1章④『ハリカー大会』
第44話 ハリカー大会予選
ペイベックス上半期イベント・ハリカー大会予選1回戦が七夕の今夜21時から始まる。
私はその20分前にスロッチを起動させ、トップ画面でハリカーのソフトを選択。
そしてハリカーの画面に移り、スタートボタンを押す。次に選択画面で【みんなであそぶ】を選び、【コード入力】画面でペイベックスから配布された13桁のコードを入力し送信。承認中と画面に出て、十数秒待つ。
電子音が鳴り、承認されたことが告げられ、次にキャラクターとカート選択画面に移る。
キャラクターもカートも無難なものを選択。
そして前室に入るとペイベックスメンバーことペーメン達が何人かすでに入室していた。
「こんにちは」
私は緊張しつつ、挨拶する。
「こん……オルタ!」
先に飛びついたのはメメの同期、那須鷹フジだった。
「あれ? メメ…じゃないの?」
「え? どういうこと?」
「大丈夫なのこれ?」
他のペーメン達からも戸惑いや驚きの声がちらほらと。
今の私は赤羽メメ・オルタのアバターだけどプレイヤーネームには赤羽メメと表記されている。
「メメはまだ期末テスト中ですので予選1回戦は代わりに私が出ることになりました」
そして前にコラボで会ったペーメンのトビさんが入室してきた。
「みんなー、こんばんわー。お手柔らかにね」
「こんばんわ」
私は少し遅くれて「こんばんわ」と言う。
遅れた理由は二つ。
前回のコラボが少し尾を引いたから。
それと私は前室に入った時、こんにちはと挨拶したというミスに気づいたから。今は夜だもんね。ミスったわー。恥ずかしい。
「あれー? 今日は…….メメちゃんじゃないの?」
「まだ期末テストでして。それで私が」
「あっ、そーいうこと。なーんだ。よかったー。この前のコラボで怒ってるのかなーとビビったよ」
「トビ! 見てたけど、あんた、あれはひどいよ!」
「ごめん、ごめん。ゲームで熱くなってさー」
「なにゲームでキレてんだよ」
「フジだってよくキレるじゃん」
「キレてねーよ」
「今だってキレてんじゃん」
「怒ってんの!」
「ヒステリックオバサンだ」
「誰がヒステリックじゃい!」
「ヒステリックを飛ばさないで」
「飛ばすか!」
『アハハハ』
皆はそのやり取りを止めずにただ笑っていた。
トビさんは先輩なのにタメ口で喋れるなんてすごいな。
確かメメがフジの中は三十路のババアと言っていたっけ。
次第にペーメン達が集まり、開始5分前には全員が集まった。
そして開始時間となり、MCが現れた。
『どーも皆さーん。MCはBグループ出場の白狼閣リリィが行いまーす。誰も遅刻してないよね?』
「おい! リリィ! ルーレットでハリカーなんて当てるなよ!」
とフジがヤジを飛ばす。
「るっせーぞ! ヒステリックを飛ばすな!」
「飛ばすか! まったくどいつもこいつも!」
『アハハハ』
「ではハリカー大会の説明をしまーす。本大会では予選を行い、その上位5名が本戦に進みまーす。そして優勝賞品は企画の立ち上げ!」
『おおお!』
企画の立ち上げ。メメが言っていたやつだ。
(あれ? でも、皆は初めて知ったという感じだけど……メメはどうして知ってたの?)
「副賞はさておき、正月の大会と同じじゃないの?」
「ここまではトビさんの言う通りです。でも本大会は下位5名の方には弱杯戦に挑んでもらいまーす」
「それって弱杯戦で優勝したら副賞が出るの?」
「残念ですがでませーん。ただ──」
『ただ?』
皆が声を合わせて続きを聞く。
「弱杯戦で最下位だったもの。すなわち真の最下位には罰ゲームが用意されてまーす」
『ええぇぇぇ!?』
「私、ハリカー苦手なんですけど」
一人のペーメンが訴えかける。
「それはご愁傷様です。でも予選は2回戦あるので1回戦の後、練習して2回戦で高得点を取り、本戦に進むか、弱杯戦までに上手くなるかのどちらかですね」
「そんなー」
「えー、では皆さん、コースを選択して下さい」
出場メンバーはコースを選択し始める。
私は得意なサンシャインコースを選んだ。
全員が選び終えて、その中からランダムでコースが選ばれる。
「最初のコースはアップルポッピンコースでーす」
第1レースのアップルポッピンコースはスロッチからの新コース。でもルート内容をきちんと覚えおけば無難に走れる中級コース。
コース画面に変わり、私は8番手の位置に。
各々のカートからブルルという音が鳴る。まるでこれからやってるぞという意気込みにも聞こえる。
(よし。やるぞ!)
シグナルのカウントダウンが始まった。
3……、
私はアクセルボタンを押す
ブオー!
2……1……0。
ビュン!
きちんとスタートダッシュをきめた。
(よし。大丈夫。いける)
◯
第1コースはスロッチからの新コースで経験不足だったが、なんとか3位に入った。
その後の第2と第3コースもWeeで散々走ったコースで、見事上位で終わった。しかも第1コースで1位だった人が第3コースで10位。
(これなら総合で上位3位以内に入れるかも?)
◯
けど第4コースはユラユラクラゲコース。ガードレール当たると痺れる仕様。それと途中で水中を走るルートがある難しいコース。
コースアウトしないように注意すると、逆にガードレールに当たってしまう。
(このコース、もっと練習しておくべきだったかな?)
順位は5位だった。
◯
第5はシャーベットアンドアイスホッケーコースでサーキット場がアイスとなっているコースで、さらにコース上にアイスホッケーをする妨害キャラがいる上級コース。
(めちゃくちゃ滑る!)
Weeでもアイスコースや妨害キャラはいたけど、こんなには滑らなかった。それに妨害キャラがぶつかることがあってもホッケーで邪魔することはなかった。
順位は8位。
◯
「皆様、お疲れ様です。予選1回戦の総合順位を発表致しまーす!」
画面に1位から12位までプレイヤーが発表された。
(私どこだ? 上位かな? 赤羽メメ、赤羽メメ)
今の私はオルタではなく、赤羽メメ扱いとなっている。だから発表も赤羽メメで表示される。
(あった!)
…………私は4位だった。
まあまあかな?
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