暴動編

第85話 魔王討伐の影響

翌日、特に何も考えずにログインして、ギルドに向かった。


ギルドに入った瞬間、こちらに注目が集まった。何事かと思っているとそこにいた人が全員こちらに向かってきた。


その異常な光景に困惑していると、すぐに囲まれたしまった。


ちょっと怖いと感じながらどうやってここから脱出しようと考え始めていた。しかし、そんなこと考える暇はなかった。


「私の——」

「俺の——」

「僕の——」


「「「「グループに来てください!」」」」


そこにいた数十人の人にそう言われてしまったからだ。


「えーと……」


こっちが考えているのに、そこにいた人たちは、口論を始めた。


「おい!僕が最初に話しかけたんだ!おまえらは後からにしろ!」


「はあ?何言ってんの?私の方が先だったわよ!あんたが後からでしょ?」


「零さん、是非うちのグループに——」


「おい!勝手に抜け駆けしてんじゃねぇ!」

「おい!勝手に抜け駆けしてんじゃないわよ!」


とこんな感じに口論が始まってしまった。しかも僕は蚊帳の外って感じだ。


(これって僕関係ないんじゃ?)


そう思い、それを口にした。


「あのー、僕忙しいんで行ってもいいですか?」


「「「ダメに決まってるだろ!」」」

「「「ダメに決まってるでしょ!」」」


と、今まで口論をしていた人たちとは思えないハモりを見せていた。


「あ、はい」


僕はこの勢いに圧倒され、そう言うしかなかった。


しかし、僕もずっとここで拘束されているわけにもいかないので、ポーションを売ることを諦めた。更にテレポートがバレる恐れがあるが、僕はテレポートでここから脱出することを決めた。


こっそりと宿まで一気にテレポートで帰ってきた。最初からこうしてれば良かったのだ。そもそも誰かの指図を受けることはなかったのだ。


しかし、これでしばらくは考えて行動しないといけないな。いつ、今日みたいなことが起こるのかわからないし、こんな風に囲まれたら何もできなくなるし。


なんか、魔王倒した弊害がこんなところで、こんな形で出てくるとは思ってもなかった。


これじゃあ、しばらくは何もできないし、どこにも行けない。でも、討伐とかしたいし、レベル上げもしておきたい。まあ、レベルが上がったところで、俊敏しか上がらないから関係ないと言えば関係ないんだけどね。


そんなことで今日は、複製だけやってログアウトした。


しばらくすればこの騒ぎも収まるだろうし。


ログアウトした後、ネットの掲示板で僕の目撃情報を募集したりしてるのを見て、しばらくはおとなしくしていようと思った。




でも僕はこの時、この騒ぎが長く続き、取り返しのつかない騒動を引き起こすとは思いもしなかった。



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