第20話 夜と朝
バーベキューの後、私達は順番に風呂に入った。その後は少し談笑して、深夜0時を過ぎた頃に福原さんが「皆さん、明日も早いので就寝しましょう」ということになり、全員就寝することになった。
私と佳奈は同室で2階の奥の部屋を使った。
佳奈は疲れていたのか、ベッドに横になるとすぐに寝息を立てた。
「はやっ!」
私も寝よ。
電灯を消して、ベッドに横になる。
目を瞑り、今日のことを思い出し、そして明日の予定を見直す。
明日は朝からレッスン。
また走らされるのかな?
朝、筋肉痛になってそうだな。
上手く走れるかな?
筋肉痛ってことで、運動はなしかな? また鈴音さんと一緒にジョギングなんてことはないよね。
というか朝のレッスンは私だけだった。
昼からは夏希さんとレッスンかな? というか昼からもあるのかな?
でも、なんでなんだろう。夏希さんは朝になく、私は朝にレッスンのある理由。
配信かな。夏希さんもVtuberだから朝の配信とかあるのかな?
あっ!? そういえば、5期生も合宿中に配信をするって言ってたけど、何をするんだろう?
その日にお楽しみにって言ってたけど。
まあ、この時期だからホラーかな。
皆で怪談でもするのかな?
それは違うか。怪談なら前もって話を用意しないと駄目だし。
やっぱホラーゲームかな?
ホラーだから夜配信かな。昼間は皆、レッスンあるしね。
私は朝からあるし。
ふと、私はスマホで今の時間を確認する。
深夜1時17分だった。
うわっ。もうこんな時間だ。明日は9時からだから、7時起きのはず。
明日も早いし、もう寝よう。
…………。
…………。
(…………眠れん)
枕が違うからかな。
私って、そういうタイプだからな。修学旅行でもよく眠れなかったもんね。
チラリと佳奈の方を向くと、枕とか関係なく小さいイビキをかいている。
(うらやましい)
◯
「よく眠れましたか?」
朝になり、1階に降りてリビングに入った私と佳奈に、先に起きていてリビングにいた福原さんが聞く。
「はい。ぐっすりです」
と佳奈は言う。
「私は枕が違ったせいで上手く眠れませんでした」
私と佳奈はダイニングの椅子に座る。
「あらら、それは大変ですね」
福原さんがキッチンに向かい、
「パンは食べますか?」
「はい」
「手伝います」
佳奈はキッチンに向かい、福原さんの手伝いをする。
「お姉ちゃんも手伝って」
「ごめん、無理。筋肉痛」
手伝いたいのだが、動くのがつらいのだ。
約8キロとジョギングのせいかふくらはぎや太ももが痛い。座ったり、立ったりするのが大変。
「佳奈さんは? 筋肉痛にならなかったのですか?」
「私は少しはだけですよ」
「私は約8キロも走ったんだよ」
なぜダンスレッスンよりきついのか?
「どうしたの?」
とハルコさんがリビングに入ってきた。その後ろには頭がボサボサの海さんがいる。
「筋肉痛の話です」
「千鶴は筋肉痛なの?」
「はい、脚が。歩くのはまだ大丈夫なのですが、なぜか座ったり、立ったりするのがつらいんです」
「私も筋肉痛なんだからね」
と言って、佳奈がコーヒーカップを2つ持って来た。1つを私の前に。
「ありがと。でも、佳奈は少しなんでしょ?」
「それでも痛いよ」
「私は全然平気だけど」
「年寄りは2日後にくるからね」
海さんが椅子に座って言う。
「誰が年寄りだって」
「違うよー。私は一般論を言ってるだけ」
「文脈上、私だろ!」
「まあまあ、落ち着いて下さい。ほら、コーヒーありますよ」
「じゃあ、私も飲もうかな」
ハルコさんはキッチンに向かう。
「あ、私の分もお願い」
海さんがハルコさんに言う。
「あんたも動きなさいよ」
「私も筋肉痛だし、それにキッチンに大勢集まったら大変でしょ? あんた、お尻がデカいんだから」
「デカくないわよ」
「前にキッチンでヒップアクセルくらって、パスタを落としたのは何だったのかしら? 痛かったなー。せっかくのパスタが無駄に。シクシク」
「はいはい、わかりましたよ」
「ヒップアクセルとは?」
私は海さんに聞く。
「お尻がぶつかったこと。しかも体を回転させたから遠心力マシマシで」
「なぜアクセルと?」
「当時フィギュアスケートが流行ってたの。それでトリプルアクセルからヒップアクセルになったの」
そこで福原さんが皿とバターを持って、ダイニングに現れた。
皿の上にはトーストが2つ。
「ありがとうございます」
私はトーストを取る。そして佳奈も。
「えーと、私の分は」
海さんが自身を指差して問う。
「ありません。ご自分で焼いてください」
「ハルコー、パン焼いてー」
「自分で焼け!」
「海さん、動かないと駄目ですよ」
「ちぇ」
福原さんに
「照さんと葵さんはまだ寝てるんですか?」
私はトーストにバターを塗りつつ福原さんに聞く。
「そのようですね。そろそろ起こしにいきましょうか」
と福原さんは立ち上がり、2階へと向かう。
バターを満遍にトーストに塗りたくって私は食す。
「ん? このトースト美味しくない?」
「本当だ」
ふわふわで噛むともっちもっちの弾力。そして小麦の風味と甘みがすごく、バターに絶妙に合っていている。
キッチンでは「ハルコ、振り向くときは気をつけなさいよ。この前より一段にお尻が大きくなってるんだから」、「大きくなるか!」、「アクセルではなく、サルコウになりそう」、「どう違うんだよ?」、「知らなーい」
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