第80話 そして
配信が終了した時、時刻は朝の4時31分だった。
私は涼子と朝霧さんに『お疲れ様』とメッセージを送信した。
その後、私は就寝した。
次に目を覚ました時は昼の13時で、スマホには涼子と朝霧さんから返信メッセージがきていた。
朝に朝霧さんは『これで4期生との溝も埋もれた気がします。ありがとう』とメッセージがきていた。
SNSで『ワラビアナ』の配信がどれだけ話題になったかを調べるとトレンドにギリランクインしていたことが分かった。
「ま、トレンドがメインでないから別にいいのかな」
朝霧さんは4期生と親睦を深めることを第一に考えていたしね。
私は部屋を出て階段を下りる。
そして台所の棚からで惣菜パンを取って、ダイニングで食べる。
「お昼はそれでいいの?」
と、母に聞かれた。
「よくないよ。これはお腹減って動けないから一時的なエネルギー補給だよ。お昼は何食べたの?」
「冷麺」
「麺類はいいや。ご飯系が食べたいなー」
何か使ってもらえなかいかと期待の眼差しを母に向ける。
「お茶漬けでも食べてなさいよ」
「えー、それだけ?」
「あとはハムとかちくわとか……豆腐ね」
みみっちいな。もっとハンバーグとかカツ丼とかガッツリ系が食べたいな。
◯
『天野、コロナ感染したらしいよ』
午後、瀬戸さんから連絡があり、天野さんがコロナ感染したことを教えてもらった。
『馬鹿だよねー。遊び回ったツケがきたんだよ』
瀬戸さんが呆れたように言う。
「明日から大学も始まるんでしょ? 大丈夫なの?」
『今週……来週も無理かな。天野のやつ、そこそこ重症らしいよ。熱があったり、咳が酷かったり、体もだるいんだって。あと、瞼が膨れたらしいよ』
「瞼が?」
『新型だね』
「初耳だけど?」
瞼が膨らむというのは初耳だ。
『新型といっても、つい最近のだよ。ニュース見てない? 昨日あたりに報道されてたよ。どのニュースでもやってて大騒ぎ』
「あー、昨日は猫泉ヤクモの配信見てた」
『それ私も見たよ。代打は銀羊カロだったんだね。びっくり』
「あれ? 前に言ってなかったっけ?」
『その時はキセキカナウの件だったよ』
「そっかそっか。ごめんね」
そうだった。キセキカナウについて瀬戸さんに聞いたんだっけ。
『いいよ。フライングはよくないしさ。私が言うのもなんだけど外部にVの話は駄目だよ』
「うん」
『ま、たとえ口にしても私は外部には漏らさないから安心して』
◯
瀬戸さんとの通話後、私はリビングのテレビで午後のニュース番組を見た。
瀬戸さんの言う通り、新型のコロナウイルスが蔓延していて、新たな症状として瞼が膨らむという。そのため変異株の名は『フロッグ』と名付けられた。
番組内では二重の女性が新型コロナ感染する前と今の写真が映し出された。
「うわー。一重になってる」
ぱっちり二重の大きな目が、瞼が膨らんでいて細目になってる。
「新型は女の敵ね」
と、母が険しい顔で言う。
「あんた、新型だっけ?」
「株は分からないけど。瞼が膨らむこの新型はつい最近のだから違うと思う」
瞼も膨らまなかったし。周りで瞼が膨らむ新型コロナになった人はいないし。
……あ、天野さんがいた。でも、天野さんは感染経路が別だと思うからノーカンかな。
「それにしても瞼が膨らむとなると、どうすればいいのかしら?」
「どういうこと?」
「だって、瞼が膨らんでたら、新型に感染したってバレるじゃない」
「サングラスするとか?」
「それも『私は新型に感染しまった』と言っているみたいじゃない」
「う〜ん? 分厚いメガネは?」
牛乳瓶のような分厚いメガネなら問題ないのではないか。
「伊達メガネか。家にあったかしら?」
と、そこへ佳奈が帰ってきた。
「ただいまー」
「あら、おかえり」
佳奈はリビングでカバンを適当に床に置いて、瞼をこすりながら、冷蔵庫へそそくさと向かう。
「どうしたの?」
母が佳奈のカバンを邪魔にならないよう隅に置く。
「なんか目にゴミが入ったのかな? むずむずする」
冷蔵庫から目薬を取り出した佳奈の瞼は膨らんでいた。
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