第200話 これから

新学期が始まるとやはりログインする時間が夏休み前に戻り、あまりログインできなくなっていた。


夏休み前に戻っただけなので、今までと変わることはなかった。


それでも夏休みの感覚が抜けず、ログアウトするタイミングがつかめず、よく寝不足になっていた。


夏休みが終わってからも義務になりつつあるギルドにポーションを売りに行くことだけは欠かさずに行っていた。


これがログアウトするタイミングがつかめない主な理由だったりする。というのも、気づけば数時間が過ぎていることがほとんどだからだ。そのため、ログアウトができず、寝る時間が遅くなってしまっていた。


それは、8月が終わろうとしている31日の今日まで続いていた。


その間、授業中に寝てしまうことが多くなり、それはなんとかして寝ないようにしないといけない。


とか思いつつも今日も平日なのに、定期の魔王戦があるため、今日も寝るのが遅くなることが確定している。


今日は、リアルで22時にログインして、ギルドへポーションを売りに行き、その後、魔王のところへ行った。




魔王戦は前回と変わらず、ロングソードとテレポートを使い、倒した。


ただ、1つ気になることがあった。それは、いつもより、特に前回よりもかなり早く倒せてしまったのだ。


普段はリアルで23時頃、ゲーム内では大体9時頃から戦闘を始めてギリギリ、ゲーム内で12時前に倒していた。


そのため、今回もそれくらいかかると思っていたが、今回は30分ほどで終わってしまった。


レベルが特に上がっているわけではないし、そもそも僕の場合、レベルが上がったところで攻撃力が上がるわけではないので、早く倒せた理由が分からなかった。


理由が分からないまま、その日は店に戻り、ポーションを複製していた。


魔王戦は早く終わったが、結局ログアウトするのは遅くなってしまい、翌日は寝不足になってしまった。




後日わかったことがあり、僕はMVPには選ばれてなかったのだ。まあ、あまりダメージを与えられているような気はしなかったので、それほど驚くことはなかった。


それでもこのことは僕を大きく変えた。


肩の荷がおりたのか、この日からログインする回数は減った。


そろそろ受験に向けて考えなければならないし、良い機会だとは思ったのもある。


しかし、それ以上に自分がやらなくても魔王が倒せそうだということが大きかった。自分がやらなければという、一種の正義感のようなもので続けていた面があった。


まあ、ポーションを売らなければならないという別の義務はあるのだが、これも僕がこだわってやる必要はない。ヒールストーンスライムでも性能は落ちるが、ポーションを大量に作れないことはないからだ。


だからといって僕か自身が楽しんでいなかったわけではない。普通の生活ではできないことをできるのは楽しいし、誰かに必要とされることは嫌ではなかった。


ただ、受験のことを考えると良い機会なのかなとも思った。それに完全にやめるわけではなく、毎日3回ログインしていたのを1回程度に減らすということだ。今までがやり過ぎだっただけだ。


そう決めると行動は早く、ギルドではクロエさんにギルドにはもう売りに来る機会が減ることを伝えた。


猛反対されると思ったが、意外にも理解してくれて、何も言われなかった。一応、たまに売りに来るとは言っておいた。急にこういうことを言うのは悪い気がしたためだ。


次は店に戻り、あずさとあすかさんにも同じように伝えた。その時「私たちは解雇?」と泣きそうな表情であずさに言われた時は、完全に悪いことをしている気分になった。最初から解雇する気はなかったので、かなり焦った。


そのことを必至に否定した後、これからについてあずさとあすかさんに伝えた。つまりヒールストーンスライムを使った安価なポーションも作り方だ。


それを伝えたときは2人ともかなり驚いていたが、実際にやってみると更に驚いていた。それに汚水ですら、ポーションにしてしまう様子には心配していた。さすがに詐欺と思われても仕方ないことだが、この際はしょうがない。


でも美少女の体液から作ったポーションとか売れそうではあるけど。まあ、裏で闇取引とかされそうで怖いけど。


そんなことは絶対に口に出すことはなかった。



僕がいなくても大丈夫なようになると、更にログインする回数は減っていった。

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