第54話 コロナ

 学内でコロナが流行っているらしく、教室に入る前に両手のアルコール消毒が義務付けられた。


「まさかまた流行るとはね」


 豆田が両手をアルコール消毒して言う。


「びっくりだね」


 続いて私も両手をアルコール消毒して、教室へと入る。


 コロナ。中国武漢から始まり、世界中に広まった謎のウイルス。死者数は少ないが感染者は多い。


 しかしそんな中、アメリカではコロナ感染者の死者数が世界で最も多く、その死者数は100万人を超える。


 そのためネットではコロナウイルスはコウモリ由来ではなく、敵対国であるアメリカの民を殺すため中国武漢にある研究所が造ったウイルス兵器で、それが不慮の事故により中国国内で流行ったのではと囁かれている。


「今度の変異株は感染力は高いけど、重症になりにくいんだって」


 テレビのニュース番組で久々にコロナが話題になり、手洗いアルコール消毒の注意喚起がなされていた。


「学食も避けた方がいいのかな?」

「そうだね」


 学食は人が多いし、口を開けて食事をする分、感染率が高いはず。


「でもそれだと、どこでご飯食べる?」


 空いた席を見つけ、私は座る。


「ん〜、ファミレスかな? ランチなら安そうだし。でも、近場は避けるべきじゃない?」

「どうして?」

「皆、同じこと考えているかもしれないでしょ?」

「なるほどね。種咲達にも聞いておくね」


  ◯


 豆田の言う通り、近場のファミレスは学生達で溢れていた。

 そのため私達は少し離れたファミレスで待ち合わせた。


 私と豆田、種咲が先にファミレスで席を取り、少しして桜庭がやって来た。


「おはよう」


 そして最後に美菜がマスク着用してやってきた。


「うお! どうしたの? マスクして?」


 種咲が代表して聞く。


「あ、これ?」


 美菜はマスクを外す。


「実は私が履修した講義がさ、コロナに罹患した人ばっかでね。一応マスク着用してたの。あ、コロナにも風邪にも罹ってないからね」


 そして美菜は豆田の隣に座る。


「マスクしてるからびっくりしたよ」


 少し前のコロナ禍はマスク生活は当たり前だった。外に出る時は皆がマスクを着用していたし、マスクを着用してないと白い目で見られる。


 今では逆にマスクをしているとコロナ感染者と疑われる。


「そっちもかー。こっちもやばいよ」


 種咲が肩をすくめて言う。


「掲示板で行動分析学は9割の学生がコロナになって休講と描かれてたわね」


 そう言って、桜庭がサラダうどんを食べる。


 美菜はメニュー表を見ず、店員にランチメニューを伝える。


「ドリンクバーはあちらの方ですの。ご自由に」


 女性店員が店内中央にあるドリンクバーを指して言う。


「はい」


 美菜はか細く答える。そして女性店員が去った後、美菜はドリンクバーへ向かう。


「よく来るの?」


 コップにアイスコーヒーをいれて戻ってきた美菜に私は尋ねた。


「ううん。のぼりがあったから」


 美菜は外を指す。

 窓の向こうを伺うとランチメニューののぼりが外に置かれているのが目に入った。


「ちなみにサラダうどんはランチメニューより安いわよ」


 と、桜庭が教える。


 しかし、注文した後に言われても反応に困るもので美奈も「そうなんだ」としか言えない。


「でも、ドリンクバー付いてないじゃん」


 と、美奈と同じランチメニューの種咲が言う。


「別にいいわよ」


 そこで私と豆田の注文したメニューが届く。

 私もまた美菜や桜庭と同じランチメニューで、豆田は冷やし中華。


「冷やし中華まだやってたんだ」


 美菜が驚く。


「まだ暑いからじゃない?」

「確かに暑いよね。もうすぐ10月なのに。異常気象だよ」


 夏が終わったにも関わらず、今だに夏と同じ気温。


「しかもコロナまで流行るし」

「異常だらけね」


 豆田は冷やし中華を食べつつ答える。


「このままだとリモートかな?」


 種咲が溜め息交じりに聞く。


「さすがにリモートはないでしょ」


 と、豆田は否定する。さらに、


「コロナも季節性インフルと同じ5類なんだし。今更、リモート講義なんてないわよ」

「でも新型って感染力が高いんでしょ?」

「今は何型なの?」


 うどんを飲み込んで桜庭が聞く。


「さあ? 悪魔の名前だったはず」

「型多すぎ」

「私、ワクチン3回打ったけど大丈夫かな?」

「それ2年前でしょ? 2年だともう効力薄まってない?」

「えー、免疫って一生ものじゃないの?」

「免疫って、薄まるらしいよ」

「嘘ー。それじゃあ、4回目打ってとか言われない? 打たない限り、受講はできないとか言われない?」

「んー? 大丈夫じゃない? たぶん」

「もしかしたら一時的に全講義休講になるかもね」

「それはないわよ」

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