第20話 ゾンビ・アイランド③

「ここを曲がった先だよね?」


 ヤクモさんがゾンビをライフルで蹴散らしつつ聞く。


「はい。もうすぐです」


 今、私とヤクモさんはゲートキーを持つ犬を追いかけていた。


 犬の位置はマップに位置情報として赤い点で示され、角を曲がった先にいることが判明している。


 ヤクモさん操るバニーガールが角を曲がろうとする。

 私は後ろからツクモさんを掴みかかろうとするゾンビをライフルで撃つ。


「ここは私に。ヤクモは犬を」

「分かった」


 そしてヤクモさんは先に角を曲がった。

 私は残りのゾンビを撃ち殺していく。


「た、大変よ!」


 角を曲がったヤクモさんが緊急を要する声を出す。


「どうしたの?」

「犬がいない」

「え?」


 私はゾンビを蹴散らして角を曲がる。

 すると角を曲がった先にはヤクモさんしかいない。


「あれ? 確かにここに……」


 私はマップで犬の現在地を確認する。


「移動してる?」


 先程まではここに赤い点が灯っていたが、今は少し先を進み、角を曲がった先に赤い点が灯っている。


「もう!」


 ヤクモさんがむくれた声を出す。


「追いかけましょう」


 私達は前へと進む。


「あれ? あんなとこに機関銃がある」


 ふとヤクモさんがコンテナの上にある大型の機関銃を見つけた。


「本当ですね」

「拾えるのかな?」

「いやあ、でかいから無理でしょう」

「ちょっと確かめてみる」


 ヤクモさんはコンテナを登り、機関銃を掴む。


「あ、無理だ。掴めても動かせない」

「撃てますか?」

「やってみるね」


 ダダダダダッ!


 機関銃が大音量で銃弾の雨を吐く。


「うっひゃあ! すごい! これは使えますね」

「でも残念。すごいけど持ち運べないや」


 ヤクモさんは機関銃から手を離して、コンテナから降りた。


「なんのためにあるんですかね?」

「エリアボス用かな?」

「やっぱ犬がエリアボスなのでは?」

「ゾンビ犬ってやつ?」

「はい」


 動物がゾンビ化して襲ってくるのはゾンビ映画とかでよくあるパターン。

 カラスがゾンビ化で巨大なトリケラトプスになったりとか。


「でもエリアボスが逃げるかな?」

「確かに」


 エリアボスが逃げる必要はないはず、


「とりあえず、犬を捕まえよう」

「ですね」


 そして私達は犬のいるポイントに向かう──のだが。


「まただ。移動してる」

「追いかけましょう」


 しかし、その後、どんなに追いかけても、あと一歩というところで犬が瞬間移動したかのこどく違うポイントに移動している。


「これ分かったかも!」


 急にヤクモさん大声を出すので私は驚いた。


「なんです?」

「一周してるよ」

「……あ、本当だ。私達一周していたんだ」


 よく周りを見ると先程も通った道だ。


「二手に別れて挟み撃ちにしよう」

「分かりました。私が追いかけますね」

「うん。お願い」


 そして私が進み、犬のいるポイントに向かう。案の定、犬は違うポイントへ移動している。


 私はゾンビをライフルで蹴散らしながら進む。

 よし! このままならいける。挟み撃ちだ!


 そして角を曲がると犬は消えていて、マップで位置を確認するとヤクモさんのいるポイントに犬は移動していた。


「た、た、大変だよ!」


 ヤクモさんが悲鳴交じりの声を上げる。


「どうしたんですか?」

「犬が──」

「ゾンビになってました?」

「ゾ、ゾンビなんだけど、ちょっと……違う」

「どう違うんですか?」

「ケルベロス」

「は?」

「ケルベロスだよー!」


 私は急いで角を曲がり、ヤクモさんとゾンビ犬のいるポイントに向かう。


 そこには──。

 黒い巨大な塊があった。


「な、な、な!?」


 それは3つ首の巨大な犬だった。

 ゾンビ犬じゃない!

 化け物じゃん!


「オルタ、早く助けて」

「あっ、はい」


 私はケルベロスの尻に向け、ライフルで銃撃。

 しかし、全然ダメージを与えられなかった。


「ぎゃあ!」


 ヤクモさんはケルベロスの前足で吹き飛ばされる。


「ヤクモ! クソッ!」


 どうすれば?

 ケルベロスは強すぎで全然HPが減らない。


 もっと強い武器があれば……って、そうだ!


「ヤクモ、機関銃だよ! あれで倒すんだよ!」

「そ、そうか」

「惹きつけつつ、移動だよ」

「うん!」


  ◯


「ヤクモ、コンテナに乗って!」


 私はケルベロスを攻撃しつつ言う。


「分かった」


 ヤクモさんはコンテナを登り始める。目指すはコンテナ上の機関銃。


「ほら、こっちだよ」


 私は銃撃でケルベロスを惹きつける。


 しかし、1人で惹きつけるのは苦難で。


「ぎゃっ! 吹き飛ばされた。ヤクモ、まだ?」

「あと、ちょっと」


 私はケルベロスの後ろへ移動する。

 ケルベロスは尻尾でも攻撃してくるので、それに注意しないといけない。


「危ない! ほら、こっち! オラオラッ!」


 ライフルでケルベロスの横っ腹を撃つ。


 それにケルベロスは3つの首を振り、苛立ちを表現する。


 よし。いけるぞ。


 ケルベロスに集中していたせいで、周りのゾンビのことを忘れていた。


「やばっ、捕まった。放せ!」


 私はゾンビを振り解いて、撃ち殺す。


「汚い手で触るな!」


 が、その隙に私はケルベロスに噛まれた。


「ぎゃあ!」


 これ、どうやって抜け出すの?


「オルタ、準備オッケーだよ」


 ヤクモさんが機関銃の銃口をこちらに向けている。


「私に構わず撃って!」

「いいの?」

「私は後で蘇生して」

「分かった」


 ダダダダダッ!


 機関銃が吠える。

 そして黄色い光の礫──弾丸の雨がケルベロスと私に降り注ぐ。


  ◯


 機関銃でケルベロス討伐後、私はヤクモさんによって蘇生された。


「ゲートキーは手に入れた?」

「うん。というかゲートキーを持っているのに機関銃で撃ち殺すっておかしくない?」

「本当だね」


 普通ならゲートキーごと壊れてしまう。


 ま、ゲームだから、そういうところは気にしては駄目かな。

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