第15話 ビーチ

「大丈夫ですか?」

『うん。生きてる』


 海を泳ぎ、崖下に辿り着いた私はすぐにリリィさんと合流した。


「アメさんは?」

『どこだろ? ちょっと離れたとこに飛ばされたかな?』

『ここだよ』


 ボロボロのオオカミキャラが現れた。

 誰と思ったけどすぐにアメージャさんが操るキャラだと私は気づいた。

 それだけオオカミキャラがボロボロだったのだ。


「あ、アメさん、無事でしたか?」

『この姿を見て無事と思う?』

「……」

『ま、生きてるだけましじゃん。皆、バラバラに崖から落ちた時はどうなるかと思ったよ。しかし、すんごいボロボロ』


 リリィさんはボロボロのオオカミキャラを見て笑った。


  ◯


 数分前。


 私達はSWATから逃げ切るため、まず岩山のトンネルを使って、ヘリをまき、トンネル内で車を降り、走行中の車を襲って車を強奪。そして逃げた。


 SWATの装甲車も追いかけてこないから、振り切ったと安堵した。


 けど、残念なことに再度ヘリが襲ってきたのだ。


『バレたの? なんで?』

『とにかく逃げないと!』


 私達は崖なのか山なのか分からない海抜の高いとこにある道を車でぐるぐると走っていた。


 ヘリは容赦なく銃弾の雨を降らしてきます。


『オルタ、崖にダイブだ!』


 リリィさんがめちゃくちゃなことを言ってきた。


「ダ、ダイブ!?」

『そうだよ。崖から落ちて海面にぶつかる前に車から降りるんだ』

「降りるんだって、死にますよ」

『大丈夫。ゲームでは海に落ちる程度だから死にはしない。逆に車に乗ったままだと事故死になるから』

「ええ!?」

『オルタ、やるしかないよ』


 アメージャさんまで崖から落ちることを勧める。


「うぅ、分かりました。やります」


  ◯


 そして私達は車で崖から落下し、海面にぶつかる前に車から飛び降りた。


 しかし、車から飛び降りるタイミングがバラバラなため私達は離ればなれになってしまった。


 その後、海に落ちた私はなんとか海を泳いで崖下に辿り着いたというわけである。


『私はタイミングが早すぎたため崖を転がったよ』


 なるほどそれでアメージャさんはボロボロなのか。


『アハッ、ハハハッ!』


 リリィさんはそれを聞いておかしそうに笑った。


『リリィ、笑いすぎ』

『ご、ごめん。でも、脱出が早すぎて酷い目に遭うなんて、おかしすぎ」

「とりあえずヘリは撒けたようですね」

『そうだね。ビーチに行ってみようか。リリィ、いつまで笑ってるの?』


 まだ笑っているリリィさんにアメージャさんは鬱陶うっとうしそうに聞く。


『うん。行こう』


 それでもリリィさんはしばらくの間、引き笑いをしていた。


  ◯


 ビーチで女の人に出会ったのだが。


「……なんで裸?」


 そう。素っ裸。股間はモザイクがかかっている。


『ここはヌーディストビーチだね』


 リリィさんが素っ裸の女性をガン見して答える。


「リリィさん、近いですよ」


 たぶん今頃、リリィさんの画面では素っ裸の女性がアップで映っていることだろう。


『そうだよ。このままでは垢バンされるよ』

『大丈夫。隠してるから』


 そう言ってリリィさん操る白キツネは女性の周りをぐるぐると動き回る。


『馬鹿なことしてないで行くよ』

『はいよー』


 そして私達はビーチを歩き進めていると──。


「何あれ? モザイクの塊なんですけど?」

 大きな岩ほどのモザイクの塊を発見しました。


「なんだろう? 座礁したイルカの死体とか?」

『オルタ、知ってる? メガネを外すとモザイクが柔らかくなるんだよ』


 リリィさんがなぜか笑いながら言う。


「へ? なんですかそれ? いきなりなんですか?」

『アハハ、近づいたら分かるよ。大丈夫。グロいものではないから』


 言われた通り、モザイクの塊に近づくと何かが聞こえてきます。


「──!?」

『アハハハッ。分かった?』


 私はモザイクの塊から離れて、


「え!? ええっ!? これって──」

『オルタ、言葉にしてはいけないよ!』


 アメージャさんが止めに入ってくれた。


「はい」

『男女が夏のアバンチュールにやられちゃったんだろうね』

『あっ! 岩陰に男がいるよ。おいおい出歯亀かい?』


 リリィさんが岩陰に身を隠してモザイクの塊を盗み見している男を見つけ、面白おかしそうに近づく。


『おいおい、何を……おっ! オルタこっちこっち、こいつ面白いことしてるよ』

「? 何かしてるんですか?」

『ナニしてると思う?』


 私は岩に近づき、男を見──。


「ひやぁぁぁ! ナ、ナ、ナニ? 何してるの?」


 男はモザイクの塊を見つつ、右手をモザイクのかかった自身の股間に──。


『アハハッ』

「もう! リリィさん!」

『ごめんごめん』


 そしてリリィさんは拳銃を取り出し、男を殺した。


「リリィさん! 何やってんですか?」

『無駄撃ちする前に無駄撃ちをしてしまったぜ』

「何言ってるんですか!」

『とりあえずこっちは変態リア充も殺しておこうか』


 アメージャさんがモザイクの塊に向けて銃弾をぶっ放す。


「それはひどくないですか? そのカップルは何も悪いことしてませんよ」

『いや、これは公然猥褻罪だよ。死刑だよ』


 そしてモザイクが大部分消えて人が現れる。


「あれ? 両方とも女の人だ」


 やらしいことしていたのは男女ではなくレズカップルだった。


『なんだ貝──』

『リリィ!』

『ごめーん。でも女性しか声がなかったのはそういうわけか』


【指令:全員で100万ドル稼げ!】


「ええ!? ここで指令がきましたよ」

『本当だ! よし、稼ぐよ!』


 リリィさんがライフルを発砲しながらビーチを駆け、一般人を見つけては殺しまくる。


『駄目だ。こいつら金を持ってねえ!』

「皆、素っ裸ですからね」

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