第1話 9番出口

「皆さーん。こんばんわー。赤羽メメ・オルタでーす」


『え、なんで? オルタが?』

『メメちゃんは?』

『間違えた?』

『サムネイル詐欺?』

『タイトル詐欺?』


「実はメメが夏休みの宿題を終わらせてないらしく、今日は私が急遽担当することになりました」


『メメちゃん、駄目だなー』

『夏休みの宿題かー』

『懐かしいなー(遠い目)』

『宿題はしっかり管理しとかないと』


「なので私が今日、流行りのゲーム『9番出口』をしようと思います」


 ゲームをスタートさせると画面に壁が現れた。そして壁には注意事項の紙が貼られていた。


『1、異変があったら戻ること

 2、異変がなければ進むこと

 3、9番出口に向かうこと

 4、異変に接触されないこと』


 隣には0番出口と矢印の看板がある。


「あれ? 9番出口なんだけど? 0番?」


 私は道を進み、角を曲がる。


「なるほど。ここは地下街か」


 そこは細い道で天井、床、壁は艶があり黒い線が入ったタイル模様。


「でも、なんか不安になる道だね。いかにも幽霊とか出そう」


 左壁には時刻表とポスター。右壁には禁煙ポスター、ポイ捨て禁止ポスター、それとドアが3つ。

 道端に監視カメラ。天井に蛍光灯、案内看板とスプリンクラー。床は視覚障がい者用の黄色のマス。


「異変ってことは間違い探しなのかな?」


 まず私は左側の壁に貼られている時刻表とポスター近づいて異変を探す。


「ううん? 時刻表とポスターに間違いがあるのかな? まさか時刻が変わるとかないよね。数字を覚えろとかきついよ。あっ! 女の人だ!」


 脱いだ上着を片腕で持っているキャリアウーマン風の女性が奥から歩いてきた。


「年齢は20代半ばくらいかな?」


 髪型は茶色のショルダーで毛先を遊ばせている。顔はナチュラルメイクで唇はピンク色。


『いかにも男受けしそうな女』

『美人』

『漂うエロス』

『愛人臭がすごい』

『きちんと確認した方がいいよ』


 女の人が現れるとコメントが増えた。


「へえ、きちんと確認した方がいいんだ。持ってるものとかが変わるのかな? 左腕に脱いだ上着を。右手はカバン。顔は無表情……よし」


 女の人を確認した後、ポスターに目を向ける。


「ポスターは前から整骨院、バーガー店、保育園、映画」


 私は一つ一つポスターをしっかり見る。


「バーガー店のポスターには期間限定トリプルマッケンチーズバーガー。……マッケン?」


『マカロニとチーズを混ぜたものがマッケンチーズ』

『海外では有名』


「なるほど。それがマッケンチーズね」


 そのトリプルマッケンチーズバーガー隣にもう一つのバーガーの絵がある。


「それとジャンボバーガー。パティが400グラムだって。でもトリプルマッケンはパティが3つだから、これでも量がすごいよ」


 最後に映画のポスターを見る。若い男女が浜辺で顔を合わせている絵。明らかに恋愛ものってわかるやつだ。


「映画は恋愛ものだね。これがホラー映画に変わるとか? 12月15日公開」


 ポスターの後、右側の壁を確認。


「右側の壁はドアだね。分電盤室、清掃員室、従業員室、最後に消火器と赤いランプっと」


 そして道を進み、突き当たりを左へと曲がり、そしてすぐに右へと曲がると最初の道に着いた。


「あれ? ここって、さっきの……数字が違う!」


 0と書かれた看板が1となっている。


『スタートは0。徐々に数字が上がり、9番が最後』


 私はさらに道を進むとさっきと同じポスターとドアのある道に辿り着く。


「あれ? 同じとこだ? ふむふむ。なるほどね。理解したよ。異変があれば戻って、何もなければ進んで数字が上がるんだね」


『そういうこと』

『頑張れオルタ!』


 私はポスター、ドア、天井、床を見るけどどこにも異変はなかった。


「これも大丈夫なのかな?」


 道を突き当たりを近くまで進むと、スプリンクラーが水を飛ばす。


「ぎゃあ! スプリンクラーが作動した!」


 私は急いでもと来た道を戻る。すると看板は2になっていた。


  ◯


「バーガー店のお肉がネズミになってる!」


 さらにポスターの牛キャラがネズミになってて、ネズミ100%ジューシーパティになってるよ。


  ◯


「保育園のポスターが風俗店になってる。赤ちゃんがおっさん!」


 キモい!


  ◯


「あっ! 女の人がよく見たら男じゃん! おい! オカマだよ! 怖い!」


 顎割れ、青髭のダンディ親父だった。しかも微笑んでいる。


『漂うエロス』

『なんでやねん』

『BL案件まったなし』


「てか、その胸は何? めっちゃでかい! パットか? シリコンか?」


 女性の時はそれほど膨らみはなかったのに、オカマの時はロケットオッパイになってる。


『漂うエロスや』

『なんでやねん』


  ◯


「ぎゃあ! 消火器が爆発して! 煙が! ……白でなくピンク色だった」


 煙がピンク色。

 しかも煙というか粉っぽい?


『意外とピンクだからね』

『古いやつは底を蹴ると爆発する恐れあり』


「へえ、そうなんだ」


 私はコメントを見て、感心する。変な豆知識がついた。


  ◯


「ポスターがホラー映画になってる! やっぱりねー。そうくると思ったよ」


 幽霊は黒髪ロン毛の白ワンピース女で、近くで見ると怖い。


 するとポスターの幽霊と目が合った。


「!? え? 何? 気のせい……えっ!?」


 幽霊が腕を伸ばすと、ポスターから腕がはみ出てきた! そして幽霊は前へ進み、次第に体をポスターからこちら側へと移動する。


「ぎぃゃあー! ポスターから幽霊が抜け出てきた! いやあ! 助けてー! 捕まったー!」


 ダッシュで逃げたのだが、捕まってしまった。


 画面は真っ黒になり、そして最初の0番と書かれた看板に戻る。


「なるほど案内の4番に書かれた接触されないこととは、これのことだったんだ」


  ◯


 女の人に異変があった。


「バッグじゃない。ほ、包丁を持っとるやん! しかも赤い! 血じゃん! あっ! シャッツも赤い! 返り血! 誰か刺した後じゃん。あれ? なんか速くない!」


 早歩きじゃん。こわいこわい!


「ん? なんか、こっちに……向かって……のわぁ!」


 やっぱこっち向かってる! 包丁持ってこっちに向かってるよ!


「ぎゃあ! 捕まった! 刺された!」


 うおい! 何度もグサグサと刺してくるよ!


 そして画面は真っ黒になり、また0番看板からスタート。


「これって、死ぬと0からスタートなの!? うっそー!」


 死んでなくても結局は異変に接触だから仕方ないか。


「また最初からか」


  ◯


 しばらくして体に異変がきた。


「うっ、なんか気分悪くなってきた」


『ゲーム酔いか!』

『このゲーム、酔いやすいからな』

『かくいう俺も』


 自分の異変に負けた私はリスナーに謝罪してゲームリタイアした。


  ◯


 後日、リアル異変にあったVtuberということでバズった。

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