第153話 師匠? 5

僕たちは、ギルドに行った後、武器店に向かった。


武器店に近づくといつものように、カンカンという音が聞こえてきた。


僕は、武器店に着くとすぐに入ろうとした。すると、ヨタが話しかけてきた。


「零、目的の場所ってここなのか?」


「?ああ、そうだけど?」


僕はヨタが言っていることの意味がわからなかった。


「違う店にしないか?」


「なんで?何か問題でもあるのか?」


僕はますます意味がわからなくなった。


「だって、こんな人気もないようなところにある店って怪しいじゃん」


僕は、ようやくヨタの言いたいことがわかった。確かに、僕自身が他人の目を気にしてこの店を見つけたからな、そりゃあ、人気のない場所だよな。


「ああ、確かに人気のない場所だな。でもそういうところの方が意外と穴場だったりして、良い店だったりするんだぞ」


僕は、それっぽいことを言っているが、実際この店が良い店かはわからない。まあ、僕の変な要求も聞いてくれたから、それなりに良い店だとは思うが、実際どうなのかはわからない。


「まあ確かにそうだけど」


「それに、僕はこの店しか知らん」


「お前、もう少しいろんなところへ行けよ」


「べ、別にそんなことどうでも良いだろ!」


僕は、ヨタに最もなことを言われ、言葉につまってしまった。


「いや、良くはないだろ。それにそれだとこの店が良い店かなんてわからないだろ」


「うぐっ、確かにそうだけど」


「だろ?それなら、ここじゃなくて他の店に行こうぜ?な?」


他の店に行くのは、僕としては、嫌だからなんとしても阻止したいところだ。


「で、でも、ここまで来たんだし、他の店に行くのは大変——」


「そんなの別に気にしないよ、な?結」


「え?あ、うん、私は別にどこでもいいよ」


結は、まだ満足してなかったのか、また妄想に浸っていたらしい。


「お前、またか」


「またって、別に話を聞いてなかったわけじゃないから!別にいいでしょ!」


「わ、わかったから、落ち着けよ」


と、逆ギレしてきた。なので、僕はなんとか落ち着かせようとした。


「いらっしゃいませ!」


と、僕たちが外で騒いでいたためか、店主のドワーフが出てきた。


「騒いでいるから、出てきたじゃねぇか」


「もう、諦めろよ」


ヨタは、声を潜めて言ってきた。


僕としては、展開は嬉しかったから、ヨタを諦めさせようとした。


「お客様、今日はどういったものをお探しで?」


「いえ、俺たちは、ただ通りかかっただけなので」


まだヨタは諦めてなかったのか、そんなことを言った。


「え?そうなんですか?って、変なお客さんじゃないですか」


店主がようやく僕のことに気づいて話を振ってくれた。


「変とは酷いですね」


「も、申し訳ありませんでした!」


「いえ、別に気にしてませんから」


「あの、帰らないでください!本当に帰らないでください!」


と、いい歳の男が僕に縋りついてきた。


「わかったから、離してください!」


「あ、申し訳ありませんでした」


と、すぐに離してくれたから良かった。


「こんな感じなんだが、それでも帰るのか?」


「やめてください!ようやく来てくれた人なんですから、買ってくれるまで帰しませんから!そうしないと、私、飢え死にしてしまいます!」


「とのことだが」


「う、わかったよ!ここでいいよ!」


「あ、ありがとうございます!これでなんとか生きていけます」


「結もそれでいいな」


「うん、私は別にここでも良かったから」


「それでは、ささっ、中にどうぞ!」


と、さっきまでの悲壮感は何処へ?と思うほど、店主が元気になっていた。そんなに嬉しいのかと言うほどだった。


僕たちは、店主に勧められるように店に入って行った。


「それで、本日はどのようなものをお探しで?」


「えーっと、この2人の装備を整えたいんだけど」


「ということは、武器と防具ですか?」


「ええ、そうです」


「今日は、普通のものなんですね」


「普通のものって、どんなもの買ったんだよお前」


ヨタが僕の買ったものが気になったのか、そんなことを聞いた。


「それはですね——」


「それは、言わなくて良いから!」


「え?ですが——」


「言わなくて良いから。言ったら、何も買わずに帰る」


「申し訳ございませんでした!絶対に言わないので、それだけはやめてください!」


店主が腰を90度曲げ、謝ってきた。


「わかったから、早くしてくれ」


「はい、わかりました!」


「いや、俺は納得してないけど?」


「話がややこしくなるし、お前が納得してないなら、買わないだけだから、別に僕は気にしないよ?」


「それに私が帰しませんから」


と、店主は帰す気がないらしい。僕としては嬉しいが、必死すぎる気もする。


「わかったから。こいつらは気にしないでくれ」


「それでは、どんな装備が良いですか?」


「そうだな、初心者でも扱いやすいものが良いな」


「そうですか、それでは少し待っていてください」


「って、俺を無視するな!」


ヨタは、まだ納得してないようだった。良い加減諦めてもらいたいところだ。


さっきから、ヨタは騒ぎ続けている。それに比べて結は、静かだった。


しばらくして、店主が装備を持ってくると、ヨタは装備が気になるのか、文句を言ってこなくなった。


「おお!」


ヨタが馬鹿で良かったと思った。


店主が持ってきた装備は、重装備ではなく、軽装備だった。いろんな種類があり、ヨタはそれを興奮しながら、見ていた。


「そう言えば、お二人はどんな武器を使うんですか?」


店主はそんなことを聞いてきた。


「そうだな、俺はとりあえず剣が良いかな」


「私は……何がいいかな?」


「おい、それは今はテキトーで良いから!わからないなら、杖とかで良いから!」


僕は、結が縛魔法っていうユニークスキル持っていることを思い出し、武器に魔法に必要そうなもの、杖を提案した。


「そうか、なら私は杖でお願いします」


「わかりました。それでは、持ってくるので、防具を選んでいてください」


それから、ヨタと結は店主が戻ってくるまで防具を選んでいた。


ヨタが選んだのは、派手なものだった。それと比べ、結が選んだのはシンプルなものだった。


剣と杖はあまり種類がなく、すぐに選ぶのが終わった。


「合計で20万ゴールドになります!」


「え?高くない?」


ヨタがそんなことを言った。


「は?そんなものだろ?」


「いやいや、俺たち最初に1万ゴールドしか貰ってないんだぞ?!それじゃあ、装備を整えられないだろ?!」


「お前が武器を壊してなければ、最初はそれである程度稼ぐんだよ。ステータスは振り切れているからな、ほとんど危険なんてないからな。だから、問題ないんだよ」


僕はお金を払い、2人はさっそく防具を着てみていた。その着心地に満足していた。


買うものも買えたので、僕は帰ることにした。


「ありがとうございました!」


帰るとき、店主がずっと頭を下げていた。そんなに嬉しかったのかと思うほどだ。


これでようやく進められると思うと、なんか疲れてしまった。いろいろなことがあったからな。






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