第52話 大人として【福原岬】
1人だけしかいないオフィスで私はペイベックス上半期イベント・ハリカー大会本戦を見終わって、大きく息を吐いた。そして首をポキポキと鳴らす。
「ふう〜、ハラハラしたわ」
誰もいないことをいいことに私は独りごちた。
赤羽メメは残念ながら総合順位4位で終わった。
メメはこれを機に辞める気でいた。
だが、ネットでの反応は上々だった。
ならば、もしかしたら思いとどまってくれるかもしれない。
SNSのトレンドを確かめると面白い単語が上位に入っていた。
それを見て私はおかしくて笑った。
次に私は赤羽メメの登録者数を調べると予想通り数は上がっていた。
掲示板でもオルタのことも書かれているがメメのこともきちんと書かれていた。これは喜ばしいことだ。
と、そこで後輩から電話があった。
「もしもし」
『先輩、やっと判明しましたよ。最初にデマを流した奴』
「根津でしょ?」
『え、あ、はい。知ってたんですか?』
「いいえ。候補に入ってただけよ。それに誹謗中傷の中にあれやこれやとヒントもあったしね」
『どうします』
「もちろん法的に対処するわ」
『分かりました。証拠等を送りますね』
「ええ。お願い」
後輩からの通話を切り、次に私は赤羽メメこと宮下佳奈に連絡を取る。
『もしもし』
「もしもし。惜しかったわね。でも、最終レースのあれは面白かったわ」
『や、やめてください』
「フフ、たぶん切り抜きが出来るわね。タイトルは『男性ホルモンバキバキのメスゴリラ』かしら?」
『違うんです! あれは、その、ええと……』
「いいんじゃない。あれで」
『え?』
「凝り固まったキャラより、多少は素を見せた方が好感が高いわよ」
『そうですか……いやいや、あれは素ではありません。ちょっと興奮して!」
「まあ、これで人気は上がったんじゃない?」
『上がりましたか? 逆に引かれたのでは?』
「登録者数も上がってるんだから引かれてないわよ。もっと自分に自信を持ちなさい」
『はい』
「それじゃあね」
『お疲れ様です』
私は通話を切った。
あの感じだと、辞めるとは言わなさそうだな。
私は席を立ち、大きく伸びをする。
「久々に群馬に行ってみようかな」
オルタのイニシャル走りを見て、私も感化されたようだ。
「今日は久々に
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