第151話 師匠? 3

フィールドに向かう途中も、いろいろと話しながら歩いた。


「そう言えば、よくわかったな」


僕は疑問に思っていたことを結に聞いた。


「それは、リアルとほとんど変わってなかったからね」


「ああ、確かに髪の色くらいしか、いじってなかったな」


特に容姿のことに気にしてなかったし、リアルと違いすぎるとこの2人になんて言われるかわからないからな。まあ、僕からは自分の容姿なんてどうなっているのかほとんどわからないけど。


「ほんとお前らは容姿に無頓着というか。こういう場なんだから、もっといじれば良かったのに」


そう言うのは、リアルとだいぶ見た目の変わっている誠——ヨタだ。


リアルでもかなりのイケメンなのだが、こっちではリアルとは違うイケメンになっていた。


「単純に着飾りたくないだけだよ。それにリアルと変えたら、お前らにいじられそうだったからな」


「ちっ、いじってやろうと思ってたのに。まあ、変えてないところを逆にいじればいいから問題ない!」


「いじるのは確定かよ」


「というか、いじられないとでも思っていたのか?」


「いや、なんとなくそんな気はしていた」


と僕とヨタだけで話が盛り上がった。僕は会話に混ざってこない結が気になり、後ろを振り向いた。

後ろでは、結が表情を崩しながらこちらを見ていた。なんとなく涎を垂らしている幻覚見える。


結は僕が振り向いたことに気づき、慌てて表情を戻していた。


「ど、どうかした?」


結は動揺しながらなんとか聞き返していた。


「いや、何も話さないから、ちゃんと着いてきているかなと思って」


「あ、ああ、大丈夫。ちゃんと着いて行ってるから。私のことは気にしないで、2人で話してて」


「いや、そう言っても、結も聞いておいてほしいことがあるんだけど」


「大丈夫!ちゃんと聞いているから!」


と力強く返されてしまったので、それ以上言うことが躊躇われた。


その後も結はほとんど会話に混ざらず、僕たちのことを見ていた。


おそらく僕とヨタでカップリングでもして妄想に浸っているんだと思う。まあ、わからないでもない……こともないわ。というかわかりたくないわ。


確かに容姿が変わった。それにリアルではなくゲームだ。だから羽目を外すのはわかるが、それだけはやめてもらいたい。でも変なところで妄想に浸られるもの面倒なので、十分妄想させてやる。


本当に去年が酷かったからな。僕と誠が知り合った当初は、結が妄想しまくって大変だった。それでも最近はそういうこともほとんどなくなったから気にしていなかった。こんなところで妄想を始めるとは思わなかった。


それから、結のことを気にしながら歩いて行った。


「そう言えば、ステータスの振り方でオススメってあるん?」


「うーん、そうだな。一番はユニークスキルに合わせるのが良いよ」


「そうか」


「そう言えば、ヨタお前のユニークスキルって何なんだ?」


「俺は……後で言うよ」


「別に後じゃなくても良くないか?」


「今、言いたくないだけだ」


何か隠しているようだが、それが何かは分からなかった。


「そうか。まあ、そういうことならわかったよ」


それから僕は振り返り、結にも聞いた。


「結、お前は何なんだ?」


「え?あ?はい。何?」


「何って、聞いてなかったのかよ」


僕は呆れていた。やっぱり妄想はやめさせた方が良かったな。


「いや、聞いてなかったわけじゃないよ。えーと、えーと、そうユニークスキルについてでしょ!」


「ああ、そうだが」


と意外にも聞こえていたらしい。でも、少し怪しい気もする。


「私のユニークスキルは、縛魔法だよ!」


「ばくまほう?」


僕は「ばく」がどんな漢字かわからず、聞き返した。


「縛るって書いて縛だよ」


「ああ、なるほど」


僕はそう言われ、ようやく理解することができた。しかし、それがどういった魔法なのかいまいちわからない。


「それってどんな魔法なんだ?」


「さあ?」


「さあ?ってわからないのかよ!」


「うん。わからないよ」


そう潔く言われるとなかなか強くは言えなくなってしまう。


「はあ、そうか。それなら後で確認するぞ」


「はーい」


結はそんな気の抜けたような返事をした。


「そう言えば、さあ、システムってなんだ?」


ヨタが唐突にそんなことを聞いてきた。


「システム?」


「ああ、さっきギルドでシステムの説明をしますかって聞かれたんだけど、零から聞けばいいやって思って聞かなかったんだけど。なんのことなんだ?」


僕はその聞きなれない単語に少し戸惑ったが、最近調べた内容にあったのを思い出した。


「それは、街の建物とかが壊れないってものだ」


「それってどういうことだ?」


「つまり、どんなに攻撃しても傷も付かなければ、崩れたりもしないってことだ。まあ、それでも劣化はしていくみたいだけどね」


「へえ、そんなこともあるのか」


そんな会話をしているうちに僕たちはようやく街を出られた。








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