第36話 ハリカー
私と瀬戸さんはスロッチを起動させ、ハリカーをすることにした。
「懐かしいなー。あれからだから……小3……11年前? やばいわー。ブランクありすぎじゃない。上手く走れるかな?」
「千鶴さん、今のハリカー知ったら、たぶんものすごく驚くよ」
「え? 今のってそんなにすごいの?」
ハリカーのトップ画面が現れ、2人プレイを選択。
「瀬戸さん、何ccにする?」
「50ccはさすがにつまんないから、100ccから行こう」
私達は100ccを選択。そしてキャラとカート選択画面に移り、
「キャラが増えてない。16名くらいだったのに24名に増えてる。それにバイクもある!? え!? 三輪まであるよ」
瀬戸さんの言う通り、確かにすごかった。キャラもカートも増えている。
「これってやっぱり小さいキャラほど加速が速いであってる?」
「あってる。そこは何も変わってないよ」
「カートは? バイクとか三輪とかは?」
「バイクはカーブで鋭く回り込みが可能で、三輪は特殊コース向きかな?」
「特殊コース?」
「あとで分かるよ」
と瀬戸さんは含み笑いする。
「でも驚くのはそれだけではないよ」
「まだ何かあるの?」
キャラとカート選択が終了して、次はカップを選ぶ。
「最初は簡単なビギニングカップでいい?」
まずは慣れたいのでビギニングカップを私は希望した。
「いいよ」
そして最初のコースが始まる。カップは全5コースを走る。コース1つ毎に順位によってポイントが得られる。そして最後に最もポイントを取った人が優勝となる。
ビギニングカップ最初のコースとあり、輪のようなコースだ。
そして画面は上下に別けられ、上が私で下が瀬戸さん。最初の順位は下から始まり、私が11位で瀬戸さんは12位。
「え!? 12位まであるの? 8位までじゃないの?」
「キャラが増えたからかな」
しかし、それだとプレイヤーが多くてわちゃわちゃしそうだけど大丈夫なのかな?
「ええと、スタートダッシュって、前と同じ?」
「うん。カウント3と2の間」
「よーし。いっくぞー」
久々のハリカーだ。緊張するなー。
◯
「すごい! 今のハリカーって飛ぶんだ!」
カイトが開き、カートが滑空してる。
さらに空には金のリングがあり、その中を通過するとスピードと滑空時間が上がるようになっている。
「なるほどね〜。これで進んでいくんだ」
Wee時代にはなかった走行。いや航行かな?
まさか滑空するとは驚きだ。
◯
「すごいじゃない。10年のブランクあるって言っても6位だよ」
ビギニングカップが終わり、私は総合6位でフィニッシュ。
「そんなことないよ。てか、瀬戸さん1位だよ」
「私はブランクなしだし。で、どう? 久々のハリカーは?」
「アハハ。いやあ、驚きの連続だよ」
「1番何がびっくりした?」
「やっぱアイテムかな。『アイテム多っ! 何これ知らね』って感じ」
本当に知らないアイテムが多かった。
その中で特に驚いたのがミサイル。巨大なミサイルになって自動で進むんだよ。しかも周りは当たると吹っ飛ぶし。
無敵になるアイテムもあるけど、それの上位互換かな?
他にもガムやペンキなどもある。
ガムは相手を一定時間止めるもので、ペンキは相手の視界を封じるもの。
「次に水中を走るのも驚いたな」
水中での走行はちょっとぶつかったり、何かを踏んだりするとふわふわと浮いて水中を進む。
「あとは壁を駆けたやつかな。 1番上でジャンプ? それで180度回転? なんかもースケボーかよって感じ」
「すごい進化しているでしょ」
「うんうん。すごい!」
「どう? コース覚えたたら1位取れそう?」
「昔の知ってるコースなら」
「なら、このスターライトカップは? Wee以前のコースが多いし。いけるんじゃない?」
「最後のコースは走ったことないから難しそう」
「これと100ccで走ってみようか?」
「やってみよう」
◯
「私さ、ハリカーって嫌いだったんだよね」
急に瀬戸さんがカミングアウトをする。
「どうして?」
「スタートダッシュが分からなくて。聞いても誰もおしえてくれないんだよ」
「へえ」
「だから昔は嫌いだったなー」
「今は好きなんだよね?」
「今はね。ネットでスタートダッシュを覚えたりしたよ。あ、でもイニシャルカーブは習得できなかったな」
「それ私、出来たよ」
「本当?」
「昔だけどね」
イニシャルカーブとは何かの漫画のタイトルから付けられた走法で、カーブ時に天井蓋のない側溝へ曲がる方の前輪を嵌めてドリフトすることである。普段ではハリカー特有のドリフトがあるのでイニシャルカーブは使われないが、180度カーブやループ橋のあるコースで使われることが多い。
「やってよ」
「出来るかな。確か火山のコースだっけ?」
「ボルケーノコースね」
「そうそう。そんな名前のやつ」
そのボルケーノコースは噴火している火山近くを走るコースで、火口から炎を纏った岩が飛び出してきて危険なコース。その最後の直線前にループ橋があったのだ。
それと大抵は3周するのが普通なのだが、このボルケーノコースだけは長距離コースなので1周扱い。
◯
「すごい! 私、初めて生でイニシャルカーブを見たよ!」
瀬戸さんが興奮気味に答える。
「そう? 周りに出来る人はいなかったの?」
「いない、いない。あれって難しいじゃない。私も挑戦してみたけど、途中で側溝からタイヤが飛び出してスピンしてしまうし」
「へー。そうなんだ」
「いやいや、何その『そっかなー?』みたいな顔。普通は出来ないからね」
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