第152話 師匠? 4

僕たちはフィールドに出てから、人気の少ない場所を目指した。別にもう変な戦い方をしないから見られても問題はないんだけど、今まで人に見られないようにしてきたから、なんとなく見られていると落ち着かないからだ。


フィールドに出た辺りから、ようやく結も落ち着いて、僕の話を聞いてくれるようになった。それまでの話をどこまで聞いているかわからないけど。また説明するのも面倒なので、詳しく説明することはない。


移動している間は何をすれば良いかを話した。例えば、ギルドでクエストを受注して、ランクとレベルを上げるとか、グループに入って恩恵を受けるなど、進める上で必要なことを教えていた。それとシステムのこととかだ。そのため、結への説明を省いても問題はないはずだ。


そうして、結への説明は、結が聞いていたものとして省くことが決まった。質問されたら答えれば良いしな。


それに、妄想に浸っていた結が悪い。そういうことにしておいた。


フィールドに出てからそんなに離れていないところで、僕たちはモンスターに遭遇した。人気のないところでモンスターを狩ろうと思っていたが、思いの外早くモンスターに遭遇してしまった。モンスターは少し距離が離れていたため、こちらに気づいていないようだった。


「零!モンスターだ!倒していいか?!」


と、ヨタが興奮しながら、聞いてきた。


このままヨタに任せても良いが、ちょうど良いと思い、説明を兼ねてこのモンスター、ゴブリンを狩ることにした。


「待て、僕が——」


僕が静止を促す前にヨタがゴブリンに向かっていき、一撃で倒してしまった。


「ん?何か言ったか?」


ヨタは不思議そうに聞いてきた。


僕は、ヨタが馬鹿だったことを思い出し、後悔した。別にモンスターならいくらでもいるから関係ないんだけどね。


僕は面倒と思いながらも、説明するためにヨタのいるところへ向かった。


僕はヨタの近くに行き、驚いた。


ゴブリンの居たと思われるところにちょっとしたクレーターができていたからだ。


「ヨタ、これお前がやったのか?」


僕は驚いていたため、そんな風にしか聞くことができなかった。正直、こんなものは上位プレイヤーからすれば、当たり前にできることなのだが、ヨタができるとは思わなかったのだ。


「ああ、俺もここまで力があるとは思わなかったな」


ヨタも驚いているようだった。ここで僕は初めてヨタの姿を確認したのだが、それが更に酷かった。


「ってか、お前血まみれじゃねぇか!」


ゴブリンの返り血でヨタが血まみれになっていたのだ。


「え?うわっ!なんだこれ!」


そこで、ヨタも自分の姿を初めて確認したらしく驚いていた。


「え?ヨタ大丈夫なの?!」


結も追いついたらしく、ヨタのことを心配していた。


「ああ、返り血だから、俺自身は問題ない」


「そう、良かった」


「だから待てって言おうとしたのに」


「言うのがおせぇよ!」


「お前が僕の指示を聞く前に突っ走ったからだろ!」


「うぐっ」


僕の指示を聞いていなかったことはわかっているらしく、反論はしてこなかった。


「まったく僕の言うことを聞いていれば、こんなことにならなかったのに。はあ」


僕、思わずため息をついてしまった。


「うっ、で、でもなんでこんなことになったんだ?」


「ああ、それは……また後で説明するよ」


「なんでだよ!今すぐ教えろよ!」


「説明することが多いんだよ。それを説明するにはいろいろやることができただけだ」


「なんだよ、やることって」


「それは、装備を整えることとお前の体をキレイにすることだよ」


「別にこれくらい問題ないだろ?」


ヨタは自分の血まみれの体を指しながらそんなことを言ってきた。


「ああ、問題はないよ。でもその装備はどうにかしないとだめだろ!」


僕は、ヨタが右手に握っている木っ端微塵になった初期装備の木剣を見ながらそう言った。


ヨタも僕の言葉ようやく、木剣が木っ端微塵になっていることに気づいた。


「うわっ、なんだこれ?」


「木剣だろ?」


僕は当たり前のことを言った。


それと僕は、自分の甘さを反省した。説明するだけだから、装備は買う必要がないと思っていたからだ。それに、ステータスも振り方を変えると思っていたから、装備を買うのはもったいないと思っていた。でも僕ってお金を腐るほど持っているのだ。これで消費するくらい問題なかったのだ。


それよりも、いろんなことを想定して、装備は整えておくべきだったのだ。そのため、このまま進むのではなく、一旦戻り、装備を整えつつ、ついでにヨタの血まみれの体もキレイにするということだ。


「でも、装備を整えるって言っても私たちほとんどお金を持ってないよ?」


「ああ、それなら全部僕が払うから問題ないよ」


「え?それは悪いよ」


「別にお金なら、余りまくっているから全然平気だよ」


「そうだよ、零がこう言ってるんだ。遠慮することなんてねぇよ」


ヨタは悪いと思ってないのか、気にしていなかった。


「まあ、遠慮されても困るだけだし、それくらい遠慮ない方が楽なのは確かだけど、お前は少しは遠慮しろよ」


「まあ、そういうことなら」


結も渋々と言った感じだが、納得はしていた。


僕たちは、フィールドに出て数分で街に戻ることになった。



街に戻った僕たちは、まずギルドに行き、ヨタに水浴びをさせ、それから武器店に行くことにした。行くところは前にお世話になっていた妙に態度が低いドワーフがいるところだ。

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