第77話 ワラビアナ開始

 配信開始前に私はスマホで涼子と朝霧さんにメッセージを送る。

 そして配信開始時刻になり、4期生銀羊カロと6期生猫泉ヤクモのコラボ配信が始まる。


  ◯


『こんばんわ。猫泉ヤクモでーす。今日は配信前にSNSでも告げていましたが、残念ながらオルタがコロナのためお休みとなります』


【残念だ】

【1人で大丈夫?】

【オルタ来ないのか。知ってたけど】


『しかーし、銀羊カロが代理として参加することとなりました』


 そして画面に銀羊カロのLive2Dが現れる。名前の通り、銀髪に羊の角の女の子が現れる。


【おー!?】

【カロだ!】

【4期生とのコラボか】


『ご紹介に預かり、どうもー。ペイベックス4期生銀羊カロだよー。オルタの代わりに参加だよー』

『今日はよろしくお願いしまーす』

『よろしくねー。……でも、私、必要ある?』

『ど、どうしてですか?』

『今日はワラビアナでしょ?』

『はい』

『ワラビアナは1人プレイだから、これってヤクモがプレイして、私は見守るだけでしょ?』

『いやいやいやいや、確かにそうですけど、私1人では心細いんで』


【そうだよ。ワラビアナはヤクモ1人は無理だよ】

【頑張って見守ろう】

【仲良く仲良く!】


『それならオフである必要ある? 見るだけなら私は自分家じぶんちからでもよくない?』

『ダメですよ! 1人は怖いですから。一緒にいてくださいよ!』

『えー』

『お願いしますぅ』

『仕方ないなー』


 そしてホラゲー『ワラビアナ』がスタートした。


 まずはムービーから始まる。


 ストーリーは昭和50年の日本。

 

 主人公はダム建設の現場責任者で名前は三谷茂光。年齢は47で妻子持ち。


 来年からのダム建設着工により、村が潰され、それにより今年で最後の祭が執り行われることになった。その祭への招待を茂光を含めて5名が受け取ることになる。


 正直、主人公は祭への参加は気乗りではなかった。


 最初は招待を断ることも考えていたらしい。

 なんでもダム建設に反対する村人と色々あったため、村人とは会いたくなかったようだ。


 けれど祭に参加しなければ、またあれこれと難癖や文句をつけられるとのことで、上から参加するように命じられた。


 そして嫌々ながらも主人公は電車に乗り、村へと向かう。

 駅に着くとロータリーでダム技術開発責任者の中本が車で迎えに来ていた。中本は中年太りのおっさんだった。


 その中本は先に村へ訪れていたのだ。


『なんかこいつ怪しくない?』


 カロが疑問を告げる。


『どうしてです?』

『だって先に村へ訪れているんだよ。普通、一緒に行かない?』

『確かにそうですね。でも、主人公は最初に渋ってたらしいですから、遅れたのでは?』

『なるほど』


 主人公は中本が運転する車に乗り、屋敷に向かう。

 なんでも村には宿がもう壊されていたため、主人公達は名士が建てた村一番の屋敷に住むことになった。


 屋敷は四つの館で構成されており、主人公は東館に泊まるらしい。


『でか! なんで田舎の村にこんな洋風な屋敷があるの? しかも四つの館があるんでしょ?』

『そうとうな金持ちが建てたんでしょうね? 名士ってどんな人でしょうか?』


 駐車場は南館にあるため、主人公の中本は南館に入り、そこから東館に向かう。


 南館に入る前に『道枝家』の表札を主人公達は見た。


『この道枝というのが名士の名前なのかな?』

『でも、なんかおかしくない?』

『どこがです?』

『この表札、ボロボロだし。なんか伸びた草木で見えにくいし』

『確かに見えにくいですね』


 ムービーパートは南館に入ったところで終わった。

 そこからヤクモが主人公を操作して、東館へと向かう。


『まずは散策してみようよ』

『そうですね』


 そして南館を散策するのだが、行動に制限があるのか、部屋に入ろうとすると中本に『そこは違うよ』と止められてしまう。

 できたことは1階の廊下とバルコニーを歩けることだけだった。


『今は何もできないってことですか?』

『だろうね。とりま東館へ向かおうか』


 ヤクモは主人公を操作して東館へ向かわせる。

 東館は旅館のような建て付けであった。


『これまた良い旅館だね』

『でも確か、村の旅館はとっくに潰れたと言ってませんでした?』

『そうだね。ということはここは客用の館ということ?』

『客のために館まで作ります?』

『確かにおかしいよね。わざわざこんな大きな旅館を建てるなんて』


 東館のロビーに着くとストーリーが発生。ムービーパートとは違い、音声はなく、画面下部にセリフが流れる。


 女将らしき人が現れて、主人公達を案内する。階段をのぼって2階へ。そして廊下を進み、鷹の間と部屋札が掲げられた部屋の前で止まり、女将は主人公に部屋の鍵を渡す。そして一礼をして女将はその場を去る。


 中本は『私は右隣の熊の間だから何かあった、いつでも呼んでくれ』と言って熊の間に入った。


 ストーリーが終わり、主人公パートが再開される。


 ヤクモは鷹の間ではなく熊の間をノックする。


 中本が現れ、『どうしたの? 問題でもあった?』と聞く。主人公は『何もない』と言うと戸が閉じられる。


『なんで熊の間に?』

『いえ、何かあるのかなって思って』


 ヤクモは主人公を操作して、鷹の間に入る。


 玄関で靴を脱ぐ。左右にドア。そして正面に襖。

 襖を開けると畳部屋があり、さらに左隣にも襖があり、そこは寝室だった。すでに布団が敷かれていた。


『ん?』

『どうしたのヤクモ?』

『いえ、そのう、枕が2つなのでどうしてかなっと』

『本当だ。予備じゃない?』

『……ですかね?』


 その後、ヤクモは主人公を動かして部屋を調べる。

 ポットを調べると『お茶を飲む』、『飲まない』の選択肢が現れる。テレビを調べると『テレビを見る』、『見ない』の選択肢が。

 ヤクモは『テレビを見る』を選択すると、主人公はテレビが点ける。画面が白く明るくなっただけで何もない。


 部屋を出て、玄関から見て左のドアを開けるとそこはトイレ。右のドアを開けると浴室だった。


 トイレと浴室を調べるも何もなかった。


 戸を開けようとすると『まだ部屋を見ておかないと』とセリフが現れて、主人公はUターンする。


『まだ見てないのありましたっけ?』

『窓とかは?』

『窓?』

『景色を見るとか』

『なるほど』


 畳部屋に戻り、窓へと近づく。窓からは村が一望出来た。

 窓から離れようとすると『部屋を出る』と『出ない』の選択肢が現れた。『部屋を出る』を選ぶと戸がノックされた。主人公が返事をすると女将と女中が入ってきた。


 女中は二十代ほどの若い女性で妙に色っぽかった。

 女将曰く、どうやらこの女中が主人公の世話係だそうだ。


『ヒロイン枠かな?』

『主人公は妻子持ちですよ』


 挨拶が終わると2人は出て行き、入れ替わりに中本と現地交渉人の鈴木が部屋を訪ねてきた。


 会話パートで祭会場に向かうことになった。


  ◯


 ここで私は一旦スマホを閉じて、部屋を出て階段を降り、1階のリビングに向かう。


 リビングでお茶を飲んでいると母から、「お風呂空いてるから入ってきなさい」と言われ、脱衣所に向かう。

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