第18話 ゾンビ・アイランド①

 今日は猫泉ツクモとのペアベックス公式チャンネルでのコラボの日。ゲームはゾンビ・アイランド。


「おはようございます」


 私がエレベーターで配信部屋がある階に降り、休憩スペースに辿り着くと、猫泉ツクモこと朝霧由香さんがいて、私に気づき先に挨拶された。


「おはようございます」


 私も頭を下げて返礼する。


「待ちましたか?」


 休憩スペースで私を待っていたように見えたので聞いてみた。


「いえいえ。それにまだ時間前です」

「そうですか」

「それでは行きましょうか」


 そして私達は前回と同じ様に配信部屋に向かう。


  ◯


 今回の配信部屋は前よりも広い個室だった。


「広いですね」


 前は1〜2人用だったが、ここは3〜4人用の配信部屋だろう。


「すみません。前の部屋は他の方が使用中のようで。他の部屋も使用中やらメンテ中やらで。ここしか取れなかったんです」

「いえいえ、全然構いませんよ。むしろこれくらいの広さがちょうど良いです」


 鼓膜が助かる。

 朝霧さんは悲鳴がすごいからね。


  ◯


「今日はゾンビ・アイランドですけど、やっぱりガンアクションなんですかね」


 配信開始前に私はコロンさんに問う。


「そうですよ。無双系ってやつですよ」

「無双系?」

「わんさか敵が群れてきて、それを一掃するゲームです」

「なるほど。今回はゾンビということですね」

「オルタさんは前にデイ・アフター・パンデミックというゲームをされてましたでしょ。あれと同じと考えてください」

「分かりました」

「あっ、時間ですね。それでは始めますよ。前と同じで敬語はなしで」

「了解です」


 コロンさんはパソコンを操作して、オープニングを再生。


「みんなー、はじめるよー」


 そしてゲームスタート画面へと変わる。


「どうもー、音切コロンでーす」

「赤羽メメ・オルタでーす」

「今日はゾンビ・アイランドをやっていこうと思いまーす」

「おー!」

「ではスタート」


 私達はスタートボタンを押して、ゲームを始める。


 まず操作キャラの作成画面に移った。


 性別を選び、身長、体重の順。次に見た目として髪の色、長さ、そして服装を選ぶ。


 そして作成を押すと自動でキャラが作成される。


 キャラが気に入らなかったら、戻るか作成を押してもう一度作成。


 そして生まれたキャラは短髪の男性だった。


 私はこれでいいやと決定ボタンを押す。


 すると画面はキャラ作成からゲーム画面に移った。

 場所は倉庫。


「あれ? 武器選択画面はないの?」


 もしくは倉庫から武器を選ぶのかなと思いきや、倉庫には何もない。


「このゲームは皆、同じ武器なの」

「へえ。え? ツクモはそのキャラでいいの?」


 ツクモが選んだキャラは金髪バニーガールだった。


「なんかアンバランスが気に入ってね。というかオルタは男性キャラなの?」

「強そうだから」

「このゲームはステータスとかないよ」

「そうなんだ。じゃあ、女性キャラでも良かったんだ。でもバニーガールは噛まれまたらすぐゾンビになりそう」

「大丈夫。噛まれてもゾンビにならないよ。ただ、HPが0になったら死ぬからね。死んだらパートナーが蘇生アイテムを使って復活させるの」


 蘇生アイテム……そんなのがあるのにどうしてゾンビがなんてツッコミはしない。これはゲームなのだから。


「バニーにライフルって強そうじゃない?」

「そう? 映画とかでは、お色気枠って、簡単に死ぬんでしょ?」

「え? そうなの? オルタはゾンビ映画とか観るの?」

「まあ、観るよ。アンブレラシリーズとか全部観たよ」

「すごい。私、怖くて観れないよ。私、ホラー系は駄目」


 なら、なんでホラゲー配信してんだよというツッコミは飲み込む。


「そう? ゾンビは幽霊と違って歩く死体だから平気じゃない?」


 魂である幽霊や怨念とは違い、魂のないゾンビは正反対だから怖くないような。


「グロい。無理」

「あー、そっちかー」


 グロいからゾンビは嫌いって子が多いよね。


「さて始めましょうか」


 そして私達は倉庫を出る。

 外は夜明け前の空で群青色。


「どこに向かうの?」

「左上のマップを開くと矢印があるから」


 画面左上のマップにカーソルを合わせて決定ボタンを押す。


「えーと、こっちの方角ね」


 さらに全体マップで目的地を確認する。


 全体マップは島まるごとで私達のいる地点、目的地そして進行方向を指す矢印が。


 目的地は港の桟橋だった。

 どうやら脱出がメインなのかな?


「行くよー!」


 ツクモさんが操るバニーガールが走り始めた。


「あ、待って」


 しかし、ツクモさんがどんどん進み、見えなくなってしまった──と思いきや、すぐに戻ってきた。


「た、大変、ゾンビ! ゾンビ!」

「あわわっ、撃ってー!」


 私は男性キャラを操り、マシンガンでゾンビを一掃し始める。


「ツクモも手伝って!」

「う、うん」


 落ち着いたツクモさんもマシンガンでゾンビバラバラにしていく。


「うえっ、ミンチじゃん、嫌あ」


 ツクモさんがバラバラのゾンビをミンチと表現する。確かに腹を狙うと細長い腸が飛び出る。


(エグい)


 大丈夫かなと隣に座るツクモさんを見ると、ツクモさんは目を薄めて画面を見ていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る