第11話 視聴【瀬戸真里亞】

 今日、赤羽メメ・オルタが正式に生まれ、第1回目の動画配信が行われた。


 自室で視聴した私は今、掲示板で皆の反応を伺った。


 動画配信第1回目はアニメ『魔法少年マナカ・マグラ』の第1話だった。


 平成のオタクなら誰もが知っている神アニメ。この後にたくさんの魔法少年ものの漫画やラノベが生まれた。


 実況はお世辞にも上手いとは言えないものだったが、オルタがただの一般人でアニメやゲームとは疎遠な人ということもあり、実況は今までのVtuberとは違い、オタク達には新鮮味があった。


 そのオルタの反応を見て、リスナーは「俺も初めはそうだったなー」と昔を懐かしみ、そして第3話でオルタがどんな反応をするのか楽しみしている。


 かくいう私もそうだ。


 そしてネットの反応も上々だった。


  ◯


 738:名無しのリスナー

「ガチ姉デビュー!」


 739:名無しのリスナー

「>>740 本物なわけないだろ」


 740:名無しのリスナー

「>>739 前の配信見てねーの?」


 741:名無しのリスナー

「>>739 アンチは他の板に行きな!」


 742:名無しのリスナー

「マナカ・マグラか。懐かしいな。パンピーなだけあって反応が新鮮だったな」


 743:名無しのリスナー

「俺も初めはオルタちゃんと同じだったな」


 744:名無しのリスナー

「わかる。1話と2話は虚無しかなかった」


 745:名無しのリスナー

「>>744 まじで最初はつまらなかったもんな」


 746:名無しのリスナー

「あの時はどうせみんな仲良くなるんだろみたいなことを先読みしてた」


 747:名無しのリスナー

「それゆえ第3話がすごかった」


 748:名無しのリスナー

「リアタイで見た俺」


 749:名無しのリスナー

「>>748 おっさん」


 750:名無しのリスナー

「>>749 20代前半ですが」


 751:名無しのリスナー

「メメが妹で姉がオルタでオッケー?」


 752:名無しのリスナー

「>>751 そうだよ」


 753:名無しのリスナー

「だとしたらマナカを薦めるとはメメは結構なオタク?」


 754:名無しのリスナー

「オタクでなくてもマナカを薦めない?」


 755:名無しのリスナー

「>>753 オタクでないVtuberっているの?」


 756:名無しのリスナー

「>>754 普通は群馬弥太郎作品だろ」


 757:名無しのリスナー

「>>756 それパンピー向けのアニメ映画」


  ◯


 掲示板も他の5期生のスレッドに比べて伸びもいい。多少アンチはいるが問題ないレベルだろう。


 それにしてもやはりこの声は宮下千鶴さん……だよね?

 まだ確定はできない。あくまで最有力候補の一つみたいなもの。


 この際、直接聞いてみるか?

 いや、駄目だ。


 合っていても否定されるだろうし、聞かない方がいいのかな。


 でも、それでも、聞きたい気持ちが高い。


 答えがすぐそこにあるとなると聞きたくてしょうがない。


(ううっ)


 私は枕に顔を埋め、手足をばたつかせる。


 もしだ。もしオルタと認めたらどうなる?


 赤羽メメはオルタの妹。

 つまり……紹介してもらえる。


「まじか? まじか?」


 嬉しくて私は手足をばたつかせる。


 いや、待て。

 身バレしてくる奴を妹さんに紹介するか?


 そもそも私は中を見たいのか?


 見たくないか見たいかといえば見たい!


 でも、でも、う〜ん。


 イメージと違ってたら嫌だしな。


 また手足をばたつかせると、


「姉ちゃん、飯だぞ。何バタバタしてんだ?」


 3つ年下の弟が私の部屋のドアを開けていた。


「ちょっと! 乙女の部屋を勝手に開けるな!」

「呼んでもこないからだろ」


 と言って弟はドアを閉めて、リビングへと向かう。


 とりあへず飯を食べてから考えよう。


「ん?」


 掲示板を閉じようとした時、ある情報が目に入った。


 その情報はたぶんフェイクだろう。

 しかし、次々とそのコメントの情報が書かれていく。


 真偽を確かめるため、私はとあるVtuberのSNSを確認する。


 そして掲示板で書かれたことが本当だということを知った。


「え、ええ!? ガチで!?」


 また私は掲示板に戻る。

 先のスレッドは1000を超えたので、新しいスレッドが立っていた。


「姉ちゃん、飯だって!」


 弟が戻ってきて苛立ちに言う。


「後で! 今ちょっと手が離せない!」


 私はタブレット画面を見つつ答える。


「今日、鍋だよ」

「ちょっと後で行くって!」

「肉無くなるよ」

「残しといて!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る