第49話 観客視点【瀬戸真里亞】
ライブで赤羽メメ・オルタの出番がきた時、私は緊張し、そして祈った。
どうか上手くいけますようにと。
自己紹介の時、オルタはやはり緊張していたのかいつもとは本調子ではなかった。
腹しか肥えてない豚どもは気づいてなかったようだが、緊張は歌にも影響が出ていた。
サビの部分でなんとか持ち前の歌唱力に戻り、観客をざわつかせた。
結果としては問題なかった。
そしてオルタが歌い終わり、私は胸を撫で下ろし、安堵の息を吐いた。
だが、問題は……いや、事故が起こった。
地震が発生したのだ。ライブも終わり間近。0期生が歌い終わり、MC中の時だ。
大きな地震が発生し、会場は悲鳴やどよめきが走った。
さすがに地震は誰も予期せぬこと。
そしてその地震は大きいとは言えど体感では震度4くらいだろ。会場が倒壊するようなものではなかった。すぐに会場のざわつきも収まった。
でも、その後で事故が発生した。その事故は地震によって生まれたもの。
明日空ルナから悲鳴と助けを求める声が発せられたのだ。
その時、スクリーン上のルナは何事もない様子だった。
けれど声だけは悲鳴と助けを求めて続けていた。
どういうことだ。スクリーン上の明日空ルナは何事もないのに、声は助けを求めている。
観客は混乱し、どよめいていた。
そんな時、オルタが明日空ルナを救出及びある単語が発せられ、それがライブ会場に届いてしまった。
そのある単語は『車椅子』
現状及び車椅子という単語から『明日空ルナが車椅子の障がい者でダンスは別人だった』という事実が発覚した。
その後、ライブは余震の可能性を考慮して急遽中止。そして観客にはスタッフによる避難誘導がなされた。
避難される観客の中にはオルタとルナを心配する声とルナを非難する声が混じっていた。そしてその非難の声は呼応するかのように広がっていく。
「これは大炎上待ったなしやな」
誰かが言った。
まあ、きっとそうだろう。炎上するだろう。
(でも、わざわざそれを口にするな!)
唯一の救いはオルタがルナの本名を言わなかったことだろう。
ライブ後、家に帰り、ネットニュースを見ると明日空ルナのことが書かれていた。
さらにネット掲示板を見ると明日空ルナのスレッドは目下大炎上中。
赤羽メメのスレッドは炎上はしていなかったが、どこか飛び火が降りかかっているようである。
541:名無しのリスナー
「オルタ、歌上手いやん」
542:名無しのリスナー
「痺れた。oda様がいた」
543:名無しのリスナー
「>>542 まじそれな。中性的とサビに少しがなり声があってodaに似ていた」
544:名無しのリスナー
「裏切られた」
545:名無しのリスナー
「ルナの車椅子は衝撃」
546:名無しのリスナー
「>>544 オルタは裏切ってない」
547:名無しのリスナー
「>>544 人命救助したオルタに石を投げるな」
548:名無しのリスナー
「歌枠やってくれるかな? 五浦でなくodaの曲を歌ってほしい」
549:名無しのリスナー
「>>544 ルナのスレはここじゃないぞ」
550:名無しのリスナー
「Vtuberは声だけでダンスもやってるわけないだろ」
551:名無しのリスナー
「>>550 それじゃあ、なんでオルタの歌はメメが踊ってることになってるんだ? ダンス役がいるなら一芝居する必要ないだろ? オルタが踊ってることにすればいいじゃんか」
552:名無しのリスナー
「>>551 釣られるなよ」
553:名無しのリスナー
「>>544 ねえねえ、ライブで何かあったの? 裏切りってなあに?」
554:名無しのリスナー
「ルナのスレッドに行け! 知りたいこと書いてるから」
555:名無しのリスナー
「>>554 で、オルタは何かしたのか?」
556:名無しのリスナー
「>>554 悪いことはしてない。むしろ人命救助して褒められるべき」
557:名無しのリスナー
「ここはメメのスレだから、Vアンチやルナ関連はどっか行け」
558:名無しのリスナー
「あと誰かメメのダンスも褒めてやれよ。すごかったんたぞ」
559:名無しのリスナー
「だから別人だって。皆、声を当ててるんだって」
560:名無しのリスナー
「>>559 じゃあ、あの息切れはなんや? メメ、めっちゃ疲れとったぞ」
561:名無しのリスナー
「>>559 メメはちゃんと踊ってる。踊ってないのはルナだ」
562:名無しのリスナー
「>>561 は? なんでお前がわかるんだ? 直接見たのか? 現実見ろよ。Vtuberは声役とダンス役で別れているんだよ」
563:名無しのリスナー
「>>562 お前こそなんでわかるんだよ。関係者か?」
564:名無しのリスナー
「いい加減にしろよ。そういうのは
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