第28話 ムムム【???】

 ここ最近、あの子の周りがうるさい。

 色んな子があの子に近付いている。


 煩わしい。


 私はあの子とハリカーがしたいのに。周りの子が邪魔でなかなか前へ進まない。


 そんな時だ。ペイベックスVtuber上半期大型イベント内容がハリカー大会になった。


 ハリカーの練習をしよっかと誘うべきか。それともハリカー大会で競うことを楽しむべきか。


 …………まあ、後者だろうな。


 色々あって、今のあの子に練習しようなんて言えない。


 大会で楽しもう。


 でも、その前に予選を通過しないと。

 予選はあの子とは違うブロック。

 出会うのは決勝戦。


 私は勝てるけど。

 あの子は勝てるかな?


 やはり赤羽メメが出るのかな?

 メメは上手だっけ?

 なんとかオルタが出てこないかな?

 メメがピンチになるとオルタが出るかな?


 ……まあ、今は練習しよう。


 私はスロッチの電源を入れた。


 私は強い。でもハリカーに絶対はない。


 ハリカー。それはカートに乗ったハリオ・シリーズのキャラを使ってレース勝負をするもの。


 子供から大人まで幅広い年齢層に人気のレースゲーム。


 操作性も簡単であるがなんと言っても、このゲームの醍醐味はアイテムであろう。


 このアイテムは自身のカートのスピードを上げたり、無敵モードになったり、そして他プレイヤーをスリップさせたり、麻痺させたりして妨害することも出来て、下手なプレイヤーでも一気に大逆転することができるのだ。


 さらにキャラやカートによっては様々な特性があったり、戦略の幅が広いというのも人気の一つでもある。


 【1人プレイ】、【2人プレイ】、【誰とでも】の3つがあり、私は【誰とでも】をえらんだ。


 この【誰とでも】はネット対戦のこと。


 私はハリオシリーズのボスキャラ、そしてトゲの生えた太いタイヤのカートを選んだ。


 その後、コースを選ぶ。


 ネットで繋がった他のプレイヤーもコースを選びを終えて、自動で選ばれる。


 選ばれたコースは私が選んだカートでは不利なコースだった。


「ま、始めるか」


 コースが不利でも走る。なんといってもハリカーに絶対はないのだ。


 不利な条件でも勝つことがある。それがハリカー。


 私は前方を走るカートを赤色のロケットランチャーアイテムで弾き飛ばす。


 ロケットランチャーアイテムは、ただ前を爆破させる青色のものと、相手を狙う赤色の追尾型の二つ存在する。


「……そういえば、このロケットランチャーが近付く瞬間に虫の音がするんだっけ?」


 ずっと前にあの子が言っていた。その音でロケットランチャーが近付いていることを知り、回避が取れるとか。


 ネットでググると、どうやら虫が動く予備動作の音だとか。


 そんなもの私には聞こえない。


 私だけじゃない。多くの……いや、ほとんどの人はそんな音は聞こえない。


 あの子だけの特別な能力。


 そういえば、つい最近、そんな話を大学でしていたっけ。

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