第112話 開業 2

僕はクロエさんに連れられて、ギルドを出た。それから、1分もしないうちにクロエさんは止まってしまった。


「ん?クロエさん、どうかしましたか?」


「ここが目的の物件ですので」


「え?」


僕は驚き、後方にあるギルドを見てしまった。するとすぐ後ろにギルドが見えた。本当に目と鼻の先に物件があった。


ギルドから歩いて数分といった距離にその物件はあった。


外観を見る限りでは、普通の物件だ。綺麗というわけでもなく、汚いというわけでもないかった。でも確かに、かなりの好立地ではある。人通りも多く、ギルドにもかなり近い。


これなら、売れてもおかしくないと思った。


しかし、現実では、この物件は売れていない。そこが不思議だった。


僕は、クロエさんに案内され、その物件の中に入っていった。中も至って普通だった。だから、売れない理由がますますわからなくなった。


1人で考えていても答えは出ないので、クロエさんに聞いてみることにした。


「あの、クロエさん」


「はい、何ですか?」


「この物件って、値段が高い以外に売れない理由ってあるんですか?」


「いえ、値段が高いのが理由のすべてですよ?」


「え?じゃあ、何で売れないんですか?これだけ好条件の物件なら、買いたい人もいると思うのですが」


値段が高いって言うだけで買う人がいないというのは考え辛かった。少なくとも、買うだけのお金を持っている人は居るはずだからな。


そう思い、クロエさんに聞いてみたのだ。


「はい、買いたいという人は居ますよ。ただ、そういう人達はお金を持ってない、これから開業したいという人が多いんですよ」


「え?大手のところは買いたい人は居ないんですか?」


「はい、もう大手のところはここの辺りに店を持っていますからね。買う必要がないんですよ。それに見て分かる通り、ここって意外と狭いんですよね。だから、大手のところは欲しがらないんですよ」


そう言われ、確かに周りの店に比べると小さいという感想はあった。2階と地下がある分広く感じていたんだと思う。


確かにここは個人でやる分には十分だけど、支店を幾つもあるところからしてみれば、そこまで好条件でもないということだと思う。


つまり、個人だと欲しいがお金が足りなく、大手だとそこまで価値がないということだ。


「そうなんですか」


「はい、まあ、それだけじゃないんですけどね」


「まだ何かあるんですか?」


「ええ、そもそも、1億ゴールドを持っている人なんていませんから」


「えぇぇぇ?!持っている人居ないんですか?!」


「いえ、いないわけではないんですけど、そんなに持っているのは貴族の方々だけですので」


その話を聞いて僕は納得した。


それから、一通り見終わった僕たちはギルドに帰ることになった。


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