第23話 情報漏洩【朝霧由香】
私はマンションのドアを閉めて、肩を落として息を吐く。
(最悪だ)
靴を脱ぎ、とぼとぼと廊下を歩く。
公式ペイベックスチャンネルでの赤羽メメ・オルタとのコラボ配信。
オルタは優しい人ゆえか6期生の私にも優しく接してくれた。
それは良かった。
けれど、4期生のカロ先輩、5期生のヒスイ先輩と会ってしまった。
怒ってはないそうだが、どこか距離を感じた。
あの時の気まずさは嫌な汗をかかせる。
これも全て彼女が根津剣郎に情報をリークしたのがいけない。
確かメメはこの件に大きく被害を
オルタはどこまで知っているのか。
知ったら怒るか。そうなれば配信も──。
「ううっ」
私はリビングに続くドアの前で腰を下ろす。
右の壁に頭を預ける。
そして溜め息をつく。
とにかく頑張らなくては。
私はゆっくりと起き上がり、ドアを開ける。
ダイニングチェアにバッグを置き、冷蔵庫からストロング缶とつまみを取る。
テレビを点けて、深夜のバラエティ番組を見る。
途中で飽きて、スマホでエゴサをしようとした時、スマホがバッグの中と気づいた。
バッグはダイニングチェアの上。
立ち上がって、取りに行くのも億劫だったので、私はストロング缶に口をつける。
ぐいぐいとアルコールを胃へと流し込む。
汚らしくゲップをして、私はつい慌てる。
でも、ここには私一人だということに気づき、
「何を慌ててるのやら」
と、溜め息交じりに呟く。
そして目を閉じて、ソファの背もたれに上半身を預ける。
「疲れた」
でも充足感はあった。そして安定感もあった。
このまま軌道修正できるのか。
できなければ──。
また廊下で先輩達に会った時の雰囲気を思い出す。
「気まずいのは嫌だな」
マネージャーは時間が解決するかもしれませんと言うけど、それはいつなのか。
一度失われて信用は取り戻すのが大変。
私個人が関わったわけではないが先月のこともあり色々と変に勘繰られてしまう。
ソファに倒れる。
目を閉じてると、意識も深く落ちていく。
◯
目が覚めたのは深夜の3時で、変な時間に目を覚ましてしまった。
「お腹空いた」
帰ってからストロング缶とつまみしか胃に入れていない。
私は冷蔵庫に向かい、冷凍チャーハンを取り出した。
耐熱皿に冷凍チャーハンを盛り付け、ラップをかける。そして電子レンジで温める。
その間、私はバッグからスマホを取り出して、メッセージをチェック。
同期からはメッセージがいくつかきていたが、先輩からは1通もなかった。
この時間に返事はあれかなと思い、明日の朝に返事をすることに決める。
その後、SNSでエゴサをすると、あれやこれやと辛辣なコメントを発見。
頭の中で言い返しつつ、エゴサを続けていると、イライラしてきた。
面白くないとかならシンプルでまだましだけど。
上から目線のダメ出しや自身の言葉に酔った益のないコメントは私をイラつかせる。
「どいつもこいつも。ウザい」
イライラして太腿を叩く。
その時、私のエゴサを止めるかのように電子レンジが「チン」と音を鳴らす。
「食べよう。そして飲もう」
私は冷蔵庫からストロング缶をもう一本出した。
◯
チャーハンを食べ終えて、シャワーを浴びる。そしてまたストロング缶を開ける。
3本目。でも、仕方ない。飲まないとやっていけないのだ。
そして私は飲み終えて、寝室兼配信部屋に向かう。
その頃には時間は4時42分だった。
不吉な時刻。
私はよくこの時刻を目にする。
なぜだ? たまたまか?
神経質になのかな?
「寝よう」
とにかく寝ることにする。
考えて分からないことは放っておくのが1番。
今、寝たら起きるのは昼以降だろう。
でも、これは配信者としては普通のこと。
一般の人と寝起きの時間が違うのだ。
(メッセージの返信どうしよう。…………ま、遅れてもいっか)
布団に入り、就寝する。
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