第194話 いつもの告知
ダンジョンから帰ってきてから、数日が経っていた。あれから、結とヨタから何かに誘われることはなかった。でも、僕はいつものようにギルドに行き、ポーションを売ったり、店でポーションを複製して過ごしていた。
僕はこの日、8月15日もログインした。
すると、いつもとは違う意味で見慣れた空間に出た。
「やあ、——」
僕は、それが何であるのかを把握すると、それをとばした。別に今すぐに確認する必要はないと思い、確認することなく、ゲームを始めた。
それというのは、いつもの告知ことだ。おそらくいろいろ情報があるのだろうが、べつにすぐに確認しなければならないというわけではないので、僕は後回しにすることを選択したのだ。
僕はログインすると、まず店のポーションを補充する。それが終われば、ギルドに向かい、ポーションを売るのだ。
いつものことだ。ただ、違うことがあるとすれば、ギルドでは早速イベントのことを話しているプレイヤーがいることだ。話している内容を全て把握することはできないが、断片的な言葉からイベントのことであることはわかった。
でも、僕はイベントをやる気がないため、詳しく知ろうとは思わなかった。そのため、周りには気にしないで自分のやることだけに集中していた。
そのやることを終えると僕はギルドから出て、店へ帰った。
しかし、その途中でヨタに捕まってしまった。
「零!ようやく見つけた」
「ん?ヨタ何かあったのか?」
ゲーム内で話したりはしているが、ヨタが急いでいることなんて珍しかった。大抵の場合は雑談のため、わざわざヨタが僕を探しているなんてことはなかった。だから、僕のことを探していることを考えると、何かあったことはわかった。
「零、情報は見たか?」
「?いや見てないけど」
「なんで見てないんだよ!」
ヨタが理不尽にもそんなことを言ってきた。
「後で良いかなって思って」
「見ろよぉ!」
そんなこと言われても、どうせイベントの告知がメインだろうし、イベントならやるつもりはなかったから、確認なんてしなかった。
「別にすぐに見ないといけないことでもないし、後で良いだろ。まあ、ログアウトした後で確認するけど。それで、なんで見ろって勧めてくるんだ?」
「ああ、それはイベントの告知があって、手伝って欲しいんだよ」
やっぱりイベントか、と思ったが、それよりも僕はまたヨタからクエストに誘われたことが意外であった。前のダンジョンでのことがあったから、僕が足手まといなことがわかって、もう誘われないと思っていた。
「良い——」
僕はそのことが少し嬉しくて、即座に答えを言おうとして、踏みとどまった。
「ん?どうかしたか?」
僕は危うくまた同じことを繰り返しそうになった。ここで「良いよ」と言うのは簡単だ。でもその後、確実にクロエさんやあすかさん、あずさに怒られる自信があった。
そのため、「良いよ」と言うのを思い留まったのだ。
ただ、せっかく誘ってくれたのだ、それを無下にするのは良くない。
僕はいろいろ考えて、答えを出した。
「えーと、イベントを手伝うのは良いよ」
「本当かっ!?」
「あ、ああ。でも、今すぐに手伝うことはできない」
「そうなん?」
「僕もいろいろやりたいことがあるからね。それが終わったら、手伝うよ」
一応、数日帰れないかもしれないから、クロエさんたちにそのことを伝えたり、ポーションなどを多く渡しておくなどして対策をしておきたい。
「そういうことなら、わかったよ」
ヨタもわかってくれたようで良かった。
「詳しく時間が決まったらまた連絡するよ」
僕はそう言って、ヨタと別れた。
ログアウトした後、僕はどんなイベントなのか確認してみた。
今回のイベントは夏ならではのイベントらしく、海が主な舞台だった。
海に新しく通常モンスター、ボスモンスターが追加されて、そのモンスターを倒すとイベント限定のアイテムを入手できるというものだった。
僕は、限定のアイテムというところには惹かれなかったが、海というのが気になった。海にはこれまで行ったことがなかったから、行ってみたかった。
僕はすぐにログインし直して、クロエさんにしばらく来れなくなることを伝え、ポーションについてどうするか聞いた。ポーションは行く前に売りに来て欲しいと言われた。売りに来るときは事前に連絡が欲しいとも言われた。僕はそれに同意して店へ戻った。
店ではあすかさんとあずさにしばらく留守にすることを伝えた。そのため、ポーションをどうするか聞くと、使ってない部屋に押し込むことが決まり、こちらも行く前にやれば良いことになり、僕はログアウトした。
その後は、リアルでヨタたちとイベントについて話し合い、僕の準備はゲーム内で1日くらいかかるため、明後日からということが決まった。
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