第8話 学校七不思議探検隊②

「それじゃあ、スタート!」


 ツクモの合図と共に私はゲーム画面のスタートを選択して決定ボタンを押す。


 するとキャラクター選択画面に移った。


 どれも3頭身のキャラで子供から大人までたくさんのキャラクターがあった。


「ツクモはどのキャラクターにする?」

「私は無難に女の子を選ぶ。この子だね」


 ちらりとツクモのスクリーンを伺いキャラを見る。ピンクの服を着た茶髪の女の子。


「なら、私は男の子を選ぼうかな」


 私は青のTシャツに黄色のズボンの黒髪男の子を選択する。


「青髭のオカマとかいるよ」

「ええ!? 何それ!? うわっ、本当にいる」


 落武者ヘアーのケツアゴと青髭オカマがいた。服装はお姫様ドレス。


「もうこいつが怪異じゃん。こいつが夜の学校にいたら即通報だよ」

「私、これにしようかな?」

「ええっ!?」


 なぜこれを?

 もしかして撮れ高狙い?


 確かにこれなら話題にもなりそうだ。


「このオカマ、ステータスが良いね」

「ステータス?」

「ほら、ステータス画面があるでしょ?」


 キャラクターに選択枠を当てると、キャラ名とステータスが表示される。


 なるほど。撮れ高狙いというわけではないのか。


「名前は太郎子ちゃんだって」


 なんて安直なネーミング。


「ステータスはパワーと器用が強いね。代わりにスタミナが低いや」

「本当にそれを選ぶの?」

「強いしね。ホラーって、やっぱり強くないと」

「……そうなのかな?」


 私はキャラクターは変えずに男の子でいく。

 男の子の名前は健太。ステータスはスピードとスタミナがそこそこ高く、他は普通。デメリットがないぶん使いやすいキャラクターだ。


「ステータスがあるってことは戦闘があるの?」

「ないよ。このゲームは怪異がありそうなところに行くとイベントミッションが発生するの。イベントミッションはミニゲームみたいなものなんだって。ステータスはミニゲームに多少影響するとか」

