第42話 ゴースティング
今日は星空みはり先輩とコラボ配信。ゲームは以前やったアスレチックゲーム『FOC』。
前に2人共、王冠を
『オルタちゃんは準備はいいかな?』
「はい。いいですよ」
『フライングは駄目だよ……っと、あっ! 落ちた! 押すなよ!』
「……先輩、フライングしてますよね?」
『え!? してないよ』
「プレイ中のBGM流れてますよ」
『……』
コメントを見ると『始まってる』、『フライングしとるがな』、『こっちも早く始めなきゃあ!』、『オルタ気づけ!』
「……はいはーい。始めまーす」
私はコントローラのスタートボタンを押す。
マッチングが始まり、プレイヤーが集まるとステージが自動選択される。
『それじゃあ、ステージクリアか王冠を獲った以外はミュートでね』
「はーい」
◯
このゲームはファンシー人形のようなアバターとカラフルなアスレチック画面なので見た目てきには子供向けなのだが、これがなかなか難しくてファーストステージをクリアするのも大変。
難易度が高ければ、普通はクソゲー扱いなのだが、このゲームはあと少しというギリギリのラインを上手く攻めているので、例え難しくてもやり込むプレイヤーが多いのだ。
さらにこのゲームは他のプレイヤーを邪魔するという醍醐味もある。
その名も【お邪魔ん棒】。ステージの外からボールを投げてきたりする。
けど中には【お邪魔ん棒】でもないのにプレイヤーを邪魔する悪質なプレイヤーも稀にいる。
そう。この前の先輩のような。
「……なんか悪質なプレイヤー多くない?」
先程から私を掴んできたり、進路妨害するプレイヤーがいる。
「ちょっ! また!」
私が向こう側に飛ぼうとした時、悪質なプレイヤーに掴まれてしまい穴へと落ちてしまった。
そしてスタート地点からのリスタート。
「くうぅ! なんでよ!」
いつもならとっくに中間地点まで進めているのだけど今日は全く前へ進めない。
しかもなんか【お邪魔ん棒】も私にだけ攻撃してくるような。
『オルタちゃん、どう? 進めてる?』
悶々していたら星空みはりさんから連絡がきた。
「全然です。先輩はどこまで行ったんですか?」
連絡がくるということはファーストステージクリアしたということだろう。
『ファーストステージ』
「ええ! それならなぜ連絡を?」
『ゴースティング多くない?』
「ゴースティング?」
聞いたことない単語に私は鸚鵡返しをした。
『ゴースティング。配信を見て、こっちの邪魔する人』
「それってつまり……私達の配信を見て、『FOC』をプレイして嫌がらせをしてるってことですか?」
『そう。配信しているとこういうのは多々あるんだけど、今回は数が多いわー』
「こういう時はどうすれば? ステージリタイアしてもう一度マッチングですか?」
『うーん。一応もう一度マッチングしてみよう。それでも、もしゴースティングが多かったら辞めよう。その後は代わりに雑談でもしよう』
「分かりました」
◯
あの後、私達はリタイアをして、もう一度マッチング。けどファーストステージを始めるも、そこでもまたゴースティングをする悪質なプレイヤーが私達の邪魔をした。
結局、私達は『FOC』を辞めて雑談をするということになった。
『いやあ、近年稀にみるゴースティングの数だったよ』
「いつもああいう人達に邪魔されるんですか?」
正直言って、ゴースティングプレイヤーはかなり鬱陶しかった。
『まあ人気配信者の宿命ってやつかな。でも今回は多すぎだね。いつもはスナイプとかを合わせても今日の半分以下なんだけど』
「スナイプ?」
また新しい単語だ。
『スナイプはね、邪魔はしないけど追っかけてくる人……あっ、違うかな? スナイプも粘質な嫌がせをするんだったかな? ごめん。説明に自信ないや。まあ、悪質なプレイヤーには注意ね』
「はい。気をつけます」
『ま、人気配信者の宿命ってことね』
それは良く言えばゴースティングやスナイプされるってことは注目されているってことか。有名税ってやつ?
でも、妨害されるのは嫌だな。
ゲームは楽しんでやりたいし、
「でもなんでそういうことをするんですかね? メリットがあるようには思いませんけど」
『そりゃあ、私達アイドルと関わりたいって人がいるのよ。それで接触してくるの。まあ、中にはアンチ系がいるよね』
「アンチ」
『嫌ってるから邪魔をしてくるの』
そう言って先輩は溜め息を吐く。
嫌ってるから邪魔をする。
それは怖いな。
「えーと。それで先輩、雑談って何を? 私は雑談系ってあまり経験ないんですけど」
私は話題を変えるために質問した。しかし、『雑談何話す?』って、人としておかしいような気もする。いや、おかしいや。人に会って『何話す?』って言わないもんね。
『そうだな〜。最近面白いことなかった?』
「う〜ん。あっ! そういえば富士フェスに行きましたよ。先輩、シークレットゲストで出演してましたよね」
『あー、うん、まあね』
先輩はどこか歯切れ悪くて答える。
「途中地震があって、びっくりしましたよね」
『……うん。あったね』
「その時、めっちゃ悲鳴を上げてましたね」
『やめて。恥ずかしい』
あれは相当恥ずかしいことだったのか。星空みはり先輩の反応がなんか初々しい。
『そんなことより、もっと他のことなかった? そ、そう! 確か今度のペイベックスVtuberライブにオルタちゃんも出演するんだよね?』
先輩がそう言うとコメント欄には多数のコメントが高速で流れた。
「はい。少しだけ出演することになりました」
『初ライブだよね。どう? 緊張してる?』
「人前なら緊張しますけどね」
『
「はい。ぜひ当日お楽しみに」
と私が発言するとまたコメントがたくさん流れた。中には赤スパも含まれていた。
期待してくれている人がこんなにもいるとなると頑張らなくてはと思う。
『楽しみにしてるよ』
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