第20話 コラボ配信【宮下佳奈】
「こんにちはー。ペイベックス4期生七草アキノでーす。そして今日はゲストとして……」
「はーい。赤羽メメでーす。こんにちはー」
今日は七草アキノ先輩とのコラボ配信。
七草アキノは私より、1つ早い4期生。
アバターは黒髪のボーイッシュキャラ。
中も明け透けのない明るい人。
今日の実況は『特攻バズーカFチーム』というゲーム。戦場をバズーカを持って暴れるというゲームで今日はアキノ先輩とのタッグ戦。
「よーし。チームカラーは赤にしようぜ」
「オッケーでーす」
ユニフォームを赤に決められる。まあ、チームカラーはそれほど意気込みもないのでどうでもいい。
次にキャラクター選択に移る。
「私、攻撃系でいい?」
「それじゃあ、私は支援系で」
「任せるよ」
2人共攻撃系でも良いのだが、バランスが悪く、やられやすいデメリットを持つ。
アキノはゲームは楽しんでと言うが、根っこは勝たなきゃあ駄目系。
でもそれは勝てば満足するタイプで扱い安いというもの。
(勝てばいいのだ)
そのために私はもう練習をした。
アキノが攻撃系を選ぶことを考慮して、COMを攻撃系にして自分は支援系のタッグ戦練習をした。
◯
「お! 上手いじゃん。メメっち」
「そんなことないですよ。先輩がバンバン敵を倒してくれるので安心して支援できます」
とりま褒め返す。
敵がいない時は雑談し、リスナーを意識して楽しむ。
「ねえ、いつになったらオルタ出てくるの?」
(きた!)
今の私はオルタの窓口扱い。
ゆえにオルタの話が必ずくると理解していた。
「今は出てきませんよ」
「えー、ざんねーん」
そう言ってアキノはバズーカを放ち、敵を吹き飛ばす。
「オルタって、ガチ姉って本当?」
「はい。姉ですよ」
「いいな。姉妹揃ってVtuberって。なんか憧れるー。アキノ先輩はご兄弟はいないんですか?」
「私、一人っ子なの」
「いいなー」
「えー。なんでー?」
「私、姉がいるからお下がりばっか。テレビのチャンネルも争ったりするんですよ」
「そっかー。でも憧れるなー」
憧れるという単語が2回も出た。
寂しいのかな?
「そうですか……っと、先輩! 2時の方向に敵です」
センサーで2時の方向に敵の信号を見つけた。
まだ距離はあるし、向こうが避ける可能性があったが、話題を変えるのにちょうど良かった。
「おっ。ちょっと様子を見ようぜ」
「はい」
◯
こちらの立地が良かったせいか向こうは引き返して行った。
「ねえ、ペイベックス上半期ハリカー大会にはオルタは出るの?」
「え? あ、私が出るとオルタは出ませんよ」
「そうなの?」
「オルタにはアバターはないんです。だから私がハリカー大会に出るとオルタは出られません」
「なんだー。私もオルタちゃんとコラボしたかったなー」
「えー。私では不服って言うんですかー」
「違うよー。アハハハハ」
「あっ、先輩、2時と7時の方角から敵が来てます」
「さっきの奴らが引き返してきた?」
敵の数が同じなのでその可能性は高いが──。
「後ろは……なんでしょうかね?」
「奴らの味方だったらやばいね」
立地はよくてもこっちは2人で1人は支援系。
対して向こうは前と後ろを合わせて9名。
「逃げる?」
「逃げたら1人が支援系とバレて追いかけてくるかもしれません」
「どうしよう?」
「待つしかありませんね」
前後の相手が味方同士なら戦闘になり終わり。
もし相手が敵同士なら、どちらかが逃げて、その後で残った方と戦闘。
(さあ? どうなる?)
「お! 後ろが去った。前を叩くか?」
「待ってください! ここで戦闘すると後ろに味方同士ではないと悟られて戻ってきます。
「ならどうしろってのさ?」
「もう少し待ちましょう」
「相手が先手を打ってきても、まだ大丈夫ですし」
「分かった!」
◯
「いやあ、惜しかった。実に惜しかった。あとちょっと!」
アキノが悔しそうに言うが、満足はあったらしい。
それもそうだろう。こっちは2人で向こう合わせて9人。
敵は味方同士ではなかった。
そのため、後ろの敵はこっちが前から向かう敵の味方と思い、後退した。
けれど私達が前の敵と交戦となると戦闘が終わるギリギリで攻撃を開始。
そのため、前の敵を倒しても後ろからの連続戦闘でこちらはすでにボロボロ。
それでも敵に
「あと1人はいたら勝てたなー」
「ですね」
ここでオルタの名がでないのは、オルタがいると私がいないと理解してのことだろう。
「今度はもっと複数でやりたいですね」
「そうだね。4期生と5期生の合同チーム作りたいね」
「いいですね」
「メメはこの後は暇?」
「暇ですよ。ならハリカーしない?」
「野良配信ですか?」
「そうそう」
野良配信とはペイベックスを介さずに相手と配信することである。
というか普通は野良配信が当たり前。前の星空ひはりとオルタの配信がまさにそれ。
もちろんルールはある。ペイベックス以外の他のVtuberとはコラボしないということ。それと無駄に多く配信しないことである。
「いいですよ。ハリカー大会の練習したかったですし」
「おっ、コラボ決定! リスナーの皆もこの後、配信だからね」
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