第13話 クレイジー
『イィー、ヤッハー!』
リリィさんが強奪した白い車で歩道を歩く人間にぶつかったり、跳ねたり、引いたりするので車体がどんどん血の色になっていく。
『どけどけどけー! リリィ様のお通りでい!』
江戸っ子口調でリリィさんが車を運転する。
「……リリィさん、どうして歩道を進むんですか?」
『こっちの方が
(悪魔か)
『大変。ポリ公が来たよ』
サイレンを鳴らしながらパトカーが近づいてきた。
『クソッ、気づかれたか』
「どうするんです?」
『殺すのみよ!』
リリィさん操る白キツネが車を停めて外に出る。そしてライフルでパトカーを狙う。
『私達も行くよ!』
「はい」
アメージャさんと私も外に出て、パトカーを攻撃する。
パトカーも停まり、警察官が出てきて拳銃で反撃をしてくる。
互いに車体を盾にして撃ち合う。
◯
『シャアァ! 皆殺しにしたぜい!』
『でも、車も使えなくなったわ。パトカーもダメね』
『アメがロケランで吹き飛ばすからだよ』
『仕方ないでしょ?』
「また車を探します?」
『いや、またサイレンの音が聞こえてきた。これは増援だね』
『なら走って逃げるしかないね。その前に武器を手に入れよう』
リリィさんは警察官の死体を調べ始める。
『よし。拳銃ゲット』
「こうやって新たに武器を手に入れるんですね」
『そうだよ。どんどん殺して、どんどん武器を手に入れよう』
「……」
言ってることが物騒だ。
『ほらリリィ、早く回収して』
『ごめん。これが最後だから。……よし。行こう』
私達はパトカーが来る前に路地裏を走って逃げる。
時折、人に遭遇すると殺して金や銃を奪った。さすが銃社会の国。一般市民でも拳銃を所持してやがる。しかも路地裏のヤンキーは爆弾まで持ってる。物騒過ぎだろ。
だけどその中で私が驚いたのは、薬の売人を殺すと覚醒剤が手に入ることだった。そしてそれらはディスカウントショプで高値で売れた。
「なんで危ない薬が売れるの?」
『そりゃあゲームだからじゃん。変に気にしちゃあいけないよ』
「しかも高額」
『グラムで万単位だからね。さて、軍資金も貯まったし、武器を買いに行こう』
「武器を?」
『ここは銃社会だよ。銃やら爆弾やら、ロケットランチャーも売ってるんだから』
「ロケットランチャーは言い過ぎですよ」
けれどガンショップでロケットランチャーが売っていた。
「こんなのまで売ってるんだ」
『で、リリィ、どうする? 武器もいっぱい手に入れたことだし、銀行強盗でもする?』
「なに喫茶店でお茶する感覚でぶっそうな話をするんですか!」
『違うよ。オルタ、勘違いしないで。銀行強盗とか消防署に放火とかするのは指令を発生させるためなの』
「ええ!? なんですかその発生条件は!?」
『これはそういうゲームだからね』
(そういうゲームって……みはりさんといい、Vの先輩が紹介するゲームはどうしてこうも奇抜のが多いの?)
