第113話 開業 3

ギルドに帰って来る間、僕は物件を買うかどうか考えていた。


特に曰く付きの物件ではないから問題はない。まあ、曰く付きの物件だったら、もっと安いだろうし。


それに、あそこの物件は割と気に入っているのだ。だから、断る理由もない。お金に関しては全然問題ないし。


「零さん、それでどうしますか?」


僕が考えているとクロエさんは、そう聞いてきた。僕は、すでに答えは決まっていたので、慌てることもなく、答えた。


「買うことにします」


「そうですよね、買いま——す?!え?買うんですか?!というか買えるんですか?!」


「はい、買えるだけのお金は十分にあるので」


「そうですか、それならいいんですが。物件についてはかなりいいところですので問題はないと思います」


そうクロエさんが言うと、そのまま契約を結んだ。特に何かがあるわけでもなく、無事契約を結ぶことができた。


でも、いろいろやることがあるらしく、この後から使うことはできないと言われた。まあ、すぐには使おうとは考えていなかったから特に問題はない。


その日はそれで僕はやることもなくなったので、宿に帰りログアウトをした。




それから、リアルで約3日、ゲーム内で1週間が過ぎ、ようやく買った物件が使えるようになった。


クロエさんのところへはほぼ毎日行っていたため、そういった予定がすぐにわかったのだ。


まずはギルドに行き、ちょっとした注意事項などをクロエさんから聞いた後、物件に向かった。


物件に着き、中に入り、何もないなーと思っていたら、重大なことに気がついた。


「あ、何用意してないじゃん」


1週間もあったにもかかわらず、調度の類を一切買ってなかったのだ。そのことに気がついた僕はとりあえず、調度を買いに出かけようとして、どこに売っているか知らないと思い出した。


いろいろ考えた末、僕はクロエさんに聞くことにした。


クロエさんと別れたばかりなので、少しだけ気まづい。でも自業自得なので仕方ないと割り切り、ギルドに向かった。それに調度がないとここでの生活すらままならないからだ。


それから、ギルドでいろんな店の情報を貰い、買い物に向かった。


調度を買ってないことをクロエさんに言ったら呆れられてしまった。


それから店を回り、調度を揃えた。揃えたといっても買ったものはベット、机、椅子くらいなもので他には何も買ってない。


それと買っているときに気づいたのだが、開業するにあたってそれについてもいろいろ準備をしなければならないと気づいたのだ。


例えば、商品を陳列する棚とか、値札とか、看板とか、おそらく1人では経営できないだろうから従業員が欲しいし。考えれば考えるほどやることが出てくる。それなのに、1週間何もしなかったと思うと後悔しかない。


それと物件を買ったのは間違っていたなとも思った。こんなに大変だとは考えてもいなかったからだ。


やっぱジジイの言うことは信じない方が良かったなと思った。だけど今更引くこともできないから、このまま準備を進めるしかないんだけどね。







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