第17話 ハリカーコラボ④
インビジブルコスモスコースは宇宙空間の透明な路面を走り抜けるコース。さらにコースの外はレーンも何もないためコースアウトすると落下。しかも路面がつるつるのためカーブが難しい。
そのためこのコースはハリカーで1、2を争う超難関コース。
路面は透明だが、路面と宇宙の区別は微かにだがつく。
それは宇宙の色である。宇宙は群青色でえるが、路面のからでは青色が強い。
そこをきちんと見分けをつければ、落ちることなく走ることができる。
それと右下にマップがあるから自分がどこを走っているのか分かるが、それでも上手く走るには何度もこのコースを走ってルートを覚えないといけない。
「ぐっ!」
『オルタ、大丈夫?』
「駄目。マークされて前に行けない」
『そっちもか。私も』
レースが始まって早々、私達は徹底マークされていた。
無理に攻めるとコースアウトして落下してしまう。そのためなかなか抜けずにいる。
『オルタは今何位?』
「6位です」
『私は12位』
「こいつら全員グルですよね」
全員レート1万、同じコースを選択、そして私達をマークして妨害。
『そうだね。前に行けない』
キセキは苦しそうな声を出す。
『このままだと周回遅れになっちゃう』
「なんとかしないと」
しかし、どうすればいいのか。
私はコースを走りつつ、チャンスを伺うがレート1万は伊達ではなく付け入る隙が見当たらない。
このままだとジリ貧だ。
アイテムで逆転を狙うのもありだが、たぶん相手達はゴースティングをしている。
こちらの配信を見ているから私達がどんなアイテムを持っているか分かっているはず。
私はアイテムボックスにてスラスターを手に入れた。
もちろん、それは相手にバレているはず。
ならば、私は逆にそれを利用した。
「ここだ! いっけー!」
カーブを曲がり、ストレートに差し掛かった頃に私は告げた。
でも、実際はアイテムは使わない。
相手は私がスラスターを使うと考え、ガムを路面に落とした。
私はガムを避けて、スラスターを使った。
そして私をマークするプレイヤー2人を抜かす。
「よし!」
さらに私は次のアイテムボックスでハンマーを手に入れた。
ハンマーは近くにいるプレイヤーを叩き潰すアイテム。しかも一度きりではなく、数秒間。
強力なアイテムは基本後方が得られるアイテムで4位の私が手にするのはラッキーなことだった。
私は前を走るプレイヤーに近づくとすぐにハンマーを使用して邪魔をするプレイヤーを叩き潰していく。
順位は上がり、3位にまでのぼりつめた。
「なんとか3位になったよ!」
『私はまだべべだよ』
「アイテムは何か持ってる?」
『取ろうと思ったら邪魔された。もう無理だ。1位がすぐ後ろに!』
「むしろ1位を邪魔しておいて」
『やるだけやってみるよ』
そして最後のアイテムボックスでキセキが、
『ミサイルゲット!』
「ナイスッ! 1位に抜かれたら使って!」
『オッケー!』
キセキは1位に抜かされるとすぐに後ろからミサイルを使った。
ミサイルはプレイヤー自身が大きなミサイルになって突き進むアイテム。
当たった相手は吹き飛ばされる。
私の画面からでもキセキがミサイルを使って、1位のプレイヤーを吹き飛ばしたのが見えた。
あとは2位……いや1位だけ。
しかし、1位とは距離があり、最後のカーブを曲がられたら、あとは短い直線だ。
私が手にした最後のアイテムはチャフ。
防御系だ。
さらにここへきてペイントで視界が狭まる。
これはもう諦めるしかないのか?
あとはコースアウトしないようマップを見てゴールをするだけなのか。
私はマップ内の自信を示すマーカーを見て、最後のカーブを上手く曲がれるようにコントローラーを操作する。
──だが、そこでラッキーなことがあった。
キセキを邪魔していたプレイヤー2人のうち1人がカーブ内側にオイルを蒔いたのだ。
そして1位がオイルを踏んでしまいスピンした。私はその隙にカーブを曲がり、直線に入る。
1位になった私はそのままアクセル全開でゴール。
「やったー! 1位!」
『私達の勝ちだ!』
◯
「大逆転でしたね!」
『まさかあの状況で勝つとは! オルタ、すごいや』
「いえいえ、キセキさんが1位をミサイルで吹き飛ばしての勝利ですよ。本当に奇跡が起こりましたね」
『ヘッへー、照れるなー』
「もう天狗ですか?」
私達は笑う。
『さてと次のレースだけど、ちょっと設定を変えるね』
「変えるって何を?」
『レート3千以下にするよ。そうすればレート1万の猛者なんて現れないはず』
そしてキセキは参加レートに制限をかけて募集した。
『……えっ?』
なぜかキセキは困惑の声を漏らした。
「どうしたの?」
『オルタ、参加者のレートを見て』
私は参加者一覧から左側に記載されているレートを見た。
「ええっ!?」
参加者一人一人確認する必要はなかった。
一目見ただけ異常が分かった。
同じ数字が並んでいるのだ。
そう。私達以外全員レート3千。
上限いっぱいの数値だ。これは偶然レート3千のプレイヤーが集まったわけではないだろう。
『これはチートね』
キセキが溜め息交じりに言った。
「……まじか」
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