第168話 増員 9
「零さんのおかげでいつもより、早く終わりました!ありがとうございます!」
「いや、別に、大した、ことは、して、ないよ」
僕は、息切れをしていた。普段ここまで動くことがないからだ。しかし、あずさがこんな重労働をいつもしていたと思うと素直にすごいと思った。あずさにこんなことをさせていたと思うと、ひどいことをさせていたなと感じた。
というか、自分の体力が無くて情けなくなってしまった。たかが、数メートル程の距離を数時間ずっと往復しただけで、ここまで疲れてしまうとは。
「ぜ、零さん、大丈夫ですか?」
あずさは僕のことを心配してくれていた。それが、僕は嬉しかった。
「ああ、大丈夫、だよ」
少し落ち着いたが、まだ疲れは取れなかった。
「でも、その、苦しそうに見えます」
「ああ、大丈夫、だから、心配、しないで」
僕は、そうあずさに言ったが、あずさはまだ心配しているようだった。
「本当に大丈夫ですか?今日、連れてくるのをやめますか?」
「いや、そこまで、する必要は、ないよ。それに、それだけ時間が、経てば、問題、ないよ」
「そうですか」
「ああ。それに、もう、行って良いぞ?」
「いえ、片付けだけは、してから行こうと思います」
「それくらいは、僕の方で、やっておくよ」
「いや、でも」
あずさは、何か心配なことでもあるのか、食い下がっていた。
「だから、問題ないから」
「でも、零さんって、何もできないじゃないですか」
「ぐっ」
僕は、あずさにそんなにはっきり言われるとは思わなかった。それに、やっぱり僕って使い物にならないんだと実感もし、落ち込んだ。
「あっ、いえ、そういう意味では無いですよ!零さんがいないと、ポーションを売ることもできませんし」
あずさは、僕が落ち込んだことに気づき、フォローになってないフォローをしてくれた。
「まあ、あずさが、言っていることも、事実だし、気にして、ないよ。それに、僕だって、何もできないままは、いやだから、僕1人で何とか、するよ」
「そうですか」
「そうだ、だから、こっちのことは、気にしないで、行ってきて」
「……やっぱり、片付けをしてから、行きます」
「いや、心配はいらないから」
やはり不安なのか、僕のことは信用してくれなかった。
「それに、今日は普段より疲れてないですし、呼びに行くだけですから、片付けしてからでも全然問題ないです」
「でも——」
「問題ないです」
「は、はい」
僕は、あずさの勢いに押される形で、それを認めた。
それからは、やはりというか、僕のやることは何もなかった。僕のできることはなかったという方が正しい。
それが、終わると満足したのか、あっさりと出て行った。
それが、僕ってこういうことは信用されてないんだなと実感させられた。僕は、少しはできるようにならなくては、思った。
自分なりにやれることを考えたが、何をすれば良いかはわからないので、結局ポーションを作ることことくらいしかできないことがわかった。
それがわかると僕は、あずさが帰ってくるまでの間、ずっとポーションを作って、時間を潰した。
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