「ミニゲームか」

「ミッションクリア後は写真を撮って終了」

「なるほど。七不思議ってことは全部で7つってことだよね?」

「うん」


 そして私達はキャラクターを選択して画面は学校の校門前に変わった。


「始まったようだね」

「そのようだけど。門が閉まってるね」

「押して開けるのかな? やってみよう。ほら、オルタも手伝って」

「うん」


 私達はキャラを操作して校門を押してみるがうんともしない。


「駄目だ。びくともしない」

「これ登るのかな?」

「そうか!」


 どう登るのか分からないけど、とりあえず校門に近づいてジャンプをする。

 するとキャラが校門をよじ登り始めた。


「いけるんじゃない?」

「登れそう」

「うわっ! パンツ見えてる!」


 よじ登ったさい、尻をこちらに向けているのでオカマのドレススカートの中身が露わになる。


「うわっ! ピンクだ!」

「製作者の意図がわからない」

「そう? このゲームへの愛だよ」

「こんな愛情表現は嫌だ」


 校門をよじ登った後、校門から校舎までの道にある桜の前でツクモは立ち止まった。


「どうしたの?」

「よくさ、桜の下には死体が埋まってるって聞くじゃない?」

「それは小説じゃない? なんかそんなタイトルの小説があったような?」

「ここからゾンビが出てきたりしないかな?」

「そんな七不思議は聞いたことないよ」

「イベントミッションも発生しないし、七不思議ではないのかな?」


 ツクモ操るオカマの太郎子は桜の周りをうろうろする。


「やはり何も起こらないね。次、行こう」


 そして私達は校舎前に辿り着いた。


「ねえねえ、あそこピロティの向こうにグラウンドがあるけど、そっち行く?」

「あー。先にグラウンド回りましょうか」

「よし行こう!」


 ピロティエリアを抜けて、グラウンドに向かいました。


「広いねー」

「小学校ですからね」

「なんで小学校は広いの?」

「それは遊具とかあるからでは?」


 グラウンドの隅に沿って遊具が並んでいる。


 一輪車置き場、鉄棒、登り棒、ブランコ、シーソー、滑り台、ジャングルジム、ミニアスレチックエリア、東屋、ボール置き場、バスケットゴール、サッカーゴール。


 そういうのを見ると懐かしさが込み上がってくる。


「童心が甦りそう」


 ツクモさんも同じ事を考えているのだろう。


「あっ、左の方を見て、二宮にのみや金次郎像だよ」


 ツクモさんが校舎左側には花壇があり、その前に二宮金次郎像があった。


「あれは七不思議発生ですよ」


 二宮金次郎像と言えば七不思議の定番。

 確か夜中に勝手に動くという話だったはず。


「イベカク、イベカク!」


 ツクモさんが喜びながら、二宮金次郎像に近づく。


 そして──。


 近づいたツクモさんに金次郎像は目を赤く光らせて鬼の形相で襲いかかってきたのだ。


「ぎぃやあぁぁぁ!」

「のわっ!」


 鼓膜を叩かれたかのような悲鳴が隣から発せられ、反射で私はすくんだ。


「どうしよ! 画面が!」


 画面が真っ暗になってツクモは驚いたが、すぐに画面がグラウンドへと切り替わる。


(あれ? 花壇の近くにいたのに? グラウンドにいる。しかも金次郎像と一緒に)


 画面に中央にミッションと書かれた太文字が現れた。


 そしてミッション内容が表示される。


「なになに、金次郎像よりに先にグラウンド一周せよだって」


 コントローラーのRボタンとLボタンを交互に押すと走り、カーブ時はLボタンを1回、Rボタンを2回。


「なんでカーブの時はRボタンだけ2回なんだろ?」

「う〜ん。左回りだからかな?」

「なるほど」


 そして金次郎像とのランニング勝負はどちらか一人でも勝てばミッションクリアとなると書かれている。


「よーし! まずは私からか。やるぞー!」

「ツクモ、頑張れー!」


 ツクモ操る青髭オカマの太郎子と金次郎像がスタートラインに並ぶ。


(なんかシュールだな)


 3カウントが始まり、0になって太郎子と金次郎像は走り始めた。


「LRLR……」

「いいよ! 少し勝ってるよ!」


 ツクモが金次郎像より前に出てる。このままならイケる。次はカーブ。


「LRR、LRR、LRRR、ああ! ミスった」

「リカバリー!」


 カーブが難しく、Rを3回押したら、1回だけだったり、Lを2回押したりしてミスが増えていく。


「ああ、抜かれたよ! ツクモ、頑張れ!」

「待て! 金次郎! 歩きスマホ禁止だぞ!」


 ツクモは金次郎像を追いかけながら文句を言う。


「違うよ。本だよ」

「本も禁止だ! 止まれ! 警察だー! 止まれぃ!」


 しかし、どれだけ文句を言おうと金次郎像は止まらない。


「直線だよ! ツクモ、ここで一気に進もう!」

「うん!」


 直線は全くミスしないのでどんどん距離を詰めていく。けれど最後のカーブで逆に差が開いていく。


「なんで? ミスしてないのに?」


 そう。今回はミスせずに曲がっているのに距離が開いていく。


「あれ? 遅くなってる?」

「もしかしてスタミナ?」

「それだ! そうだ。このキャラ、スタミナ値が低かったんだ」


 そしてツクモが負けて次に私の番がきた。


「頑張ってね。オルタ!」

「任せて」


 私のキャラはスピードとスタミナが高い。

 これならイケる!


  ◯


 結局、私は負けてしまいゲームオーバー。続きからスタートして、もう一度、金次郎像と対決。


 2回目にして金次郎像を打ち破りミッションクリア。

 金次郎像は元の位置に戻り、私達は写真を撮る。


「ふう。あと6つか。結構、難しいね」

「そうですね。人差し指疲れました」


 次もさっきみたいなミニゲーム系だとしんどい。


「次、どこに行く?」

「う〜ん。七不思議って、どんなんだっけ?」

「トイレの花子とか音楽室のベートベン」

「もしくは勝手に鳴るピアノ」

「あとは体育館のバスケットボール」

「なんです? それ?」

「体育館でバスケットボールが跳ねる音が鳴り響くって話」

「体育館ですか。すぐそこでし、見てみましょうか」


 花壇の向こうに体育館がある。


「行ってみよう!」

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