『よし! 消防署に襲撃だ!』
リリィさんが意気揚々と進み始める。
◯
そして私達は消防署を襲撃。火炎瓶で消防署を燃やす。
『おらおらおらぁ! 消すのは得意だろ! 早く消せよ! 消防隊員さんよぉ!』
リリィさんが暴言を吐き散らしながら火炎瓶を投げる。そして外から現れた消防隊員を撃ち殺す。
(ひでえ)
『おっ! 指令だ!』
【指令:市警を攻撃しろ】
画面下部に指令が表示される。
「市警って……日本でいう警察署でしたっけ?」
『そうそう』
「なんかもう私達って犯罪者側ですね」
銃刀法違反、道路交通法違反、暴行、殺人、強盗、放火その他エトセトラ。
『仕方ないよ。私達はアベンジャーズだからね』
「……avengeって、正義の報復ですよね?」
ちなみにただ報復や復讐はrevengeである。
『正義はなくても大義はある!』
『勝てば正義!』
「めちゃくちゃだー!」
『よし! 市警に向かうぞ。その前に足が必要……っと、あるんじゃん。いいのが』
「どれです」
『あれ?』
リリィさんが操る白キツネが指差す方に消防車がある。
『あれで行こう!』
『いいね』
『次はオルタが運転して』
「あっ、はい」
私は運転席に乗り込み、消防車を運転する。
「市警はどこですか?」
『マップで青い三角マークが付いてるのが私達で、丸い赤が目標の市警だよ』
左上にマップがあり、マップを選択すると大画面になる。
「ここって海沿いの街なんですね」
荒野からスタートだったので盆地かと思っていた。
『あとでビーチにも寄ってみようか』
◯
「ああ! 道間違えた。対向車線側だ」
坂道を
『オルタ、運転下手すぎ。やばいよ』
「だって、坂の途中に十字路なんて、
しかもその十字路、曲がった先の車線が6車線だったのだ。
見えにくい上に右側通行で日本とは逆。
『でも、それ分かるわ』
とアメージャさんが相槌を打ってきた。
『アメも前にあったからね』
『……旅行に行った時ね。ビーチに向かう時にビーチ側と丘の上の2つの駐車場があったの。ビーチ側は有料で丘の上が無料だったのよ』
「無料と有料に別れているんですか?」
『そう。で、無料の丘の上に行った後、やっぱ下の駐車場の方が帰りが楽だからって、アメが坂を
『で、その時にさっきと同じ様な十字路があって、間違えて対向車線に入ったのよ』
アメージャさんが不機嫌そうに言う。
「今の様にですか?」
『ええ』
『その後、すぐに警察が来たんだよ』
リリィさんが続きを言う。
『すぐというか、十字路に交番があったの』
アメージャさんが忌々しく言う。
「事故が多いからですかね?」
『事故が多いなら道路整備をちゃんとしろって話よ。あんなの初見殺しよ』
『あの時は大変だったね』
リリィさんは苦笑する。
『さ、そんな話はさておき、早く行きましょ』
「はい」
『無駄話してたらパトカーが来たよ! これはリリィのせいだね』
『ええ!?』
2台のパトカーがやって来て、私達の道を塞ぐ。
「どうしましょう?」
『跳ねちゃえ! 消防車ならでかいからいけるよ!』
私は消防車でパトカーとパトカーの間を狙う。そしてリリィさんの言うとおり、消防車はパトカーと警官を吹き飛ばす。
『いいぞー!』
◯
『止まるな! このまま突っ込めー!』
リリィさんがスピードを落とさず、市警ビルへ突っ込むよう私に命じる。
「ええっ!?」
『どうせ襲撃するんだかれ細かいことはきにしては駄目だよ』
とアメージャさんが言う。
「分かりました。このまま突っ込みます!」
私は消防車を停めずにまっすぐ市警ビルの玄関に突っ込む。
『イィー、ヤッハー!』
消防車は市警ビルへ突っ込み、玄関扉を跳ね除けて、窓口や警察官、一般人を吹き飛ばす。
『行くぞ!』
私達は消防車から降りて、リリィさんを先頭に襲撃を開始した。
『おらおら! 死ねやゴラァ!』
リリィさんがライフルを連射して警察官達を撃ち殺す。
『金目の物はどこだ!』
「アメさん、銀行じゃないんだから。金目の物なんてありませんよ」
『いや! 売人から押収した薬があるはず!』
警察官も銃を持って私達へ反撃を始めた。
だが、私達の方がやばい武器をたくさん所持しているので反撃をする警察官をことごとくなぎ倒していく。
『手榴弾くらえ!』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます