4章②『交友』
第22話 wixiv
私はwixivでアカウント登録をしてキセキのチャットルームを探した。
キセキのメッセージからはキセキのユーザー名とルームID、ルームパスワード、そして日時が記載されている。
私はサイト内のチャットルーム検索システムでルームIDを入力してキセキのルームを検索。
「これか」
1件ヒット。
ユーザー名【ミラクル】。
送られてきたメッセージのユーザー名と同じだ。
チャットルームをクリックするとパスワード入力画面が出た。
パスワードを入力して、チャットルームに入室した。
【オルタん】:「こんにちはオルタんです。ミラクルさんの紹介で入りました」
【ミラクル】:「オルタんだ。来てくれたんだ。嬉しいなー」
【無一文】:「よろしく」
チャットルームには私を入れて3人しかいなかった。
【オルタん】:「3人だけですか?」
開始時間は16時で終了予定時間は17時。今は15時47分。
【ミラクル】:「そろそろくるんよ。ほら」
卍丸、ホシミカとユーザー達が次々と入室してきた。
そして16時になると計13名となった。
【ミラクル】:「それでは時間になったので読書感想会始めまーす」
【卍丸】:「まず誰からいきますか?」
【ミラクル】:「最初に入室した無一文はどうです? 何か話したい作品あります?」
【無一文】:「私から? いいよ。私ね、ついこの前──」
◯
チャットルームでは誰かが読んだ本の感想を言って、その本を読んだことがある人は感想を言い、読んだことがない人は質問をしたりする。
それだけのこと。
しかし、自分と感想が違う場合はぶつかり合ったりする。けれど汚い言葉はなく、あくまで私は『こう感じた』、『そういう考えには至らなかった』程度のもの。
私はタイピングが速い方ではないので、タイミングを逃さないようにするので精一杯。
というかほとんど短文だ。
【ミラクル】:「オルタんは何か読んだ本とかある?」
【オルタん】:「私ですか? そうですね──」
私はつい最近読んだ海外ミステリー小説を挙げた。
【卍丸】:「それ私も読んだことある? すんごく長いストーリーだよね。どうだった?」
【オルタん】:「まさに長いですね。物語……謎解きが大きく進むのは下巻からですから、大変でした」
【ミラクル】:「上巻は人物紹介みたいなもんだしね」
【オルタん】:「そうなんですよ。しかも最初の発見も娘さんでしたし、主人公が見つけた写真の件も警察とかは気づかなかったのかという疑問でしたね」
【ホシミカ】:「いや、写真のあれは気づかないんじゃない? あれはあくまでいつどこにいたかという証拠だもん」
【無一文】:「そうかな? 皆と違う視線と驚いた表情。あれはおかしいって気づかない?」
その後、次々とコメントが発信される。
【オルタん】:「意外と皆さん、お読みになっているんですね」
【ミラクル】:「そりゃあ、21世紀初の全世界で大ベストセラーになったミステリー小説だからね」
【卍丸】:「ハリウッドで映画化にもなったし」
【ホシミカ】:「私、その映画から入ったわ。その後に小説」
◯
【ミラクル】:「さて、そろそろ時間だけど。最後に誰か読書感想ある? アルタイルさんは?」
【アルタイル】:「ここ最近、読んでるのが一つあるのだけど……」
【ホシミカ】:「あら? 何かしら?」
【アルタイル】:「アーサー・マッケンの小説集」
アーサー・マッケン。知らないな。
名前からして海外の作家だけど。
作品集というからには中・短編かな?
他の人も知らないのか、まだ誰もコメントを発していない。
しばらくチャットは止まっていた。
ここは私が「どんな小説ですか?」と聞いてみるべきかな?
そう動こうとした時。
【ミラクル】:「これまたマニアックなの読んだわね。サブカルチャーと言うのだっけ?」
【無一文】:「コズミックホラーですか? いや、コズミックホラーの原点ですか?」
【ホシミカ】:「どれを読んだの? パンの大人神? 白魔?」
【卍丸】:「活字がやべーやつだ。私も読んだことあるけど、すげー時間かかったよ」
コメントが一気に流れた。
あれ? 意外に知られている作家なのかな?
【アルタイル】:「パンの大神も白魔も読んだよ。ついこの前、生活の欠片を読んで今は恐怖を読んでるとこ。ネタバレは禁止だからね」
【無一文】:「しませんよ」
【アルタイル】:「では、生活の欠片について感想を述べていこうと思います」
◯
アルタイルさんが生活の欠片という小説の感想を述べた後、皆はあれやこれやと意見を述べた。
そして終了予定時間が少し過ぎて、
【ミラクル】:「では、今日の読書感想会は終了しまーす」
【無一文】:「お疲れー」
【卍丸】:「お疲れ様」
続々と別れの言葉が述べられ、退室していく。
【オルタん】:「お疲れ様です」
私も別れの言葉を言って、チャットルームを退室。
退室後すぐにキセキから連絡がきた。
『どうだった?』
「楽しめましたよ」
『不定期開催だけど。よかったら次も来てね』
「はい」
『ちなみにユーザー名はあれでいいの? オルタだってバレバレだよ』
「そうですか?」
私のユーザー名はオルタん。V関係ならバレるだろうけど。一般の人ならまず気付かないはず。
『実のところ私がVのキセキカナウだって、皆は知ってるし。それに参加者はVtuberだよ』
「ええっ!?」
『言って……なかった?』
「聞いてませんよ。もしかして……ペーメンもいたり?」
『うん。結構いる』
「うわー。そりゃあ、皆にバレてるかも」
『ま、別にバレてもいいんじゃない? 他の人も誰か分かり易いし』
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