第19話 コラボ終了。そして……
『えー、それでは今日の配信は終了したいと思いまーす』
「ご視聴ありがとうございましたー」
ハリカーコラボ配信を終了し、私は後片付けを始める。
その時、キセキカナウから通話がきた。
「もしもし」
『もしもし、今日はありがとうね。楽しかったよ』
「はい。こちらも楽しかったです」
『それでね、wixivって知ってる?』
「ウィクシヴ? ……ああ! wixiv! ええと、ネットのコミュニティサービスでしたっけ? チャットとかの?」
詳しくは知らないけどwixiはいろんな趣味を持つ人がチャットで触れ合うサイト。
基本はフリーのチャットルームがあり、誰でも入れるが、wixivの利点は鍵付きのチャットルームを作れるという点。
そしてその鍵付きのチャットルームに入るにはオーナーの許可が必要。さらにオーナー権限で追い出されることもある。
本当に同じ趣味で仲良くなりたい人が集まるサイト。それがwixiv。
『そうそう。私、そこでちょっとした文学チャットをやっててね。ちょっとした感想の言い合いみたいなことをしているの。チャットルームのパスワードを送るから、よかったら来てね』
スマホからメッセージ通知の音が鳴る。
そこにはチャットルームのパスワード、他にキセキのwixiv内でのユーザー名とルームIDが記載されていた。
『それじゃあね。お疲れ様ー。またコラボしようね』
「あ、お疲れ様です」
◯
スタジオの配信部屋を出て、カード型のルームキーでロックをかけ、受付へと向かう。
途中でマネージャーの福原さんに会った。もしかして配信が終わるのを待っていてくれたのだろうか。
「配信お疲れ様です。鍵を」
「あ、はい」
「受付に返却致しますのでそちらの休憩スペースでお待ちください」
「わかりました」
私はルームキーを福原さんに渡し、休憩スペースの椅子に座る。
すぐに福原さんが休憩スペースにやってきて、休憩スペース内にある自販機に向かう。
「コーヒーでよろしいですか?」
「あ、はい」
福原さんは缶コーヒーを2つ買い、1つを私に差し向ける。
「ありがとうございます」
そして福原さんは向かいに座った。缶コーヒーを開けて飲む。
私も真似て缶コーヒー開けて飲む。
福原さんは私に話があると言っていた。
……なんだろうか?
「無事キセキカナウとのコラボお疲れ様です」
「はい。無事終わらせることができました」
「まさかあの四皇の1人とコラボとはすごいですね」
福原さんが微笑む。
「偶然です。運良くフォローされて……」
「謙遜しなくてもいいですよ。あのキセキカナウからフォローされるなんてそうそうないんですら。うちでは星屑ミカエルくらいですよ」
それは前にも聞いた。キセキにフォローされることは珍しいと。
「そうらしいですね」
「配信も問題なく終わって良かったです」
「はい」
「ただ、チートプレイヤーの件は災難でしたね」
「ええ」
私は苦笑いした。確かにあれは大変だった。
「こちらの方でもどうしてああなったか調べておきます」
「お願いします」
これで話は終わりかなと思ったら、
「それで……配信後にお話があると言ったことなんですが」
(ん?)
「話は1期生とお食事に行かれたことです」
なんと話はこれからだったようだ。
しかもこの前の食事の件。
「それが何か?」
福原さんは一度、周囲を確認する。
ここには今、私と福原さんしかいない。
「どのようなお話をされましたか?」
福原さんは私達しかいないにも関わらず声のトーンを落として私に尋ねる。
「特にたいしたことはないです。内容も普通の……ことです」
私は前回の食事の件をかいつまんで説明した。
「なるほど」
そう言って福原さんは目を瞑り、考え込む。
どうしたのだろうか。
食事と他愛ない会話なだけ。
問題発言をしていない。
いや、そういうのでなく、福原さんはまるで1期生との接触を危険視しているような節が……いやいや、さすがにそれはないか。
配信でも皆、仲良しだった。
「あのう?」
「あっ、すみません」
福原さんが目を開ける。そして私に申し訳ないような笑みを向ける。
「どうしたんですか? 1期生との食事に何か問題でも?」
「いえ、ありません。ただ……1期生はオーディション組のため」
「オーディション組?」
「1期生はオーディションで選ばれたメンバーなんです」
「はあ。で、それが何か?」
「……赤羽メメが所属する5期生は一応社内組という形なんです」
「社内組?」
「やはり千鶴さんはそういったご事情をご存知ないようでね」
「……はい」
オーディション組と社内組に一体何があるというのだろうか?
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