第169話 増員 10
あずさが出て行ってから約1時間後、コンコンと扉を叩く音が聞こえた。
僕は、それにうんざりしていた。
あずさが出て行ってすぐに店を閉めた。ただ、普段よりも早かったため、閉めた後にもポーションを買いに来た客たちがいたのだ。中には、あずさが目当てみたいな客もいた。
そんな客たちが合計で10人以上も訪れていたのだ。まあ、ポーションを買いに来た人には、普段より早く終わりにしてしまったという申し訳なさから、その場で売ったりしていた。
しかし、許せない客たちがいた。ポーションを買いに来たというから、ポーションを売ろうとしたが、あずさが居ないことがわかると、何も買わずにそのまま帰って行ったのだ。
そんな客が意外と多くて、扉が叩かれるだけで、少しうんざりしていたのだ。まあ、訪れてくる客全員に対して、うんざりしているんだけどね。看板も変え、今日の営業は終わったことを伝えているにもかかわらず、扉を叩くからだ。さすがにマナーを守ってほしいと思う。
でもそんな態度は取れないので、表面上だけは取り繕って対応していた。
僕は、また非常識な客かと思い、少しイライラしながら扉を開けた。
「今日は、もう——」
「零さん、ただいま戻りました!」
と、予想に反して扉を叩いていたのはあずさであった。
「ん?あずさか。ほんとに早かったな」
早いとは言っていたが、確かに1時間は早いと思った。最初なんて半日はかかると思っていた程だ。それと比べればかなり早い。
「はい!急ぎましたから!」
「いや、これだけ早いなら、もっとゆっくりでも良かったぞ?」
「いえ、そういうわけにはいきません!——」
僕は、あずさといつも通り会話していたが、それ以上に気になっていることがあり、あまり集中できていなかった。
というのも、あずさの後ろにいる女性が気になってしょうがないのだ。
見たところ、彼女があずさの紹介してくれる人だろう。ただ、予想よりだいぶ違っていた。僕の予想では年齢はあずさくらい、もしくは僕と同じくらいと思っていたからだ。しかし、実際は僕よりもだいぶ大人びていた。見たところ20代前半とかそんな感じだ。なんとなくお姉さんという言葉が合いそうな人だ。
容姿は、黒髪で腰のあたりまであり、美しい顔立ちをしていた。モデルのようにスタイルも良かった。最初のあずさみたいに自信がない感じはせず、堂々としていた。服は長年使い続けているのか、くたくたになっていた。ただ、身なりは整えようとした形跡はあるが、急いでいたのか、おかしくなっているところがあった。
後、誰かに似ているような気がしたが、そんなことを考えている余裕はなかった。
「あの、やはりおかしかったでしょうか?」
僕がずっと見ていたせいで、変な誤解を持たれてしまった。
「い、いえ、そんなことはありません!」
「それなら、良かったです」
急に話しかけられてしまい、少し言葉が詰まってしまった。まあ、こんなお姉さんと話す機会なんてないから緊張していたというのもあった。
「だから、大丈夫って言ったでしょ、お母さん」
「ええ、そうね」
「え?」
僕は、緊張していたが、大事な単語だけは聞き逃さなかった。
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