師匠編

第149話 師匠? 1

翌日の朝、僕はログインして、ポーションを補充したら、すぐにログアウトした。あまり時間がないというのもあるが、昨日のことがあったので、あずさにどんな風に声をかければいいかわからなかったのだ。


僕は、すぐにログアウトすることを考えていたので、あずさともあまり会話をすることはなかった。会話、と言ってもただ挨拶をしたくらいだ。


あずさも昨日のことを気にしているのか、あまり話しかけてはこなかった。そんなわけで、何も解決することはなかった。むしろ悪化してるとも思えた。


早く仲直り、というより普通に話せるようには戻らないといけないと思った。このまま気まずい状態じゃ、駄目だからな。


それに、今日からは結と誠がゲームを始めるのだ。そっちのことも考えておかないといけない。


僕はそんな悩みを抱えた状態で、夏休み最後の補習に行った。当たり前だが、集中することはできなかった。


半日考えたが、いいアイデアは見つからなかった。


帰りにも考えていたが、結と誠、特に誠から、今日からだからな!サポート忘れるなよ!と念を押されてしまった。2人ともすごく楽しみにしているみたいなので、そちらを疎かにすることはできない。


そういった経緯で僕はどんどんと余裕がなくなっていった。


結局何も答えは出ないまま、家に帰って来てしまった。そのまま家で考えていても、時間が過ぎていくだけなので、ログインだけはしておくことにした。それに、リアルで午後3時、ゲーム内で午前の9時頃にギルドの近くに行き、2人に合流することになっているのだ。そうなると、こちらの問題は早めに解決しておかないといけない。だから時間に余裕はないのだ。


まあ、何も気にせず今まで通りに接すればいいだけのことなんだけどね。それがうまくいけば、いいけど。うまくいかなったときが問題なのだ。


僕は、不安を抱えたままログインした。時間はまだゲーム内で午前の3時頃だ。




ログインすると外は暗かった。僕は早く来すぎたと思ったが、ポーションを作りながら、解決策を考えればいいと思い、店の方に降りて行き、ポーションを作り始めた。


しかし、どれだけ考えてもいい言葉は見つからなかった。外も少しずつ明るくなってきて、あずさが起きて来る時間になった。


「おはようございます!」


「っ!?」


僕は考えていてため周りに気を配れていなかった。そのため急に話しかけられて驚いき、座っていたイスから落ちてしまった。


「だ、大丈夫ですか?」


「あ、ああ、大丈夫だ」


「はあ、良かった」


あずさは昨日に比べて、ぎこちなさがなくなっていた。昨日はどことなくよそよそしいと言うか、僕の反応を気にしているようだったが、今はそれがなくなっていた。


昨日1日で何があったのか僕にはわからないが、あずさの方はもう気にしている様子はなかった。


「零さん、今日も早いですね」


「あ、ああ、まあ、今日は外せない予定があるからな」


「そうなんですか。それっていつものギルドでの予定ですか?」


「い、いや、それとは別だ」


僕はどことなくぎこちなかった。それは、単純にあずさが普通に話せていることに驚いているのとあずさに急に声をかけられて、呼吸が整っていないからだ。


「零さん?一昨日のことを気にしているんですか?それなら、気にしなくて大丈夫ですよ?そもそも私が気にし過ぎていたのが悪かったんですから」


「いや、そのことより別ことが原因だよ」


「え?そうなんですか?じゃあ、何が?」


「お前の変わり様に驚いているのと、お前が急に後ろから声をかけたからだよ!」


僕は、少々冷静さを欠いていたため乱暴な言葉になってしまった。


「ご、ごめんなさい」


僕はすぐに冷静さを取り戻し、言い方が強かったことに気づいた。


「いや、すまん。僕が強く言い過ぎたよ」


「いえ、昨日あんなにぎこちなかったのに、こんなに変わっていれば、驚きますよね。それに考え事をしていたみたいなのに、後ろから声をかければ、驚きますよね。もっと私が気をつけていれば良かったです」


「え?いや、そこまでしろとは言わないよ?!」


何と言うか僕が横暴な奴みたいになっていた。それより、そこまで気づいていることに驚いた。


「いえ、気づいていたことなので、私が気をつけた方が良いんです」


こうなると、あずさは僕の話を聞いてくれないので、もう諦めることにした。


「そうか、ならなんでそんなに普通に話せるようになったんだ?」


僕は気になっていたことを聞いてみた。


「それは、その私のせいでお客様が減るって思ったんです。それで、捨てられると思っていたので、昨日は落ち込んでいたんです」


僕は、予想外の答えを聞いて心配していのが馬鹿らしくなってしまった。


「そんなことかよ」


「そんなことって私にとっては大切なことなんです!」


「違うよ。僕はが言いたいのは、お前を捨てたりしないってこと。前から言っていると思うが、儲かりたいのが目的じゃないから」


「そうかもしれませんが、私はその言葉に甘えたくないんです。その言葉に甘えれば、私はダメになってしまいそうですから」


なんか、僕が考えている以上に真剣に考えていた。僕がテキトーに考えているのが申し訳なくなってくるほどだ。


いつの間にか僕も普通に話せるようになっていた。しかし、僕がそのことに気づくことはなかった。


それから、僕は結と誠と会う前にギルドでポーションを売っておこうと思った。今日は、2人に会った後、ギルドに行けそうになかったからだ。


少しあずさと話した後、僕はギルドに行くことにした。


「あずさ、僕はそろそろギルドに行こうと思うから、後のことは任せるが、大丈夫か?」


「はい!大丈夫です!任せてください!」


といつも以上の力強さで返事が返ってきたので、僕は後のことを任せ、ギルドに向かった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る