第10話 学校七不思議探検隊④

「あと1つなんだけど。見つからないねー」


 私達は6つの怪異に遭遇し、ミッションをクリアした。

 残すはあと1つだけど、その1つが見つからず困っていた。


「花子さんだと思うんだけどいないねー」

「男子トイレの太郎くん? 次郎くんだっけ? それもいなかったよね」


 学校全てのトイレをまわってみたが、空振りに終わった。


「あとはなんだろう? このままだと埒があかないからコメント見てみようか?」


 と、ツクモが提案する。


「そうだね」

「それじゃあ、リスナーの皆さん、知ってたら教えて下さーい」


 そして私達はコメント欄用のモニターを見る。

 コメント欄には『プールの河童』というワードが多く書き込まれていた。


「プールの河童?」

「なんで河童が? そんな七不思議聞いたことないよ」


 小学校の七不思議なんて覚えてはいないが、たいていは聞いたら思い出すもの。そして知らなくても「ああ、そうなんだ」と納得できるもの。しかし、プールの河童なんてのは初耳だ。


「よく分からないけど、とりあえずプールに行こう」


 ツクモがオカマの太郎子を操作して屋外のプールへと向かう。


 私も後を追いつつ、


「うん。そういえばプールはまだ見てなかったもんね」

「そうだね。行ってなかったね。というかプールの七不思議なんて聞いたことがないしね」

「私も。しかも河童。意味がわからない」


 川に河童は分かるけど。プールはちょっとイメージがつかない。


「河童といえば尻子玉が抜かれるとか?」

「学校の場合は水着?」

「どんなミッションなんだろう?」

「そりゃあ、河童だから……水泳?」

「もしくはきゅうりの早食いかもね」


  ◯

  

 屋外プールに辿り着いた私達。

 プールには水が張ってあり、コメントのとおりに河童がいた。


「マジで河童がいたよ」


 河童に近づくと画面にミッションの文字が現れた。そしてミッション内容が表示される。


「水泳対決か」


 ミッション内容は河童より速く50メートル泳ぎきることだった。


「50メートルってことは一往復?」


 中学以降は片道50メートルだった。ここは小学校だから25メートルで合ってるのかな?


「だね。片道25メートル。だから一往復だね。あっ、説明のとこ、よく見ると一往復って書いてるよ」

「本当だ。見落としてた」


 使用ボタンはLとRボタンの2つだけ。


「カーブがない分、最初のグラウンド一周より楽じゃない?」

「そうだね」


 そして河童とオカマがスタート地点に立つ。


「な、な、な、何これ? 白鳥?」

「アハハハッ!」


 ツクモが操るオカマの太郎子が水着がやばかった。


「アハハ、何それ? や、やばい!」


 股間から白鳥首を生やした女子用スクール水着になっていたのだ。


「やだー。なんで白鳥の首なんか着けてるのよ!」

「ハハッ、な、なんでだろう? アハッ」

「オルタ、笑いすぎ」

「ごめん。オ、オカマに白鳥でやばい。腹がねじれそう」


 というかオカマの太郎子が落武者ヘアーに青髭。そこに白鳥の水着だから、そのミスマッチには笑わずにはいられない。


「よーし、行くぞー」


 ミッションがスタートしてオカマの太郎子が泳ぎ始める──のだが。


「アハハハッ、ヒィッ、ハハッ!」


 私は太郎子の泳ぎに爆笑した。

 太郎子の泳ぎは背泳ぎだった。

 白鳥の頭を前にするため脚を前に頭を後ろになったのだろう。そうなると肩回しも逆になる。


「まったく進まないよ!」


 ツクモが困ったように悲鳴を出す。

 それを聞いて私はさらに笑った。


「だ、駄目、笑わせないで」


 白鳥がちろちろと進んでいく。

 もちろん、そんな状態で勝てるわけもなくツクモは負けた。


「次、オルタの番だよ。てか、笑いすぎ!」


 ツクモが恨みがましい目を向ける。


「ごめんって。私が勝つから許して」


  ◯


 ツクモの後、私が代わりに水泳で河童を倒してミッションクリアとなった。

 そして七不思議を制覇したことにより、ゲームもエンディングを迎えた。


「終わったねー」

「そうだね。なんか全然ホラーではなかったんだけど」


 夜の学校でミッションというミニゲームをしただけでホラー要素はなかった。


 私はちらりとコメント欄を見た。

 もうネタバレもないのでコメント欄を見ても問題はない。


『ホラゲーじゃないよ?』

『全年齢』

『探検だもん』

『アクションゲーム』

『ミニゲーム集』


「……あの、コメントではホラゲーではないって書いてるんだけど」


 私はコメント用モニターを指してツクモに聞く。


「まあ、人によってはそうだよね。ゾンビモノのホラゲーをアクションゲームと言う人もいるからね」

「……」

「で、でも、次の配信ではきちんとしたホラゲーを用意してるから。本当だよ。今日のはちょっとした配信テストみたいなもの。次回は『ゾンビアイランド』! リスナーの皆もお楽しみにね」

「さっき、ゾンビものはアクションゲームとか言ってたよね。アクションゲーム?」

「違うよ。ホラーだよ。襲いかかるゾンビを撃ち倒すんだよ!」


 うん。これはアクションゲームだな。

 まあ、ホラゲーよりアクションゲームのほうがまだましかな。


 前に合宿で5期生の皆と『デイ・アフター・パンデミック』をやったから多少は慣れている。


「それじゃあ、締めとして『おツクモオルター』で締めようか?」

「おツクモオルター?」

「そう。お疲れとツクモとオルタでおツクモオルター」

「……いいよ」

「それじゃあ、せーの……」


 ちょっと恥ずかしいけど。


「「おツクモオルター」」

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