第86話 雲隠れ 1

魔王討伐の騒ぎがすぐ終わると楽観的に考えていた僕はリアルで5日経った6月5日になっても、騒ぎが収まらないことに少し困っていた。


ゲーム内では15日経ったことになる。それでも僕の勧誘は終わることがない。まあ、毎回帰れそうにないから、断るとかもしない。だからそのせいであると思う。


そのせいで、ほとんど宿から出ることができない。テレポートで移動してるので宿がバレるということは今のところない。


でも宿から出れてないから暇すぎるのだ。


一応、出たときはあるんだけど、すぐ囲まれてしまって全然身動きが取れなくなってしまったのだ。


でも外に出られなくなって5日目、僕はようやくある解決法を見つけた。


それは、ここに拘らなければいいのでは?ということだ。


つまり、今はここでの目撃情報があるから、ここに人が集まっているのだ。ってことは違うところには人が少ないという考えだ。だから、いろんなところをまわっていけば、捕まる確率が減るのでは?と考えたのだ。


それに、魔王討伐の前の目的はいろんな土地へ行くということだったはずだ。なのに、ほとんど同じ場所に留まってしまった。だから、違う土地に行くのは、当初の目的と合っているのだ。


そう言うわけで、とりあえず宿のチェックアウトをして、そのままテレポートで僕が行ったことのある街に行った。


案の定と言うべきか、周りの人は僕を見ても囲んだり、ほとんど話しかけたりしてこない。まあ、少しは話しかけたりしてくる人がいるが、断れないほどではないから、すぐに断って逃げている。それにやっぱりまとまって人が押し寄せてこないって言ういうのは嬉しい。


そらから、僕はその街でクエストを久しぶりに受けていた。久しぶりにクエストをやったから新鮮で楽しかった。


何の問題も無く、クエストをクリアして僕は、宿を見つけ、チェックインし、ログアウトした。


僕は、少しだけ気を抜いてしまっていた。




ゲーム内で翌日、リアルで約8時間後。


僕は再びゲームにログインしていた。そしてギルドに行くとまたしても囲まれるようになってしまった。


とりあえず僕は、そこにいた人たちを振り切り、宿に帰ってきた。


宿に着くとこれからの方針を決めた。


(おそらく、僕がどこかで見かけられたら、すぐに情報がまわってしまうから、どこかに留まるっていうのは良くないな。常に移動してる必要がある)


そう言う考えに至った僕は、すぐに宿をチェックアウトし、次の街に向かって歩きだした。


もう行ったことのある街はないから、徒歩での移動だ。徒歩と行っても瞬歩を多用しているんだけど。


僕は安息の地を見つけるために旅立った。






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