第2話 休講と依頼
新型コロナ『フロッグ』が流行ったことでまたしても大学が1週間休講とすることになり、その通知が全学部生に届けられた。
通知によると今後、冬期休暇を減らし、講義にあてがう旨が書かれていた。
「冬休みが減るのは嫌だなー」
『仕方ないでしょ? 今からリモート講義に移行なんて難しいし』
と、豆田が言う。
「でもレポート課題が決められたし」
一部の講義はレポート課題を提出するように学生に命じた。
私もいくつかのレポート課題を提出する羽目になった。
『仕方ないわよ』
「私、レポートって苦手」
『多少クソレポートでも目を瞑ってくれるんじゃない?』
「本当?」
『それより佳奈ちゃんは無事?』
「昨日には目の腫れも治ってきたよ」
『初日はすごかってんでしょ?』
「うん。名前の通り、カエルみたい感じ」
佳奈は新型コロナ『フロッグ』に感染して、瞼が腫れてしまったのだ。
それこそ本当にカエルのように。
本人は恥ずかしくて外に出れないと言っていたが、コロナ感染者なんだから外に出ていいわけではないだろうに。
『そのせいか今、病院でワクチン接種希望者が殺到しているらしいわよ』
「何それー?」
ワクチンといっても新型に対応しているわけでもないのに。
ま、ないよりあってほうがマシという精神かな。
◯
夕方、マネージャーの福原岬さんから連絡がきた。リビングでテレビを見ていた私はリビングを離れてダイニングに向かう。
『星屑ミカエルさんから臨時コラボ要請がきています』
「臨時?」
『はい。星屑ミカエル主催の人狼ゲーム南極基地危機一髪というゲームに参加して欲しいというご依頼です』
「いつですか?」
『明後日です』
「明後日!?」
それはあまりにも急だ。
こっちにも大学の生活がある。
といっても今は休講中。
「でも、南極基地危機一髪というゲーム持っているか確認しないといけませんし、私、初心者ですよ?」
『前に佳奈さんがやっていたので持っていますよ』
「そうですか。それなら──あっ! あの子、今、新型コロナのフロッグに感染したので……妹の部屋には入れないです」
正確には部屋に入りたくない。
『それならスタジオで配信するというのはどうでしょうか? 臨時コラボですのでタクシーチケットも出しますよ』
「うーん? 返事はすぐで──」
「やります!」
「のわっ!? 佳奈!? 近っ!? うつるから離れて!」
佳奈がすぐ側で私のスマホに向けて語りかける。
「先週に感染したんだからいいでしょ?」
「新型に感染してないから!」
「福原さん、臨時コラボ参加します」
佳奈がさらに近づいて言う。
「何、勝手に決めてんのよ。てか、本当に近いから。やめて!」
「最悪、私が出ますんでー」
『2人とも落ち着いてください。とりあえず後でまた連絡いたしますので』
そして通話が切れて、私は佳奈に、
「急に何よ! ソーシャルディスタンス!」
私は離れろとシッシと手を振る。
「『何よ!』じゃないよ! 断ったら駄目じゃない! 相手は星屑ミカエルだよ! 大先輩だよ! なに断ろうとしているのさ!?」
佳奈が信じられないという顔をしている。
「……星屑ミカエル。最近、どっかで聞いたような?」
「キセキカナウがフォローしている人の1人だよ」
「ああ!? そういえばそうだ」
キサキカナウがペーメン内でフォローしている人だ。
「『そうだ』じゃないよ。まったく。1期生で大先輩でもあるんだから、簡単に断っちゃあいけないよ」
「といってもさ、私だって急に明後日コラボとか言われても困るし」
「大学の休講が1週間延期したんでしょ?」
「それに南極基地危機一髪というゲームもやったことないし」
「私、持ってるから。やったことないなら練習。教えるから」
「でも、あんたの部屋入りたくないし」
「消毒するから!」
◯
その後、私は福原さんに臨時コラボを承諾した。
スマホでストリーマーが配信した南極基地危機一髪のゲーム実況を見て、どんなゲームか勉強した。
人狼ゲーム『南極基地危機一髪』は2頭身のキャラを操作してマップ型画面を行き来して、クルーはタスクを、人狼はクルーのフリして、クルーを
さらに特徴的なのが、殺された者、投票で吊られた者がゴーストとして生者をフォローしたりすることが出来るという点。
そして見事、人狼を吊るせばクルーの勝ち。クルーの数と人狼の数が同じになれば人狼側の勝ちというルール。
「どう? 理解は出来た?」
「まあね。人狼はバレずにクルーを殺めるってことでしょ?」
「そう。ただし死体が見つかるまで次の殺人は不可能ということ。それとミュートをちゃんとすること。コメントも見てはいけないこと。分かった?」
「OK。ルールと注意事項は分かった」
前の人狼ゲーム封鎖海中パーク・カルペより分かり易い。
この分かり易いはルールがという意味ではなく、人狼がということだ。
このゲームは殺害シーンが他のクルーにバレやすい。前のはそれが分からず、疑心暗鬼で周りを疑っていた。
「これだとギスギスすることもないね」
「……そうでもないよ。結局は誰かを吊るすからね。中にはリスナーに心配をかけるからと人狼ゲーム系は不参加としているVもいるから」
「へえ、大変だね。でも、それならなおのことこういうゲームをペイベックスが禁止にすべきでは?」
「流行ってるからね」
佳奈はそう言って、肩を
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