第84話 魔王討伐終了

「え?」


僕は今目の前で起こったことが信じられなかった。なんで、テレポートできないの?


慌てて原因を探そうとしたが、その前に魔王が話してきた。


「お、俺もこんなに早くは死にたくないのでな、今日は帰らせてもらう!」


そう言うと、魔王は目の前から消えた。


「え?え?」


いや、ほんとマジでどういうことだよ?なんで、こんなことになってるんだ?


そんなことを考えている暇もなく、今度は僕が今いる建物までもが消えた。


「?!?!」


ほんとどうなってるんだよ。


考えられるのは、魔王に勝ったか、期限が過ぎたかの2つだ。


でも前回のときは、期限過ぎでいきなり移動させられたから、今回はそれとは違う。ということは勝ったということ?


過ぎたことにいつまでも悩んでいても仕方ないので、ここから移動することにした。どうせ混乱していても何も始まらないからな。それだったら何かしらの行動をしていた方がいい。


とりあえず、街の方向を確かめようと辺りを見回したところ、周りには誰もいないことに気づいた。それと同時に、あることにも気づいた。


それは、僕の戦い方が誰かに見られるかもしれなかったということだ。そのことに気づいて、自分の迂闊さに呆れた。周りのことなんて全然気にしてなかったからな。見られているかもしれないなんて考えもしなかった。でも、僕も中を確認できたんだから、当たり前なんだけどね。


でも誰にも見られてないみたいだから、良かった。


それと、自分のステータスも確認してみた。MPが残っているか確かめるためだ。


ステータスを見るとまだ100万以上は残っていた。つまり、MP切れで使えなくなったということではない。じゃあ、何があったんだ?


そんなことで原因はわからなかったが、街の方に帰るために歩き始めた。


街に着いたが、特に何もなく宿に帰り、ログアウトした。


しかし、ログアウトはできず、あの真っ白な空間に出た。


(ん?あれ?なんでログアウトできないんだ?というかこんなことなんて初めてだな)


目の前には代表の方がいる。


「えー、今回はこんな形で報告になってすまない。緊急に伝えたいことがあったためだ」


(え?なにか不具合でもあったのかな?)


「その伝えたいことというのは、今回の魔王討伐が成功したということだ」


(やっぱりあれで成功だったんだ)


「そのことなんだけど、わたし達運営はこんなに早く討伐されるとは思ってもなかったため、報酬の方が少し遅れている。だから、報酬に関しては少し待ってほしいということだ」


(やっぱり難しいことは自覚してたんだな。いやあ、ざまあない)


「最後に、今回討伐に成功した人物について紹介しておこうと思う。ここで発表するのは一番ダメージを与えた組みだ」


(ん?なんで?まあ、名前くらいなら、別に問題はないな。零なんて割とある名前だし。それに組みなら、僕って可能性も少ないしな)


僕はそう楽観的に考えていたら、予想外のことが起きた。


「まず、プレイヤー名は零。そして、見た目はこんな感じだ」


そういうと、僕自身の等身大のキャラが現れた。


(って、それはまずいだろ!何勝手に公開してんだよ!というか、僕かよ!)


「こちらのプレイヤーが今回、討伐で一番ダメージを与えた。ちなみにチームで挑んだ場合はチーム名がここで発表されることになる。つまりこのプレイヤーは1人で魔王にかなりのダメージを与えたことになる」


(なんでそんなことまで明かしてんだよ!)


ツッコミは尽きないが、話はどんどん進んでいった。


「それでは今回はこの辺で終わりだ。最後に次の魔王は今回よりも強くなるから、頑張ってくれ」


そう言って、やっとログアウトすることができた。でもいろんな意味で爆弾を落とされた気がする。まあ、そこまで問題はないだろうし、気にしない。


この時はこの後に起こることを考えもしなかった。




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