第39話 狂えるほど滾る!【瀬戸真里亞】
家に戻り、私はリビングで母に友達からお土産貰ったと言って、宮下さんから貰ったお土産をテーブルに置く。
そして私は自室に戻った。
その瞬間、急に理性のタガが外れてしまった。
「くわぁぁぁ!」
私はあまりにも悶え、ついブリッジをしてしまった。
なぜこんなことに。
そう。それは全て宮下さんが原因だ。
推しとの合宿話を聞いて悶えぬV豚はいないだろう。
(ああ! うらやましい! 私も! 私もあの場にいたかった! ああ!)
「姉ちゃん、どうした……って、何やってんだ? 悪魔に取り憑かれたか?」
弟がまたしてもノックなしで乙女の部屋に入り込んできた。
「何勝手に入ってんだよ!」
そう言って私はブリッジ姿勢のまま動く。
「怖えよ! 何やってんだよ!」
なぜか弟は怯えて後ずさる。
「別になんもないわよ!」
「うっ、わぁぁぁ!」
とうとう弟は私に背を向けて廊下を駆ける。
「何よ! ドア閉めなさいよ!」
逃げる背に私は注意する。
「それで階段を下りたらエクソシスト呼ぶぞ!」
そう言って弟は階段を急いで駆け下りる。
「……んだよ。わけ分かんねえな」
私はブリッジをやめて、二足歩行で廊下に立つ。
そして部屋に入り、後ろ手でドアを閉めて、ベッドにダイブ。
「ああ! いいな! いいな! 私もメメちゃんと遊びたいなー」
例えメメちゃんが宮下千鶴さんの妹だと分かっても、そんなことは出来ないのは分かってる。
ファンは距離を詰めてはいけない。
理性を持ち、一定の距離で推すのだ。
こういう時は掲示板だ。
掲示板には大勢のファンがあれやこれと書き込んでいる。私は書き込みを見て「私は会ったことあるし」なんて心の中でマウントを取るのだ。
我ながらなんとも馬鹿馬鹿しいことやら。
そんな自分に呆れつつも私はスマホを手にして、掲示板サイトから赤羽メメのスレッドを開く。
◯
665:名無しのリスナー
「オフコラボ面白かった」
666:名無しのリスナー
「オルタちゃんもオフ参加。偽物説が潰れた」
667:名無しのリスナー
「>>666 元から偽物説なんてないわ!」
668:名無しのリスナー
「>>667 いやいや、最初はあったじゃん。メメの自作自演説」
669:名無しのリスナー
「>>668 おすすめの耳鼻科教えようか?」
670:名無しのリスナー
「皆で富士フェス行ってたらしいな」
671:名無しのリスナー
「星空みはり関連かな?」
672:名無しのリスナー
「いや、ただの観客……観賞? どっちだ? まあ、観に行ってただけだろ?」
673:名無しのリスナー
「星空みはりの特別出演は身内にも秘密だったらしいしな」
674:名無しのリスナー
「星空みはりが急に出演した時は冷めたな」
675:名無しのリスナー
「>>674 アンチは帰れ」
676:名無しのリスナー
「地震びっくりした」
677:名無しのリスナー
「悲鳴助かる」
678:名無しのリスナー
「>>677 身の心配をしてやれ」
679:名無しのリスナー
「>>678 でも悲鳴可愛かった」
680:名無しのリスナー
「禿同」
681:名無しのリスナー
「禿同」
682:名無しのリスナー
「でもここ最近地震多くね?」
683:名無しのリスナー
「このスレッドは赤羽メメなのだが。他の話は他でしろ」
684:名無しのリスナー
「ペイベックス・ライブ楽しみ」
685:名無しのリスナー
「禿同」
686:名無しのリスナー
「新曲出すのかな?」
687:名無しのリスナー
「オルタは出るのかな?」
688:名無しのリスナー
「>>687 普通にないだろ?」
689:名無しのリスナー
「>>688 なんでだよ?」
690:名無しのリスナー
「>>689 3Dのお披露目あったか?」
691:名無しのリスナー
「>>690 髪と肌を変えるだけじゃん」
692:名無しのリスナー
「>>691 簡単に言うな。てか、歌えるのか? オルタは歌枠とかやってないよな?」
693:名無しのリスナー
「本当だ。オルタは歌枠一度もやってないや」
694:名無しのリスナー
「アイドルだからって歌が上手い必要はないんだぜ。むしろ下手だからこそ応援のしがいがあるってもんだ」
695:名無しのリスナー
「昭和臭がしまーす。誰かファブって!」
◯
(ぬわぁぁぁ!)
書き込みてー!
今ここでオルタちゃんはライブに出るためにテストで頑張ってるんだよって、書き込みてー!
でも、そんなことしては駄目だ。
大丈夫。
まだ理性はある。
心の中でほくそ笑むのだ。
お前らは知らないけど、私は知っているのだと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます