第19話 ゾンビ・アイランド②

 群がるゾンビを蹴散らして私達は前へ進む。

 ゾンビ自体はそれほど強くなく、容易に蹴散らすことが可能。


(これだけ?)


 少し物足りなさを私は感じていた。


「オルタ、私がこいつらを倒している間にレバーを引いて」

「オッケー」


 道を遮断するように大きなゲートがあった。それをレバーを引くことでゲートが開くらしい。


「あれ? 無理だ。ゲートキーを差し込んで下さいと出るよ」

「ゲートキー!?」

「こう言う場合はどこかに落ちるとか敵がもってるとかかな?」

「オルタ、あの倉庫に入れるっぽいよ」


 そこは赤い屋根の倉庫でシャッターが半壊して大穴が空いていた。


「行きましょう」


 私達はゾンビを蹴散らしながら、倉庫へと入る。すると大きな衝撃音が鳴った。


「ひゃあぁ!」


 ツクモさんが大きな悲鳴をあげる。

 私はそれに肩を縮める。


「な、な、何?」


 ツクモさんが弱々しく周囲を伺う。


「あ、あれだ。シャッターの穴が塞がれた」

「なんで? ま、まさかゾンビが穴を塞いだ?」

「ゾンビにそんな知能はないですよ。きっと何かが落ちて穴を塞いだのかな?」


 そして私達は倉庫を調べるのだが──。


「あれ? 何もない?」


 倉庫はすっからかんだった。あるのトラック一台。


「ねえ、オルタ、これはやばくない? 周囲からゾンビがやってきて襲ってくるとか?」

「可能性大ですね」

「やだー」

「とりあえず、あのトラックを調べよう」


 トラックは超大型でトラックの荷台に軽トラが入るくらい大きい。


「……ねえ、これって、絶対トラックの荷台の扉を開いたらわんさかゾンビが出てくるパターンだよね?」

「そうですね。私、開けましょうか?」

「うん。お願い」

「それじゃあ……なんで離れるの?」


 なぜかツクモさんはトラックから大きく離れようとしている。


「だって開けるんでしょ?」

「いやいや、荷台開けたらゾンビが出てくるんだから、乱射の準備しておいてくださいよ」

「えっ!? それ私の役目なの?」

「当然ですよ」


 そうでなければ私、荷台のゾンビに食い殺されるよ。


「ううっ、それなら私が開けたい……交替こうたいしない?」

「まあ、いいですけど」


 荷台を開けるのがツクモさん。そして荷台からゾンビが出てきたら乱射で倒すのが私となった。


「開けるよ」

「いつでもどうぞ」


 ちょうど良い距離で私が操る男性キャラはライフルの銃口を荷台の扉にきっちり向ける。


 そしてツクモさんが荷台の扉を開ける。


 開けた瞬間、ツクモさんは「ひゃあぁぁ」と言いながら大きく離れる。


 ──が。


「あれ? ……来ない」

「どうしたの?」


 ツクモさんがおずおずと私の元に来る。


「何も起こりません」

「いないの?」

「暗くてよく分かりません」


 荷台の中は真っ暗だからゾンビがいるのかいないのか分からない。

 とりあえずトリガー引き、銃弾をぶっ放す。


「ひゃあ! え? いたの?」

「いえ、分からないので一応、中に向けて撃ちました」

「な、なるほど」

「反応がないですし。ゾンビはいなかったのですかね」

「そうだ! このライフルって、ライトが備え付けられているよ」

「それ先に言ってくださいよー」


 私はライフルのライトをけて荷台の中を調べる。


「ゾンビはいないですね」


 私は荷台に乗り、中を調べる。中には紙が1枚と小さな受信機が壁にテープで貼られている。


 私はそれらを取って、荷台を出る。


「紙と受信機が1枚ありましたよ」

「なんて書いてるの?」

「えーと」


 画面に紙の内容がアップで表示される。それはツクモさんにも共有される。


『これ以上、ゾンビ共を溢れさせないため、ゲートを閉じた。これでいい。しかし……まだこのエリアに生存者がいて、生存者達がゲートキーを探し始めてる。感のいいやつが俺が持ってると疑っている。だから俺はゲートキーを犬の首輪に取り付けた。首輪には発信機が取り付けているので、この受信機で見つけられるはず』


「この受信機で犬を見つけろってだね」


 ツクモさんが受信機をオンにするとマップに赤い点が灯る。


「でも、なんでこいつは受信機をここに置いたの? てか、これだとゲートキーのありかが生存者にバレるよ?」

「それは生存者が私達ってことなんじゃない? で、こいつはゲートキーの情報をここに隠したってことこな? ま、深いことは考えずに犬を探しに行こう」

「こういうのって、たいてい犬が巨大なゾンビ犬になってません?」

「やだー」


 そして私達は画面を元に戻す。


 すると地震が発生。


「な、な、何?」

「ツクモさん、落ち着いて」


 私達がいたシャッターが外から破壊されて、ゾンビの群れが私達に向かってきた。


「何よこれー!? なんで急に現れるのよー!?」


 ツクモさんは悲鳴を上げつつ、ライフルでゾンビを蹴散らします。


「たぶん、私達が紙を読み終えるまで待ってくれてたんですね」

「ゾンビのくせに空気読むなー!」

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