第78話 アドベンチャーパート

 風呂上がり、リビングでバーゲンダッツのいちごアイスを食べていたら2階から下りてきた佳奈に、「え? 配信見てないの?」と、咎められた。


「見てたよ。ただ、風呂に入っててさ」

「ずっと見ておかないと」


 佳奈は呆れたように言う。


「でも、長いし。佳奈は見てたの?」

「一応ね」

「今はどこらへん?」

「アドベンチャーパート。本当はお姉ちゃんがコラボをやる予定だったんでしょ? てか、なんで先に入ってんのよ。コロナ感染者でしょ?」

「もう治ってるから」

「お風呂、次、私なんだけど。感染したらどうするの?」

「お風呂だから熱殺菌されているって」


  ◯


 2階の自室に戻り、ベッドに寝転んでスマホからヤクモの配信を見る。


 佳奈の言う通り、今はアドパンチャーパートで主人公は暗い館の中を進んでいた。

 こうなった状況を知ろうと私はまず『ワラビアナ』のストーリー解説動画を探して、それを見ることにした。


 検索するとすぐに目当ての動画がヒットした。

 私は検索結果の1番上にある動画をタップして視聴する。


 動画は今流行りの『まったり淫魔』という2体のキャラと音声プログラムを使ったストーリー解説動画で、『ワラビアナ』について分かり易く解説されていた。


 私は動画を全部見るのではなく、あくまでアドベンチャーパートまでの解説を見る。


 そしてその解説によると、祭当日の朝に昨晩行方不明になった現地交渉人の鈴木さんが遺体で見つかたようだ。


 それでも祭は関係ないといわんばかりに始まり、主人公は招待された代議士の馬場園を館に残して、開発責任者の中本と市長の野々村と共に夜の祭に参加。


 祭は楽しく進められるのだが、終盤で最後の儀式として生贄に主人公達が選ばれた。

 実は村人達が主人公達を祭に招待したのは復讐をかねた生贄が目的であった。

 主人公は村人達に襲われ、気絶させられる。


 そして主人公が目を覚ますとそこは薄暗い洞窟内の開かれた場所だった。


 謎の儀式が始まり、開発責任者の中本が中央に連れて行かれる。

 村人達が洞窟を去っていくと、村人達が出て行った穴とは反対方向から謎の化け物が3体現れた。


 体は背が高く、そして腕が異様に長くて少し屈むと指先が地面に着くほど。

 大きな特徴として顔に色があった。色は3体それぞれ別の色を持っていて、赤、青、緑の3色。髪は落武者のように長い。目は鋭く、鼻は鉤鼻かぎばな、口は大きく、顎が2つに割れている。そして側頭部には大きなつのえている。


 その鬼のような3体の化け物は中央の中本さんに近づくと口を大きく開けて、中本さんを生きながら食べ始まる。


 残された主人公と市長はなんとか縄をほどいて、中本さんが食べられている間に逃げる。


 しかし、すぐに赤鬼と青鬼が追いかけてきた。

 道は途中で二手に別れ、主人公と市長はそこで敵を分散させようと提案して主人公と別れる。


 主人公は逃げ続けて、なんと屋敷の西館地下へと辿り着く。

 洞窟はなぜか屋敷の西館と繋がっていたようだ。


 そしてアドベンチャーパートが始まる。


 ちなみに市長はあの後、鬼に襲われて食われた。可哀想と思われるかもしれないが、実は市長、あの道がどこに続いているか知っていたようだ。それをあえて知らぬふりをして、主人公を囮にして、自分は外へ向かう道を選んだようだ。


  ◯


 私は解説動画を閉じて、ヤクモの配信に戻る。


 ヤクモは怖がりつつも、アドベンチャーパートを進めて、今は西館から北館へと移動していた。


 北館は古い日本家屋で主人公は家の中を進みつつ、鬼が近づいてくるとタンスに隠れてその場をしのぐ。そして鬼が遠くに行くとタンスから出て、謎解きをしては鍵を見つけ、先へと進んでいく。


『私、思うんだけどさ。なんでカラクリとか鍵が多いの?』


 カロが疑問を投げる。


『えっ!? 分かんないよ!?』


 ヤクモは襲い迫る鬼に怯えつつ答える。


【それはゲームだからさ】

【ホラゲーって、謎解き多いよね】

【ただ逃げるだけではつまらないからね】


 そして主人公はなぜか外ではなく、上の階へと進み、とうとう屋根裏部屋に辿り着く。


『なんで外に逃げないの?』


 カロが皆の想いを代弁して言った。


『知らないよー』


【ここからが後半戦】

【あとは東館と南館】


『ヤクモ、まだ半分だって』


 コメントを読んだカロが驚きの声を出す。


『も、もうやだー! 交代してください』

『駄目だよ。最後まで頑張りな』


 主人公は屋根裏部屋の隠し通路を通って、東館3階へと移動する。


 3階で主人公は代議士の馬場園に会いに行く。


 2階の部屋とは違い、代議士の部屋は白い洋室でキングサイズの天蓋付きベッド。

 テーブルにはワインがあり、すでに代議士は1本を空にしていた。

 代議士はバスローブ姿で2本目のワインを飲み、主人公の話を全く聞かない。


『こんな奴、さっさと放っておけばいいのに!』


 カロは憤慨して言う。


『そうだね。喋ってる時間があるなら逃げればいいのにね』


 結局、代議士は一緒にこの屋敷を離れてくれないので、主人公はまた一人で逃げることになる。


 会話パートが終わり、主人公が廊下に出るとムービーパートが始まる。


 主人公が出て行った後、代議士はワインをまた飲み始める。そして空になり、もう一本開けようかとワインを取りに向かうとドアがうるさくノックされた。


 代議士はバスローブを脱ぎ、『今日の可愛いは誰だーい』とか言いながら、スキップしながらドアに向かう。


『全裸ー!』

『いやー!』


 カロは笑い、ヤクモは悲鳴を上げる。


 一応下半身にはモザイクがかかっている。


 代議士がドアを開けるとそこには青鬼がいた。代議士はきょとんとする。そして青鬼がモザイクを──つまりアレを引きちぎった。


 一瞬遅れて、代議士は自分の股間を見て、自分の息子が抜き取られていることに気づいて、喚き叫ぶ。


『ええ!? 何を抜いたの?』

『ヤクモ、ナニを抜いたんだよw』


【鬼の手◯キ】

【出会って1秒で抜かれる】

【激しいのをお望みですか?】


 青鬼は抜き取ったモザイクを代議士へと投げる。モザイクは代議士の開け放たれた口へと入り、代議士は驚いて飲み込んでしまう。


【なんてこった!】

【最後の食事が自分のモノw】

【ごっくんしちゃった】


 代議士は床に倒れ、四つ這いで泣きながら逃げる。青鬼は脚を掴み、代議士を棍棒のような持ち上げて床や壁に叩きつける。


 そして最後に代議士の頭を床に叩きつけ、逆さになった両脚を大きく開かせる。


【出た! ◯神家】

【屈指の名シーン犬◯家】


 さらに股間からは血が噴き出て、虹が発生する。


【人間噴水】

【白いのではなく、赤いのが出てます】

【虹演出w】

【これで代議士はってしまった】


 この代議士のムービーパートは有名なのか。たくさんのコメントが流れた。

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