第12話 ケモ耳シスターズ

『こんばんコーン! ペイベックスVtuber2期生の白狼閣はくろうかくリリィだよー』


 白髪のケモ耳少女が最初に可愛いらしく挨拶する。


『同じく2期生の赤焔しゃくえんアメージャです』


 続いて赤髪のケモ耳少女が挨拶。


「どうも赤羽メメ・オルタです」


 そして最後に私が。


(そういえば私って何期生にあたるのかな? メメと同じ5期生になるのかな?)


『……ん? オルタ? アメっちよ、オルタと聞こえたぞ?』

『うん。聞こえた。え? オルタなの?』


 お二人とも知らぬふりをしていますが、前もって私がメメに代わってコラボする旨を伝えている。


「ええとメメが夏休みの宿題で再提出するように言われて、ちょっと配信できそうにないので代わりに私がコラボを受けることになりました」

『再提出?』

『何かしたの?』

「数学で分からないところがあったんです。それで白紙にしては、宿題をしてないことになるので、分かるとこまで書いて、あとは適当に答えを出したんです」

『なるほどねー。それが教師に目に留まり、出鱈目に宿題をやったなって、ケチつけられたんだね。分かるわー』


 リリィさんがうんうんと頷く。


「はい。メメは数学が苦手で」


 本当は真っ赤な嘘である。しかし、読書感想文の件を話すと身バレの可能性があるので嘘をついたのだ。


『それじゃあゲームを始めようか』


 アメージャさんがゲーム開始を宣言する。


『おー!』

「あ、あのどのようなゲームなんですか?」


 ゲームを始める前に聞いておきたかった。


『メメちゃんから聞いてない?』

「はい。コラボをすることは聞かされているんですけど、なんのゲームかは聞いてないんです」

『アニマル・アベンジャーズというゲームだよ』

「アクションゲームですか?」

『うん。バチィクソのアクションゲームだよ。カワイイ熊を使って人間社会を暴れ回るんだよー』


 へえー……ん?


「人間社会を暴れ回る?」

『そうだよー。猟師に子熊を撃ち殺された母熊とその仲間の動物達がブチ切れて人間社会で暴れ回るっていうストーリー。一応は』

「なんか重いストーリーですね。というか一応?」

『ストーリーモードではね。今回はミッションモードだから』

「どんなミッションなんですか?」

『今はなんとも言えない。街に入ると指令が来るから。それの通りに動くの』

「なるほど」

『とりあえずスタートしてみよう。まずはキャラ選択画面だね』


 スタートを押すとキャラ選択画面に移った。


 キャラはモフモフとした3頭身ぬいぐるみのようなカワイイアニマル。


 様々な種族がある。ライオン、ゾウ、サイ、チーター、はてにはワニまでたくさんの種類がある。

 さらにそこから色や大きさまである。


『私はキツネだよーん』

『私はオオカミ』

「え? リリィさんって、オオカミですよね?」

『うん。でも、今日はキツネ』

『私はリリィがキツネなのでオオカミに』

『オルタは?』

「私は……うーんと、クマでいきます」


 そして色は薄茶色を選択。


『キャラを選択したら次は武器選択画面に移動してね』

「武器?」

『そりゃあ、街で大暴れすんだから武器が必要だよ』


 武器選択画面に移動すると、拳銃、ライフル銃、ボーガン、ドス、バット、ロケットランチャーがある。


『おすすめはライフル銃だよ』

『ちなみに市内でも色んな武器が手に入るから深く考える必要はないから』

「はい」


 一応リリィさんがおすすめしてくれたライフル銃を私は選んだ。


『武器を選び終えたらゲームスタートのボタンを押してね』


 そして私はゲームスタートを押すと、画面は荒野の市外の道路に変わる。道路には3体のアニマルキャラが集っている。


 リリィの白キツネ、アメージャの赤オオカミ、そして私の薄茶色のクマをいれて3体。全員可愛いのだが、持ってるものが銃火器なのだからそのアンバランスが際立つ。


「あれ? ここは日本?」


 私達がいる荒野はまるでアメリカの荒野みたいなところだった。


『アメリカだよ。銃火器持ってんだから日本なわけないじゃなーい』


 銃火器=アメリカというのもどうかと思うけど。それに3頭身でかつ歩く動物なんていない。


「そうですね。で、これから市内に向けて移動ですか?」

『そうだよー。復讐だー!』


 リリィさんが操る白キツネが空に向け、銃弾を連射する。


『まずは足を見つけないとね』

「足? アメージャさん、それはどういうことですか?」

『アメでいいよ』

「あっ、はい」

『つまりここからでは街まではちょっと遠いから車を見つけるの』

「見つける?」

『おっ! 話をしてるとちょうど良い車がやってきたよ』


 リリィさんは青の車に体当たりして、車を停めさせる。

 そして運転席から人間を無理やり引きずり出して殴り殺す。


『うぉらぁ!』

「えっ!? ええ!?」

『こうやって車を手に入れるの。えっへん』

「いやいや、可愛く言ってもやってること、やばいですからね。なんですかそれ?」

『これはそういうゲームなの』

「ええ!?」

『で、その車で行くの?』

『アメは嫌だった?』

『私はオープンカーがいいな』

『それだとすぐに人間達にバレるよ。強盗の時だって、戦利品が落ちちゃうよ』

『それもそうか』


 なんかすごい物騒な話をしてますよ。


『さ、皆、乗って。運転は私がやるよ』


 と言ってリリィさんは運転席に乗る。


 そして助手席にアメージャさん、後部座席に私が車に乗る。


『レッツゴー!』


 リリィさんは車を運転するのだけど──。


『邪魔だ! うぉらぁ!』


 対向車にどんどんぶつかっていく。


『何でこいつら、突撃してくるんだろ?』

「リリィさん、ここアメリカです。右側通行です」

『私は今、日本にいるんだー!』


 そう言ってリリィさんは次々と車にぶつかっていく。


 そして──。


『やっべ、車壊れたわ。動かないや』

『お前、暴走しすぎ。仕方ない。新しい車を探すか』


 私達は車を降り、車道を走る車を物色する。


『向こうから白いのが来る。あれ、いいんじゃない? オルタ、体当たりだ』


 リリィさんが私に命じる。


「私が?」

『だってクマだし。パワーあるでしょ?』

「分かりました」


 仕方ないので私は走ってくる白い車に向かって体当たりしようとした。が、ぶつかる前に車が停まった。


(あれ?)


 そして白い車はUターンしようと曲がり始める。


『こいつ逃げようとしている! オルタ、捕まえて』

「あっ、はい」


 私はすぐに車を逃がさないよう掴む。


『よし! 今だ! アメージャ、運転手を引っ張り出せ!』

『オッケー』


 アメージャが操るオオカミが運転席から人間を引っ張り出して拳銃で撃ち殺す。


「あの、殺す必要あります?」

『オルタ、こういうのはノリなんだよ』


 そしてアメージャさんは助手席に乗り込む。


「……ノリですか」


 リリィさんが運転席に乗り込み、


『よし、行くぞ!』

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