第150話 師匠? 2

ギルドでいつもようにポーションを売り終わる頃には、待ち合わせの時間になっていた。


待ち合わせはこのギルド前ということにしてある。チュートリアルがこのギルドで終わるからだ。まあ、僕がチュートリアルをやったのはだいぶ前だが、今も内容は変わってないみたいだった。


これでも結と誠に頼まれたから、一応攻略サイトを見て調べたのだ。今までは見ないようにしてきたが、曖昧な情報を2人に言うのはダメだと思ったからだ。


それで、今もチュートリアルの内容は変わってないことを知ったのだ。それと調べていくと、僕はほんとに面倒なことをしていたことを知った。もっと早くに知っておけば良かったと思うこともあったが、今の僕じゃどうしようもないこともあった。まあ、過ぎたことなので諦める。それに、今が楽しいから問題ない。


とりあえず、2人に合流するため、ギルドの前に来た。しかし、人が多くて2人を特定するのは大変そうだった。


僕がそのことに困っていると、後ろから声をかけられた。


「俊?」


そう短く聞かれた。しかし、リアルでそう呼ばれ慣れているため、僕は反応し、振り向いてしまった。


「ん?……あっ」


僕はこれがゲーム内ということを思い出した。僕は、リアル名を明かしたみたいになったことを反省し、次からはこんなことにならないように心がけた。


振り向いて声をかけてきた人を確認してみた。後ろには、黒髪でセミロングほどの可愛らしい女の人が立っていた。背は僕の肩くらいしかなかった。ただ、その顔立ちはどこか見覚えがあった。


「えっと、結か?」


「うん、そうだよ」


というか、僕のことを俊という時点でなんとなくわかっていた。それに見た目が眼鏡を外しただけの結、そのまんまだったからだ。


ただ、僕は結に言わなければならないことがあった。


「それより結、僕をリアルの名前で呼ぶな」


「そんなこと言うなら、俊だって私のことリアルの名前で呼んでるじゃない」


「うぐっ、すまん」


僕は、素直に謝った。僕の方が長くやっているのだ、僕自身そのことに気をつけなければならなかった。


「それならまず、名乗らないとな。僕は、零でやってるよ」


「零、か。ふーん。零はなんでその名前にしたの?」


「べ、別にそんなのどうでもいいだろ!それよりはお前の名前はどうなんだよ!」


僕は、自分の名前の由来言いたくなかったため、話題を変えることにした。


「私は、結だよ。よろしくね」


「結か、って、それリアルと変わらないじゃん!なんで僕はさっき怒られたの?!」


「なんとなくかな?」


「なんで疑問形なんだよ」


僕は、結にからかわれていた。しかし、いつも結には振り回されるので、今更ではある。


「お前ら、相変わらず仲が良いな」


と、僕らの騒ぎで誰かが近づいてきた。そいつは茶髪の爽やか系のイケメンだった。


「お前にはそんな風に見えるのかよ、誠」


「おい、俺の名前も普通にバラしたんじゃねーよ!」


「そんなこと言ったって、こっちでの名前なんてしらないし。そうだよな、結?」


僕は、結に同意を求めた。


「うん、確かにそうだね。それに本人かどうかも確認したかったし、別にいいでしょ?」


「まあ、そう言うことならいいのか?」


本当はこんな人の多いところでは良くないが、本人が納得しているみたいなので、気にしないことにした。というか、馬鹿で良かった。


「それでお前はなんて名前なんだ?」


「俺か?俺は、ヨタだ!」


「ヨタ?なんでそんな名前にしたんだ?というかそれって、単位の名前だよな?」


単位と言ってもキロ、メガ、ギガ、テラ、ペタといったくらいを千倍にするときに使う単位だ。


「そうだけど、何か問題でもあるのか?」


「いや、結に比べればないよ」


「そんなに私の名前駄目なの?」


そんな言い方が気に入らなかったのか、結が反発してきた。


「別に駄目じゃないよ。本人の自由なんだからな。まあ、限度はあるけどな。それより、移動始めないか?」


僕らはさっきから騒ぎ過ぎたため、周りから注目を集めていた。そのため早くここから立ち去りたかったのだ。


「ああ、そうだな。でもこれからどこに行くんだ?」


「一応、フィールドに出ようかなと思っている」


本当は、店の僕の部屋とかでいろいろ教えていきたいのだが、チラッと店の方を見たがものすごい行列ができていたので、諦めることにした。あの中をかき分けて進む勇気はない。


「おお!モンスターと戦うのか?!」


「まあ、そういったこととかを教えていこうかなと思っているよ」


「でも危険なんじゃ」


結が、心配そうに聞いてきた。


「心配ないよ。余程変なステータスの振り方をしてない限り、この辺りじゃ問題ないよ」


そうして僕たちは、その場から逃げるようにフィールドに向かった。














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