘を刺す。


「あー、そうだった。ねえ、今日はもういいんじゃない?」


 海さんがそう提案してくる。


「掃除したくらいで疲れてどうするんですか?」

「大掃除じゃん。大晦日の大掃除くらいに……いや、それ以上に掃除したよ。布団めっちゃ叩いたよ」


 葵さんがぐったりして言う。


「それに車酔いの疲れがまだ……」


 ハルコさんが疲れを付け足す。


「何馬鹿言ってるんですか。駄目ですよ」

「これだと途中で倒れるかも」

「倒れたらヤカンの水を飲ませます」

「ラガーマンかよ」


 ちなみに私は歌のレッスンなのでしんどくはないはず。


「今、私は歌のレッスンだからしんどくないとか考えてない?」

「え!?」


 葵さんに心を読まれて私は驚く。


「気をつけなー」


 さらにハルコさんが恐々しく言う。


「な、なんですか?」

「フッフッフー、後で分かるよ」

「分かるって……蚊が!」


 私の顔近くに蚊がやって来ました。

 両手ではたこうにも逃しました。


「こっちにも!」


 照さんが両手を打ち鳴らします。


「嘘、なんで?」


 海さんが悲鳴交じりに聞きます。


「掃除の時に窓を開けたからでは?」


 佳奈が答える。そして、


「蚊取り線香ありました?」

「棚にありませんかね?」


 福原さんは棚を指す。

 佳奈は棚に向かい、中を調べるが、


「ありません」

「あとで蚊取り線香を買いに行かないと駄目ですね」

「かゆい!」


 海さんが両腕をさすって言います。


「噛まれたんですか?」

「違う。蚊がいると思うと痒くなってきた」

「それはなんとなく分かります。ここにいては皆さん、噛まれるので外に向かいましょう」

『…………』

「なんですか?」

「上手い具合に私達をレッスン場へと動かそうとしてません?」


 照さんがジト目で福原さんに聞く。


「そんなことはありません。さあ、立ち上がって。ハリアップ! あ! 着替えを忘れずに」

『ほら!』

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