第111話 開業 1

「物件についてですが、ギルドで管理しているものは少ないですが、いいですか?」


「はい、大丈夫です」


「ありがとうございます。それで、どのような物件を探していますか?」


「店兼自宅にできるようなところを探しているのですが」


「そうですか、そういった物件はありませんね。ギルドでは基本グループ用に使えるような物件しか——あ」


「ん?どうかしましたか?」


「いえ、そういえば、1つだけギルドに押し付けら——管理しているのがありましたね」


「今、押し付けられたっていいかけましたよね?」


「いえ、気のせいですよ?」


クロエさんは何事もなかったかのように対応していた。


しかし、確かに押し付けられたって言ったよな。つまりなんらかの事情がある物件なんだろうな。それを僕に押し付けられるのか。


まあ、見てから考えればいいか。


「それでどういった物件なんですか?」


「えーとですね、ギルドの近くにあり、大通りを面してして、地下1階、地上2階で構成されている物件ですね」


「ん?それってかなり良い物件なんじゃないですか?」


うん、ギルドに近く、大通りに面して、2階建てで地下もついているとか、どんなダメなところがあるんだろ?


「そう、なんですが」


「何がそんなにダメなんですか?」


「ダメってわけじゃないんですよ。内装は綺麗ですし、立地も完璧ですよ」


「じゃあ何が悪いんですか?」


クロエさんがなかなか話してくれず、僕は少しだけ不機嫌になっていた。


「その、好立地過ぎるせいで買える人がいないんですよ」


「ん?つまり、どういうことですか?」


「高すぎるってことです」


「ん?そんなにするんですか?」


なんかすごくがっかりした感じがある。お金なんて腐るほどあるからな。別に買えないことはないだろ。


「はい、1億ゴールドほどです」


「はいぃぃぃ?!」


僕が飲み物を口に含んでいたら吹き出すほどの衝撃を受けた。僕の全財産の3分の1ってどんだけ高いんだよ。僕の全財産が多いかはわからないが、1本100ゴールドほどのポーションに換算すると100万個ほどだ。


あれ?あんまり高くないじゃん。よくよく計算したら、そうでもなかった。


僕の感性の方がぶっ壊れていたらしい。


変に冷静になった僕は、とりあえずその物件を見てみたくなった。


「やっぱ、こんな高い物件はダメですよね?」


「いえ、とりあえず物件を見てみたいのですが」


「あ、わかりました。ですが少しだけ待っていてください」


そう言うとクロエさんは、ギルドの受け付けの仕事に戻っていた。


しばらく待ってから、僕はクロエさんに連れられて、その物件を見に行った。





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