第154話 師匠? 6

僕たちは再びフィールドに向かった。


というか、ようやく説明することができる。ここまで来るのになんでこんなに時間がかかったのか?まあ、僕がなんとかなると勝手に思い込み、準備を怠ったことが原因なんだけどね。


「そう言えば、ヨタ。次は勝手に行動するなよ?」


「えー!なんでだよ!」


「なんでじゃない!それじゃあ、いつまでも説明ができないだろ!説明が終わった後は自由にしていいから」


「わかったよ」


ヨタは、渋々だが、納得してくれた。


というか、なんで僕が下手に出てるんだ?それになんでヨタが上からものを言ってるんだ?


まあ、何か言ってこれ以上話をややこしくしたら、余計時間がかかりそうだったので、ぐっとこらえ、話を進めた。


「そう言えば、おまえらってどんなステータスにしたんだ?」


「えーっと……」


ヨタは何やら、ユニークスキルに続き、言いづらいようだった。


「私は、よくわからなかったから、満遍なく均一にしたよ」


「え?!」


「何よ、何問題でもあるの?」


「結、おまえちゃんと話聞いてたのか?」


「私だってちゃんと聞いてるわよ!」


結が心外とばかりに反論してきた。


「いや、だって今までほとんど聞いてなかったから、聞いていないものとばかり」


「ひどっ!確かにそうだったけど……」


結は、話を聞いていない自覚はあったらしく、言い淀んでいた。


「僕の方こそすまん。勝手決めつけるのは良くないよな」


「そ、そうよ!私だって話くらいちゃんと聞いてるわよ!」


まあ、嘘だと思うけど、今回はちゃんと聞いているようだったから問題ない。それにこんなことをしているから、話が進まないのだ。


「そういうことにしておくよ」


「ちゃんと聞いてるからぁ!」


そんなことを主張してるが、全然説得力がない。


「それより、ヨタどんなステータスにしたんだ?」


さっきは言い淀んでいたが、言ってもらわないと何も言えないからだ。


「俺は攻撃をマックスにした」


「はぁぁぁ」


僕は酷いステータスにため息を吐いてしまった。まあ、僕が言えた立場じゃないけど。僕も俊敏をマックスにしているし。


「な、なんだよ!何か問題でもあるっていうのか?!」


「ああ、問題しかないよ」


「何が問題なんだよ!」


「全てとしか言いようがないんだけど」


僕は、率直な感想を言った。


「俺だって考えがあってこうしたんだよ!」


「ほう?どんな?」


「こうすれば、ユニークスキルのデメリットがなくなって、メリットを最大限活かせるんだよ!」


「そうなん?それでどんなユニークスキルなん?」


「それは、攻撃を10倍にする代わりに他ステータスを半減にするってスキルだ。だから、攻撃にだけ振ればデメリットはなくなるし、メリットだけになるって思ったんだよ!」


確かに、それならデメリットはなくなり、メリットが活かせる。ヨタにしてはまとも考えていて少し驚いた。


でもいろいろ調べた僕からすれば、そんなステータスは良いとは言えない。


「ヨタにしては、考えているようだが、それはやめた方が良い」


「なんでだよ!これ以上に良いのがあるのかよ!」


「それより良いか、ないのかの問題じゃないんだよ。ステータスに0があるのが問題なんだよ」


「どういうことだよ」


「簡単に言うと、このゲームに加算がなくて全て乗算で計算するからだ」


「かさん?じょうさん?」


ヨタは、その言葉に聞き覚えがないのかそんなことを聞いてきた。ほんと呆れてしまった。


「足し算と掛け算だよ」


「そ、そんなこと、し、知ってるし」


ヨタは声を震わせながら言っていたため、全然説得力がなかった。別に加算とか乗算とか知ってなくてもそこまで困ることもほとんどない。


「つまり全ての計算が乗算で行われるから、最初から0だと、以降絶対に上がることはないんだよ」


「え?そうなの?」


ヨタはそのことが意外だったのか、間抜けな顔をして、聞いてきた。


「ああ、そうだ」


「じゃあ問題なくね?」


「え?」


僕はヨタが問題ないと言えるのかわからなかった。


「だって、一撃で倒せれば、他のステータスなんていらなくね?」


確かにそうだ。僕だって、現在そんな感じだし。理にかなっていると言えば、確かにそうかもしれない。


「確かにそうだな」


「だろ?なら、別に良いだろ?」


「それでも、僕はそれはやめた方が良いって言うよ」


「なんでだよ」


「システム的なところの話なんだけど。このゲームってシステムダメージって言うのと損傷ダメージがあるんだよね」


「システム?損傷?なんだよ、それ」


「うん、私も気になる」


結もこのことは気になったのか、話に混ざってきた。


「えーと、システムダメージっていうのが、HPだけを削るものだ」


「うん、普通そうじゃないの?」


「確かに、それ以外に何があるんだ?」


「まあ、これは普通だよな。それで損傷ダメージっていうのが、簡単に言うと部位破壊みたいなものかな」


「それって、何?普通じゃね?」


確かにその通りだなと言っていて思った。


「うーん、説明が難しいんだけど、システムダメージだと、HPを1割も削れないんだよ。でも損傷ダメージだと、それ以上に削れるってことかな」


「うん?」


「??」


2人ともよくわかっていないようだった。このあたりは僕もしっかりと理解をしているわけじゃないからな。


僕が説明していると、僕たちは再びフィールドに戻ってくることができた。













  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る